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手紙を魔法で空に飛ばしていたら、天然な第二王子の目にとまり、まんまと振り回される結果になりました。  作者: らいあ


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第1話 -紡ぎ人として-

ここは、魔法の国『ルヴァール王国』

豊かな自然に恵まれ、自然と魔法が共存する活気溢れる国だ。


人々は、大地の恵みと与えられた魔法に支えられながら日々を暮らしている。


ここ、ルヴァール王国には大きく分けて4つの街が存在している。


水魔法の加護を大きく受ける『アクアティア』

炎魔法の加護を大きく受ける『フレイジア』

風魔法の加護を大きく受ける『ウエンティス』

闇魔法の加護を大きく受ける『グレラード』


4つの街は、それぞれが持つ魔法の力を分かち合いながら発展してきた。

その4つの加護によって成り立つ国こそが―――ルヴァール王国である。


そして、ルヴァール王家の血を引く者だけが、

全ての加護を受けることを許され

水、炎、風、そして闇の魔法の力で、代々この国を護り続けてきた。



そんなルヴァール王国の空には、いつも無数の手紙が羽ばたいている。


真っ白な封筒に、可愛らしい柄の封筒

大きい封筒もあれば小さな絵葉書、立派な封蝋が押されたもの。


手紙はまるで意思を宿している様に書かれた宛先を目指し飛んでいく。


これは、ルヴァール王国ではごく当たり前の光景。


手紙の飛び立つ場所は全て、風魔法の加護を受ける街『ウエンティス』からだ。

ウエンティスで魔法を施された手紙は

このルヴァール王国に暮らす全ての"誰か"に向け風に乗り飛び立つ。


そして、手紙を飛び立たせる者たちを人々は――『紡ぎ人』と呼ぶ。


彼らが届けるのはただの手紙では無い。

その手紙の中に紡がれた、一つ一つの想いを、送り出す。

だから、彼らは『紡ぎ人』と呼ばれている。



―――――――――



「おはよう、シエル」

「おはよう!フィアおばあさん、足の調子はどう?」

「お陰様で最近はいいよ」

「ほんと!よかったー」


「お!シエルー!おはよう」

「ジルおじさん!いつ戻ってきたの?」

「昨日の夜遅くにな!」

「今回はグレラードに行っていたのよね?またお話聞かせて!」

「あぁ、もちろんさ!半月後にまた出るから早めにおいで!」

「うん!」


私の名前は、『ルシエル・ブルー』

ルヴァール王国 ウエンティスで紡ぎ人として働いている。


生まれてすぐに、母を病気で父を事故で亡くした私はこの街でなんとか、育ってきた。


「シエルー!今日も絵本読んでー!」

「お姉ちゃん!今日は僕がシエルと追いかけっこする日だよ!」

「ニア、セシルおはよう」

「おはよー!」「おはよぉ」

「絵本も追いかけっこもどっちもしてあげるわ」

「ほんと!?」

「やったー!」

「ただ、私のお仕事が終わってからね?それまでちゃんとお利口におじさんとおばさんのお手伝いしてるよの?」

「うん!今日ママが、ラズベリージャム作るのお手伝いするの!」

「僕だって、パパの草むしりのお手伝いするもん!」

「シエルも、お仕事頑張ってね!」

「えぇ、ありがとう!」


私にとってこの街は、まるで家族のような存在だ。


「今日は風が強いわね。気を付けて手紙を飛び立たせないと」


私は足早に、全ての手紙が集まる場所”風書局《ふうしょきょく》”に向かった。


風書局には、紡ぎ人の仕事に応じて3つの部署が存在する。


この国中に置かれた”ポスト”に入れられた沢山の手紙の回収 『集書部』

届ける場所ごとに分け、封書内に危険なものが無いかの確認 『検書部』

それぞれの宛先に手紙を届けるために、飛び立たせる 『送書部』


これら全てを風魔法の加護の元行う。



―――――――――



