世評から人を知る-7
「エクサスさん、わざわざすみません。送って戴くついでにと買い物まで付き合ってもらって」
「なぁに気にするな。リフィルにはいつも世話になっているからな。これくらいお安い御用というやつだ」
活発に人が行き交う街。
まだ日が落ちるには少し早い時刻。
私は大通りを歩いていました。
傍らには私に付き合ってくれた上に荷物持ちをしてくれている男性を侍らせてです。
なんというか少しだけ変な気分ですね。
「本も量があると重いからな。荷物持ちが居たほうが良かろう。俺にとっては行軍中の装備と比べれば羽毛と大差はない」
訓練も終わったというエクサスさんが家まで送ってくれるという言葉に甘えて私は帰路についていました。
この街は治安は良いですから暗くなる前ならば一人でも問題は無いとは思うのですが、そこは紳士であるエクサスさん。
顔見知りの女子を一人で帰らせるわけにはいかないと言ってくれるわけです。
彼にそう言われれば私も断る理由も特に無いですし、ちょっと良い気分にはなってしまいます。
そのまま直帰しても良いのですが、せっかく力がある男性が一緒に居るのですからついでに書籍を何冊か買いたいと提案した所、快く引き受けてくれたとのです。
そうして私達は買い物を終えて軽い雑談をしながら街中を歩いていました。
その時に何やら見知った顔を見つけたのでした。
「ん?あれはケリクとティピカ嬢か?」
エクサスさんの声を聞いて彼の視線の先を見る一組の男女が何やら言い争っています。
しかし、それほど険悪というわけではなくじゃれ合ってるという感じでしょうか。
そう見えるのは彼ら二人が私達の共通の知人であるからです。
一人はティピカ。
私が親しくしている可愛らしいイタズラ好きな後輩だ。
もう一人はケリクさん。
私はまだあまり話をしたことはないがエクサスさんの特に親しい友人だという事だった。
「珍しい組み合わせですね」
二人は私も時々利用させてもらっているレイラーニさんオススメの喫茶店のテラス席で一緒に食事を取っていたようです。
ティピカがケリクさんと親しかったとは知りませんでした。
まぁ、あの娘は顔は私が思っている以上に広いですし、ケリクさんは確か武具関係の大手の商会の息子さんです。
もしかしたら新しい武器や防具のデザインをティピカに依頼するなんて流れがあったとか……まぁ、流石にそれはないですかね。
彼女の得意は若い婦女子をターゲットにした服飾ですから。
そうなると接点がよくわかりませんが、一緒にテーブルを囲んで食事をするくらいですから親しい間柄なのでしょう。
「賑やかですね。あの二人は仲良かったんですね。知りませんでした」
「俺も知らなかったが……ケリクは俺と違って誰とでも割とすぐ仲良くなれるからな。人の懐にすぐに入れるというのは才能だな」
そういうエクサスさんの言葉からは友人を誇っているのがよくわかった。
自分には無い物を持っているのだと彼は笑った。
エクサスさんは生まれや立場的、そして人柄や実力的に慕われてはいても気安さは無い。
人望はあっても近づきやすいかと言えば、近づきにくい人間だろう。
話してみれば気さくだし、細かい礼儀などには煩くないのだから案外話しやすかったりするのだけれど中々外からはわからないのだから仕方がない。
「言われてみればかなり違いますね。よく友人関係になったものです」
「俺とは全く別のタイプであるからな。最初もあいつが話しかけてくれたのだ。遠巻きに俺を見てる者が多い中で怖気づく事もせずにな」
ケリクさんは誰とでも距離を詰めれるそうです。
平民であるならば特にですが、普通は怯んでしまうような家柄であるエクサスさんにも話しかけれるというのは中々肝が座っています。
それを羨ましく思いながらも友人の美点だと誇ることができる。
こういうところもエクサスさんが多くの人から慕われる要素なんでしょう。
そんな事を考えていた私を見てエクサスさんがふと思いついたように言った。
「俺とケリクもタイプが違うが、それを言ったらリフィルとティピカ嬢もかなり違うのではないか?」
「そうですね。あの子も私には持っていない物を持っています」
私とティピカもタイプとしては全く別と言って良いでしょう。
色々な顔を上手に使うティピカに対して、私はあまり多くの顔を使い分けるという事ができません。
社交辞令やお世辞などが苦手なのです。
もしも、そういうのが得意であればもう少し社交界などにも顔を出す気になったのでしょうね。
それにティピカは自分一人で実家を支えている自立した女性というところもあります。
私のように家の力が後ろ盾にあるわけではなく、間違いなく彼女自身の力で家を支えているわけです。
そういう所も私は持っていないあの子の尊敬できる部分です。
「そう考えると案外自分とは全く違う性分の人のほうが一緒にいれるのかもしれませんね」
自分に持っていない者を相手に求める。
それはごく自然な発想なのでしょう。
「それはあるかもしれんな。似ている者同士は同族嫌悪してしまうという話もあるしな」
「似た者夫婦という言葉もありますよ」
「ふ、夫婦か、うぅむ。友人とはやはりそこは色々と違うだろうしな」
「そうですね。あの二人もそういう感じはありませんが楽しそうではありますし。人それぞれという事ですね」
街の喧騒の中でも掻き消されない声で騒いでいる二人。
通行人がチラチラと目線をやっている姿が目に付きます。
このままでは衆目を集めてしまうでしょうが、当人たちは興奮しているのかそのことに気づいていないようです。
見ないふりをするというのは友人として忍びないでしょう。
そう思った私とエクサスさんは苦笑を浮かべながら彼らへと歩みを進めたのでした。
気づけば連載初めて1年が経っていたので諸々おさらいしようという感じで書いてみました。
最近は喜んだことと悲しんだ事があり色々な物が乱高下でした。
更新間隔が空いてしまい申し訳ありません。
こんな作品ですが評価をしてくれた方、ブクマやいいねしてくれた方、そして読んでくれた皆さん。
ありがとうございます。
誤字脱字の報告も助かります。
次回はもう少し早く更新ができるとは思いますが気長にお待ちしていただければ幸いです。




