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我はツチノコ  作者: あいうわをん
第8章 忘却の最果てにて
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暁に命限りの蝉時雨

誤字脱字報告ありがとうございます。適宜修正させていただきました。



 蝉の成虫はあまり見当たらなかったけどまあいいか。空も少しだけ明るくなってきましたな。そろそろ彼奴らもお目覚めかしら? 戻ってみましょうかね? そんなこと考えてたら、地面がもっこり盛り上がりました。


ん? なんですかな、これは? 


しばらく様子を見ていたら、盛り上がったところからセミの幼虫が出てきた。地面からのっそり這い出てきた幼虫は辺りをキョロキョロ見回すと、おもむろに木の方へ這いずっていきます。我、ぼんやりその様子を見ていたら、辺り一面からセミの幼虫軍団が! 皆、同じように木に向かっています。


あ! ただ向かうだけじゃなくて木登りをしております! 


なんじゃラホイと首をひねって考えました…… ああ、これは羽化しようとしてるのですね! 変態です! いや、えちえちな話ではなく、本当の変態の話なのです。幼虫体から成体へ体を作り替えることを変態というのだ! ノーマルな行為じゃないことをいうのではないのだ! 


アホなこと考えてると、目の前の木はあっという間にセミのサナギで覆われた。おう、これは彼奴らに討伐させてレベルを上げる格好の材料だね! 




 我はしっぽジャンプしながらウサギ共が寝ている場所へ戻ります。


……まだ寝てるよ。これは我の赤魔法で寝かしつけたのではなく、魔力を吸って気絶させたので、起こし方が分かりません。魔力が完全回復したら起きるのかしら? ボルちゃん達はそんな感じだったようだが、こいつらも同じかな? それではその間にご飯の準備をしておきましょう。たくさん獲れたセミの幼虫をオエッと吐き出しまして頭に竹串をぶすっと刺します。


びろーん。


串刺しにしたイモムシぽい幼虫を…… 簡単に火で炙ってみますかな? 焚火たきびおこして強火の遠火で焼いてみましょう。一羽ひとり一匹で足りるかなぁ?魔物の食欲はよくわかりません。まあ大食らいのコウのタローもいることだしたくさん焼いておけばいいか。


……


いつまで寝てんのよっ! 口開けっぱなしで舌出しっぱなし、よだれ垂れ放題で寝言言い放題! もう食べられないよ~って、それは普通の寝言だな! そろそろ起こしてもいいか!


秘技! 土魔法・砂布団震動サンドウェーブ



説明しよう! 砂布団震動サンドウェーブとはウサギ達にかけられたさらさらの砂に魔力を通してあたかも一枚の布のように取り扱い、その布の一端に波動を伝えることで布全体に波を起こすことができる技なのだ! 波の高さはウサギの二倍程度になって波の高いところからウサギ共が落っこちる! だとしてもウサギの体の横幅ぐらいの高さなのでそれほど衝撃もありません。ぼてん、ぼてんとウサギ達が地面に落っこちるのだ。落ちたウサギは目を覚ましたのか、首をあげ、辺りをキョロキョロ見回したかと思ったら、ぐぃーんと背伸びをした。どうやら完全に起きたようです。


”うぅん、よく寝たーーー”

”あー、起きた起きたーーー”

”寝覚めすっきりー”


どうやら起きたのは小さい方の奴ら、ニィーちゃん、サンちゃん、シーちゃんですな。吸った魔力量が少なかったからなのか、回復するのも早かったようですな。


”あ、かーちゃん腹減ったよ”

”メシ、メシは何処ー?”

”朝飯は何かなぁ?”


だからかーちゃんと呼ぶでない! 我は親方ぞ?



”だって今はケーコしてないじゃん!”

”それより腹減ったよー!”

”早くメシメシ~!”


全くしょうの無い子達だねぇ、メシならそれ、そこの火の周りにイモムシ焼いてるから、それ食べな。



”””ワー、ありがとうかーちゃん”””



ブルブルと身震いして体から砂を振り払ったあと、小ウサギ共が火の周りに刺してあった焼きイモムシに食らいつく。我もさっき食べてみたが、表面カリカリ中身ホクホクの黄金色をした食べ物になっていた、あのイモムシが焼いたことでただのイモになったようだ。


”わー、かーちゃんなにこれー?”

”あまくておいしー”

”ねぇ、たくさんあるからもっと食べていいー?”


ああ、たんと食べて大きくなりなさい。それと我はかーちゃんではない。今君等が食べているのはセミ…… シケダの幼虫じゃよ。



”えー嘘だー! ”

”シケダは羽が生えてるんだよー!”