「お!シエル!やっと来た」

「おはよう、フレン。珍しいわね、あなたが私より先に来ているなんて」

「うるさいなぁ、今日は先に寄る所があったんだよ!」

「ふぅーん、例の薬屋さん?」

「んな!ち、違うし!」

「あははっ、フレンわかりやすすぎるわよ?それで?会えたの?」

「っ、まぁ会えたよ、普通に」


彼女は、『フレン・ヴェリス』

同じ紡ぎ人で、同僚でありこの仕事でできた親友だ。


彼女は元々、違う国で生まれたが風魔法を操れることでこの国に、やって来た。


そして、最近彼女は気になる相手が出来たらしい。

風書局の近くにある薬屋に勤める『シーザー・アウディ』


彼に出会ってからのフレンは、なんだかとても柔らかい雰囲気になった気がする。


「まぁ、私には全くわからない感情だけどね」

「ん?シエル、何か言った?」

「ううん、何も」


「シエル、フレンおはよう」


声のした方に視線を向けると、この風書局の局長『ロイド・ハーヴェル』が立っていた。

彼の家系は代々この紡ぎ人として生きてきた。

王家にも認められた由緒ある、ハーヴェル家の人間だ。


本人は、そういう堅苦しい家系とか歴代のとかいう話が苦手らしくいつも私たちの

他愛もないない会話に付き合ってくれている。


「おはようございます、ロイド局長」

「うん。

そうだ、シエル。今日は、いつもより風が強くて湿気もあるから少し魔力を強めて飛ばしてほしいんだ。」

「はい」

「フレン、君も同じで回収の時はいつもよりも魔力を強めてくれ」

「了解です!」

「他のみんなにも伝えてはいるが、魔力の細かな調整は君たちが特にうまいからね

よろしく頼むね」

「はい」

「はい」


風書局では、それぞれ得意とする仕事を任されている。


私が主に担当するのは、集められた手紙を空へ送り出すこと。

手紙に風の魔法を宿し、宛先まで正確に送り届ける。送書部だ。


その日の風の強さ、向き、距離――

空模様に合わせて細かく魔力を調節する必要があるこの仕事を、私は得意としている。


一方フレンは、国中に設置されたポストから担当に分かれ手紙を回収すること。

遠隔で手紙に魔法を宿し、風書局まで一通残らず回収する。集書部だ。


手紙の大きさ、重さ、量――

それぞれを瞬時に見極め運ぶスピードや順番を決める。

感覚が大切となる仕事だ。


そして、有難いことに私たちはその魔力の調節が得意とされている。

勿論、先輩方には及ばない。

が、同じくらいの経験年数の紡ぎ人の中では、私たちの歴では上手い方だと言ってもらえている。



「じゃあ、シエル、またお昼にね」

「ええ、お互い頑張りましょう」

「それじゃあ、行こうかシエル」

「はい」


ちなみに、ロイド局長は私の所属する送書部の部長も務めている。

王宮への手紙は主に、ロイド局長が行う。


王宮に飛び立たせる手紙で間違いがあったら問答無用で極刑だろう。

私はそんなのご免皓むる。


そんなことを考えていると、送書部につく。

扉を開けると忙しなく動く送書部の職員と、ひらひらと飛び回る手紙たち。


「では、今日も紡がれた想い、運んでいきましょう」


ロイド局長の言葉で、飛び立つ窓が一斉に開いた。


窓の外に広がる、ウエンティスの街並み。入り込む清々しい風。

私は、この瞬間に見るこの景色がとても好きだ。


耳元では、カサカサと手紙たちが羽ばたく音がする。


「さぁ、飛び立ちなさい。紡がれた言葉を届けるために」


そっと呟くと、手紙たちはまるで踊るようにこの大きな空に飛び立っていく。

私が顔も名前も知らない”誰か”から”誰か”に寄せた想いが空に広がる。


「――あなたの想いが届きますように。」


まだ、私は知らなかった。

誰かに届けたい想いを、この胸に抱くことを。












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