第14話 -必ず後悔させてくれる-
「殿下、フレイジア 統括長 リンドル・ソウガ様
並びに、グレラード 統括長 ローリル・アクシア様お着きになりました。
ソウガ様は、魔力封じの間にてお待ちいただいております。
その為か、少しご様子がおかしいと同行されたサリア様からも、そのように伺っております。」
「わかった。まずは、グレラード統括長から話を聞こう。
魔力封じの間には誰も入れるな。もしも何かあったら危険だからな。」
「勿論でございます。セラフとその部下たちに部屋の前は守らせております。
各窓にも封じ魔法を施しております。」
厳重体制で申し訳ないとは思うが、魔石に魅入られた人間がどのような変化をするか未知数だ。
本人のことも守るためには致し方あるまい。
俺は、グレラード 統括長 ローリル・アクシアのいる部屋に向かった。
―――――――――――
「待たせて悪いな。統括長。」
部屋には、グレラード出身者特有の深い紫色の瞳をした男がいた。
俺の姿を見るや否や立ち上りこちらに、頭を下げる。
俺はこういう瞬間が嫌いだ。
別に俺は、王家の血を受け継いでいるだけで俺自身が偉いわけでもないし、何か大きな功績があるわけでもない。
それなのに、民たちは皆、俺に敬意を示してくれる。
この地のもとに生まれた以上、当たり前に受け入れるべきものだとはわかってはいるが出来ることなら民と同じ目線で、この国をよりよくしていきたい。
そんなことを時折考えてしまう。
「殿下」
「っ、」
ノルの声にハッと我に戻る。
「お初にお目にかかります。私、グレラード統括長ローリル・アクシアと申します。
本来であれば、任命いただいた際にご挨拶に伺うべきでありましたが出来ておりませんでしたこと、謹んでお詫び申し上げます。」
「こちらできちんと人選し任命したんだ、挨拶などなくても信頼している。
はずだが、少し気になることを耳にしてな。今日はその確認で呼んだ。
いきなりの申し付けで、悪かった。」
「いえ、殿下にそのようなお言葉をいただくほどのことは何もありません。」
「早速なのだが、フレイジアとの交友関係についてだ。」
俺の言葉に、アクシアの顔が曇る。
「俺の耳に入ってきている段階の話だから、否定するところ、意見するところがあれば気を遣わず割って入って構わない。
両街共にひいては国の明るい未来のためよろしく頼む。」
アクシアは一度頷いた。
先日聞いた話を、ノルがアクシアに説明する。
フレイジアに粗悪品を輸出していること、商人について、他の街には上等品を輸出していること。
アクシアはそれを黙って聞いていた。
「以上がこちらから確認したいことだ。
そちらからの意見を貰いたい。」
「はい。では、申し上げます。
まず、粗悪品についてですが何度もフレイジアからその申し出は届いておりますが、そのような事実は一つもありません。
しかも、他の街には上等品を輸出しているなど、我が街の品位を損なうようなこと絶対に行いません。
ローリル・アクシア、神に誓ってそのような事実はないと証言いたします。」
初手から意見が食い違うか。
「しかし、フレイジアからの申出がある以上それを無視している我々にも非はあります。
最近の、フレイジア統括長 リンドル・ソウガの言動に以前とはその…何と言いますか。」
「別人――。」
俺の言葉にハッとした顔をするアクシア。
「そうなんです!あまりにも別人で…。彼は、優しさを表現しているような方でした。
統括長になったばかりで戸惑う私に、統括長としての全てを教えてくれました。
しかし最近の彼は、本当に人が変わったように。
粗悪品の件について直接話合いをと提案したのですが、『その必要はない。俺のことを疑うのか。いいから上等品を寄越せ。』と突っぱねられてしまって。」
これは、確認が必要になるな。
「アクシア」
「はい」