”これには羽なんかないよー! ”


うむ、信じられないのも無理はない…… それでは論より証拠、見に行くか? おっと、今焼いているのを全部食っちまったのか。そしたら次の奴らが食べられないジャないか。もっと焼いておきましょう。我、口からオエッとイモムシを吐き出します。そして竹串でビュシュッ! ザスザスザスザスザスザスザスザス! プチプチプチプチプチピチ!


でろーん、でろーん、でろーん、でろーん…… 


君等もやってみ? そのツノで。



”やるけどさぁ”

”これがシケダとどう関係あるのさ?”

”こんな生き物初めてみたよ?”



あれ? 見たことないか? こいつらは地中にいるのだが? とりあえず、ツノウサギのツノでイモムシにとどめを刺させる。



”あ、レベルが上がったー!”

”これって魔物なんだー!”

”これなら簡単にやっつけられるー!”



よし、イモムシでレベリングはできるな。それではやっつけたイモムシは串刺しにして焼いておきましょう。それで、イモムシがシケダと関係あるところを見せてあげましょう。




 我、さきほどイモムシを大量採取した木の所に小ウサギ共を連れていきます。一番最初にサナギになったイモムシは……サナギのままだった。他にも木にはセミのサナギがたくさん纏わり付いていた。そら、あれがセミ…… シケダになる前の状態ですよ。


”うっそだー! ”

”全然シケダににてない! ”

”イモムシにもな! ” 



ふふん、そうでしょうね。形がまるで違いますからな! それでこそ変態の由来です。我、体内に貯めているイモムシの中で一番大きなものをチョイスしてオエッと吐き出します。彼なら、彼くらいの大きさなら、変態さんになってくれるに違いない! 


吐き出したイモムシさんはキョロキョロと辺りを見回すと、高い木に向かって這いずり回り、やがて木に登っていって変態さんになった。イモムシマンからサナギマンに剛力招来!


”わわっ、イモムシとやらが変わっていく!”

”あれが変態さん?”

”サナギマンってなんだ? ”



サナギマンはイモムシマンからシケダマンに変わる途中の段階なのだ。あの状態の時は動けないからチャンスだ、あれにぶちかましをやっておしまい!



”動けない奴に攻撃するのはちょっと……”

”こっちが悪っぽいよぅ”

”かーちゃん、それはやっちゃーなんねぇんじゃねぇ? ”


黙らっしゃい! この野は生きるか死ぬかだ! 生きていくためにはなんだってせにゃならんのだぞ。死にたくなかったら殺すのジャ。そして食らいなさい。そら、今お前らの目の前にあるのはさっきおいしいおいしいといって食べたイモムシジャよ?



”それの変態さんだけどな?”

”イモムシがおいしかったからといってサナギマンがおいしいとは限らないよぅ?”

”それにホントにあれがシケダになるの? ”


ウム、シケダになるのは本当だからちょっと待ってなさい、おいしいかどうかは我が食ってみるからとにかくお前らはあれにぶちかますのじゃ!




 我の説得に応じて、小ウサギ共はセミのサナギにぶちかました。地上に出たはいいけれど、鳴くに鳴かれぬ蝉時雨。


”とったどー!”

”わー、なんだかまたレベル上がったぞー!”

”まだまだたくさんいるからやっつけ放題だー!”


我、落ちたサナギを焼いてみます…… なんだかパサパサしててあまりおいしくありませんな…… 生だとどうでしょうね? ツノウサギのツノが刺さったところから出ている身をペロリと味見してみます…… なんとも言えぬ残念な味…… これ、ホントにシケダになるんかな? 我もちょっと自信なくなってきた。



 ちびツノウサギ共が木の幹に張り付いていたサナギをあらかた落としてフンスフンスと鼻息荒くなってた。サナギたちは、あともうちょっとでセミになれたのに残念でした。サナギからセミに無事なれたのは最初の一匹だけのようでしたね。そら、ちびウサギ共、あれをよく見なせい! 変態の時は終わったぞ。サナギマンからシケダマンに超力招来じゃ!



”あー、かーちゃんの言うとおりだったー!”

”さっきのイモムシがシケダのコだったんだー!”

”変態恐るべしだねー!”



そういやツノウサギなんかの魔物は急に形変わったりしないよな? こいつらちょっと大きくなった気がします。パワーアップして剛力招来してそうだな。


今宵も真夜中に徘徊俳諧??・・・


花粉症で鼻水たらしまくる日々を送っておりまする

シャブをくれよ~


お読みいただきありがとうございます<m(__)m>


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