住人交流
住人交流
翌日、会議の前にアマリーを届けるためヒルガの雑貨屋へとやってきた。
「おはよう。お邪魔するよ」
挨拶をしながら入店すると作業をしていたらしいヒルガが手を止めて応える。
「アンタか!随分と久しぶりだな」
「あー、長らく来れず悪かった」
明確な約束もなく認識の違いだが一応謝罪する。
「いいさ。獣人のパーティがチニスタの森の主人を討伐したって聞いてアンタの事だって直ぐにわかった。爺さんのところにも元気にやってるみたいだって知らせておいたしな」
初討伐は話が回るとハカセがぼやいていたのを思い出して頷く。
「ありがとう。これ、土産だ。あとクッキーも焼いたからよかったら茶請けにでもしてくれ」
目的のアマリーをカウンターに置いて昨日焼いたクッキーも隣に出した。
「アマリーか!有難いが…こんなに沢山、良いのか?ギルドで買取もやってるぞ?」
「良いよ。あんたに教えて貰ったから取ってきたんだ。うちのパーティの奴が取ってきたのも含んでるからそこそこ集まったよ」
「そうなのか…。クッキーは焼いたってアンタ料理人だったのか?」
「いいや、趣味程度だから大したことはない」
「十分だと思うが…」
缶は市場で見当たらなかったので紙皿を組み立ててクッキー缶風に色々と詰め込んだ箱を眺めて感嘆するヒルガに良かったと息を吐く。
「これからギルドで会議があるんだがそう褒めてもらえたら手土産に出しても怒られなさそうだ」
「ギルドで?今日は臨時で代表会議があるとは聞いていたが…」
「恐らくソレかな。異邦人と住人の認識の擦り合わせをすることになってな」
「なるほど…?どうしてそんなことになったか分からないがまぁアンタなら大丈夫だろ」
応援している、と頷いて言うのに礼を言って雑貨屋を退店する。
予定の15分前だがギルドに到着すると既にザキが入口近くの席に座っていた。此方に気付いて手を挙げたので近寄り向かいに座る。
「おはよう。早いな」
「ん、おは。こっちのセリフだけど?待たせたか」
「気にするな。朝飯のために早く来ただけだ」
屋台で買ってきたらしい果物のジュースを渡されたので受け取りそのまま話に興じていると住人を引き連れたペティがやってきた。
「ナーリア!もう来てたんだね。…あー、互いの紹介は後にして先に部屋に移動しようか」
ペティに挨拶と了承を返すとギルドの2階にある一室に案内された。木の温もりある内装の中央に長方形のテーブルがありそれを囲むように椅子が並んでいる。
各々が好きに座っている様子を眺めていると出入り口に近い席をペティに薦められたので席に着き後ろにザキが立つ。
「さて、全員集まってるから早速始めたいところだが今回は臨時だから形式は飛ばして客人の紹介からさせてもらうよ」
「ああ、それは構わんが……」
獣人の耳に注目が集まっている気がして首を傾げる。
「ナーリア、簡単に自己紹介を」
「はぁい。異邦人、ラビィ族のナーリアと申します。後ろのは同じく異邦人、シャレージ族のザキ。補佐として居るだけですのでお気になさらないでください」
軽い会釈をしたザキに昨日用意した手土産を渡し住人に配ってもらう。
「こちらは異邦人の世界でガトーショコラと呼ばれる菓子です。お好きに扱ってください」
「おやまぁ、態々ありがとさん。人数を聞いてきたのはこの為かい」
「ふふ、予定を聞いて何も用意しないのは主義に反しますので」
ペティが茶化すのに乗ると少し空気が緩んだ。少々堅苦しかったようだ。
「じゃあ次はオレから挨拶しよう。オレはエウダイ、商業ギルドの窓口代表だ」
片手を挙げて言うのに続いて隣に座っている男が口を開く。
「では此方の方へ順に回る形で自己紹介していきましょうか。 私は冒険者ギルド人事代表、ウォルルドです」
「アタシも必要かい?…まぁいいか。アタシはペティ。東区のまとめ役を担ってるよ。普段は雑貨屋さ」
「俺は北区代表、シシマルだ。鍛冶屋もやってる」
「南区代表のネイランよ。いつもは服飾屋さんをしているわ」
「自分は西区代表のテジマっす。普段は食材を卸す仕事をしてます」
ぐるりと一周紹介が終わったので頭を下げるとペティが口を開く。
「さて、今回の議題は通達してた通り‘’異邦人について‘’だよ。アタシ達に足りない知識やらを補足してもらうために客人に来てもらったから文句があるならアタシに言いな」
「あんたに言えるヤツなんかそう居る訳ないだろ。…悪いな、ジロジロ見ちまって」
ふん、と挑発的に笑ったペティに言い返したシシマルが謝ってきた。追従して謝る皆に笑顔で首を振る。
「気にしてませんよ。此方こそ同郷の者が迷惑を掛けているようで申し訳ない」
「あら、それこそ個人間の問題ね。アナタが謝るコトじゃないわ」
「そうですよ。君が頭なら責任問題がありますけど違うでしょう?」
うんうんとテジマやエウダイも頷いてるのを見て総意だと理解する。さすが、商人やギルドの代表として集まる方達だ。人ができている。黙礼で感謝を示すとウォルルドがにこやかに手を打って口を開いた。
「それじゃあ、相互理解のための会議。始めていきましょうか」