「お前がもしよければ、ソウガの弟、リンドル・サリアをこの場に呼んでもいいか?」
「はい!もちろんでございます。」
「ノル」
「はい、只今お連れいたします。」
――――――――――
「失礼いたします。統括長 リンドル・ソウガが弟 リンドル・サリアです。」
「サリア、悪いな散々待たせて」
「いえ、逆に僕は特に呼ばれないと思っていたので、正直緊張しております。」
「ははっ、アクシアとの面識は?」
「一度、統括会議の場でご挨拶をさせていただきました。」
「久しぶりだね、サリア」
「お久しぶりです。アクシアさん」
軽い挨拶が交わされる。
「早速だがサリア、確認したいことがある。」
「はい。僕でお役に立てることがございましたら」
「アクシアは、一度輸出入品について話し合いの場を設ける提案をしていたそうだが、ソウガ統括長に断られたことがあるらしいが、把握はしているか?」
俺の問いかけに、サリアは黙ってうなずく。
「はい。その便りをいただき、すぐに行うべきだと兄に伝えました。
実際に粗悪品が我々の手元に届いているのは、事実でしたから。
しかし、『その必要はない。あいつらは、俺を騙そうとしているだけだ。あいつらは、紡ぎ人と繋がりを持っているから、この手紙もきっと本物ではない』と言い出し、ろくに検討もせずに断られました。」
その言葉に、アクシアは信じられないという顔をする。
「殿下、やっぱり兄は兄ではなくなってしまっています!
あの商人が持って来た宝石、魔石の影響です!
あの優しい兄が、一番最初に誰かを疑うような意見を言うなんて信じられません。
そしてそれを、知っていながらなかなか行動に移せなかった僕も、同罪です。」
「今、犯人探しをするよりも先にソウガ統括長を本来のソウガ統括長に戻すことが最優先だ。
サリア、安心しろ。
もう、一人で抱え込まなくていい。」
俺の言葉に、サリアの瞳が揺れる。
「アクシア」
「はい」
「いくら魔石に侵されていたとはいえ、グレラードの品格を疑うようなことをしたソウガ統括長には解決後、何らかの罪滅ぼしはさせる。
そもそも、粗悪品が出回っている原因も突き止めなければだしな。
全て俺が解決させる。だから、グレラードから一流の魔術師を呼んではくれないだろうか。
グレラードは、魔術師・魔法具に関して右に出る者はいない。頼む。」
俺は頭を下げる。
それに続いて、ノルもその気配を感じる。
「んな!そんな!やめてください!私に頭を下げるなんて!!
ソウガは統括長としての繋がりもありますが、その繋がり以前に友人です。
友人の危機に、手を貸さない奴がどこにいますか!
ぜひ、グレラードの力をお貸出しさせてください!」
「感謝する。」
「ありがとうございます!!アクシア様!!」
アクシアに近付き頭を下げるサリア。
その顔からは気を張っていた表情は消え、兄を助けたい弟となっている。
〈バンッ――!〉
「アレル!!」
「っ!!」
部屋のドアが開き、珍しく焦った表情のセラフが立っていた。
「どうした。」
「魔石の力が暴走しだしている!」
「魔力封じの間にいるはずだろ」
「それを上回ってんだよ!あの魔石に宿されてる魔法は、一部ルヴァール王国が確認できていない魔法が宿されてる!」
「っ、厄介なことをしてくれる。
ノル、転移魔法でここにグレラードの魔術師を呼べ!」
「はいっ」
「世話になるぞ、アクシア!」
「勿論です!」
「サリア、恐らくソウガはもう契約に近い状態にまで来ていると思う。
その状態の解消には、本人、もしくはそれに近いものの血が必要になる。
頼まれてくれるか?」
「っ!当たり前です!」
「よし。セラフ!王宮の周りに最大限の結界をひけ。絶対にこの中で終わらせるぞ、街には被害をあたえるな!」
「おう!」
全く。どこのどいつかは、知らんが厄介なことをしてくれるもんだ。
探し出して、必ず後悔せてくれる。
ルヴァール王国の民に手を出したことを。




