モデル初心者編〜1〜
ある雨上がりの日、僕は雑誌を作っている会社の関係者から声を掛けられていた。
「うちの会社でモデル、やってみない?」
そう声を掛けたのは20代の女性で胸ポケットから名刺を出して渡してきた。名前は、
「……加宮、折紙さん?」
名刺を確認してもう1度説明を聞こうとすると彼女が先に質問してきた。
「君って高校生かな?男の子だよね?制服も男物だし……」
僕は焦りながらもしっかりと返事が出来た
「あ、はい」
いや、やっぱりしっかりは返事出来なかった。
僕は、人と話すのが苦手だ……
「男子高校生にしては可愛いね……女装趣味でもあるの?」
何故か意味の分からない質問をしてきた。しかも真顔で。
「そんなんじゃありません!ただ、髪を切りたくなくて……そのままにしてたらこんなになっちゃって……」
今の髪型は学校が終わって気が抜けたからストレートに戻している。ストレートにすると腰ぐらいまであるこの髪をこの女性は何か違う解釈をしたようだった。
「うんうん、髪の毛を切るのってなんかやだよね……私にはちょうど良かったけど」
最後の一言は小さすぎてよく聞き取れなかったから何を言っていたのか聞こうと思っていたけど聞く前また話の主導権を握られてしまった。
「で、もう一度言うけどモデル、やって見ない?それとも興味ない、かな?」
彼女は本当に心配しているような声を出して聞いてきた。
(断れないじゃん!)
「わかりました、まずは話を聞くだけでもいいですか?」
とりあえず話を聞いてから決めよう。家の方も大変だし。
「オーケー、じゃあ今から事務所に行こう!」
さっきとは全く違うテンションで話しかけてきた。少しでも可愛そうかもと思った自分を殴りたい……
◇◇◇
秋葉原駅のすぐ近くにある大きな建物、彼女曰く、全て彼女の働いているビューティクチャー社の仕事場や撮影スタジオがあるらしい。
(かなり大きい会社なのかなぁ?)
これが僕の思った第一印象だった。
「さて、着いたよ新人君!」
(はっ?)
「まだ、入るって言ってません!」
流石に、まだ何も決めてないのにあたかももう入る人連れてきたよ的な雰囲気は嫌いだった。
だって、断りにくくなるじゃん……
「ごめんごめん、付いてきて、会議室に行くから」
「分かりました」
今はついて行くしかない。さっき話を聞くって言っちゃったし……
……
………
「着いたよ、さぁ入って」
なんか、入りたくないなぁ。
でも……
「失礼、します」
「誰もいないから大丈夫だって」
そう言いながら加宮さんはお腹を抱えて笑っていた。
(いちいちからかってくるな……)
「はぁ、良しじゃあ話を始めよう」
まだ笑っていたせいで疲れているようだけとそんな事は気にしない。
「……はい」
加宮さんはちゃんと仕事顔になっていた。
(ちゃんと切り替えられるんだ……)
「では、まず名前から教えてくれる?」
まぁ基本的かな。
「はい、僕の名前は中条 凛です」
一応、ちゃんと答えることにした。
「うん、じゃあ年齢は?」
「15歳です。少し前に高校生になったばかりです」
「うん、じゃあモデルに興味ある?」
「少しだけ……家が火事で燃えちゃって、お金が稼げるなら……」
「ふむふむ、君はお洒落したら可愛くなると思うな、今から写真撮らせてくれない?今度の雑誌の読者モデルになってよ、少しなら金も出すよ……」
「うーん、分かりました。写真ぐらいなら……」
「ありがとッ!モデルが少し足りなくて困ってたんだよ!じゃあ、更衣室に連れていくから付いてきて」
「はい」
◇◇◇
エレベーターを使って4階上がると撮影スタジオと書かれた部屋の横に楽屋みたいな部屋があった。窓が無く、安心して着替えられる場所だ
「じゃあ、着替え終わったら教えて〜あっ!先に服脱いでちょっと貸してくれる?撮影のお礼にクリーニングしとくから」
「えっ!いいんですか!」
「ああ、ここまで喜んでくれるとは思わなかったけど……」
「お願いします」
そう言って下着以外の服を脱ぎ、加宮さんに渡した。
勿論、ドアを使って下着姿を見られないようにして、だ
「あの〜?着替えってどこにありますか?」
「あ〜これこれ、じゃ着替え終わったら教えて〜」
ー15分後ー
「中条さ〜ん、まだですか〜?」
「あの、これ着なきゃダメですか?」
「ダメです。もしかして着方分からないんですか?それは大変!今すぐ中に入ってお手伝いしないと!」
白々しい言い方だが無視出来ない発言に焦りながらも何とか加宮さんを抑えることに成功した。
「ちょっと待って下さい!今着ますから!」
ー5分後ー
更衣室の扉がゆっくりと開く。そうすると美少女と勘違いされても仕方ないくらい可愛い少女が出てきた。
「まぁ!凄くお似合いですよっ!」
褒めているのか、からかっているのか分からない声の調子でそう声を掛けられた。
「あの……」
「……髪も手入れしなきゃ!」
(いつもいつも、話そうとするタイミングで話を重ねて来る)
そして……
髪を手入れされてから隣の部屋で写真を何枚か撮られた。
カメラマンは、何度も声掛けをしていい写真が取れるよう頑張ってくれた。なんか、適当にやっている自分に嫌悪感を覚えたが今はまだしょうがない。
「ありがとね〜中条さん」
「いえ……」
お金のためにやった事だし……
「これ、約束のお金。足りないかな?」
封筒には5万円が入っていた。
「こんなに貰っていいんですか?」
普通のバイトよりも全然高い……
「はい、最後にいいですか?モデルに興味はありませんか?」
「……ないと言えば嘘になります。これからもバイト程度でもいいなら続けたいです」
「ありがとう、本格的に始めるのは本が売られてから正式にオファーみたいなものをしたいと思います。これから宜しくね?中条さん」
「はい!」
こうして中条 凛はモデルとしての活動を始めるようになったのだった。
しかし、始めたのは男性服のモデルでは無く、女性服のモデルだった、彼はこれから男ということを隠してモデルをしていくだろう。
◇◇◇
ーー学校では男子として、会社では女子として、彼の戦い(?)はここから始まる。ーー
ずっと投稿していなくてすいません。
いいアイデアが考えつかなかったり、リアルが忙しかったり、方向性が分からなくなって辞めたシリーズがあったりと色々ありました。
これから、また頑張って行きたいと思います。
書き方のアドバイスなど気になることがあったら教えてもらえると嬉しいです。
少しずつ投稿していきます。