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懐かしの人たち(第2章登場)^^。
とある崖の近くの村にて。
「先週、すっげー雨降ったと思ったら、またカンカン照りになったなぁ」
「あの雨、山の向こうまでは越えてないらしいぜ。さっき村長たちが町から帰ってきて話してた」
「やっぱり今年は水不足か…… でもそれにしては崖の下の川の水量、多くね? 」
「そりゃそうさ、この間雨降ったばっかりだからな」
「いや、そりゃそうだが…… 確かに土砂降りだったが、そんなに長く降ってなかっただろう? 」
「バーカ、おめぇ、そんなもん、山が降った雨水蓄えてるんだよ! うちんところの貯水池見ただろ? 放牧地にさんざん水撒いて、草生えたはいいがすっからかんになってたのが、この前の雨でまた満水になったじゃねーか」
「そうだな、いつの間にか池いっぱいになってたな」
「ありゃお蛇様の作った山のおかげだな。あそこに降った分の水、土に浸み込まなかった分は池に流れ込んでやがる」
「おまけに井戸水も引き上げやすくなったな」
「そりゃこの前の雨のせいだろ? 」
「それにしても、水不足なくなって晴れたら、牧草がおかしなくらい成長したな」
「ああ、牧草だけじゃないな…… 黒麦やお助けイモがまた収穫できるようになってないか? 」
「……そうだな」
「植えてひと月も経ってないよな? 」
「……そうだな」
「またすぐ収穫しなきゃなんねーな」
「……そうだな」
「お前、そうだなしか言ってねーな? 」
「だってそれ以外言うことないじゃないか! 」
「あの成長の早さって、お蛇様がいたころに似てなくないか? 」
「奇遇だな。オレもそのことを考えていた」
「お蛇様がなんかやったのかな? 」
「エルフさん達が出て行ってからまだひと月も経ってないが、もう用事は済んだのかねぇ? 」
「もう用事は済んでいるのかもしれねぇな。んで、こっちにまた来てるとか」
「それなら…… あの雨ってお蛇様の仕業ってこと? 」
「それはわからんが…… なんか変な技を領都で使ったという話聞いたことないか? 」
「変な技ならいくらでも使うんじゃねーか、あの蛇様」
「まあそうなんだけどよ…… なんか霧みたいなのを出したとか聞いたもんで、雨ぐらいなら簡単に降らせられるんじゃないかって思ったのさ」
と、二人が話をしている中、人がやってきた。
「おー、ヘルツ、ボーネンこんなところにいやがった! お前らさぼってる暇があったら牧草の刈り取り手伝え! 」
「さぼっているとは人聞きの悪い! おらぁちゃんと新しく来た牛ちゃんの世話をしてるんだぞ! さぼっているのはボーネン……」
「何言ってやがる! オレは畑仕事終わったんでここで一休みしてるだけだ! 」
「物は言いようだな! ここには牛用に室内が暑くなり過ぎないように気温調節魔道具がついてるから涼んでるだけだろうが! 子供らの悪い見本になりたいか! あ、ボーネン、お前村長に呼ばれてるぞ? とっとと行ってこい! 」
「オレ、呼ばれるようなことしたっけか? 」
「黒麦の収穫のことだとさ! 他の奴等は牛舎の増築やら商品配送やらで手が回らんだと! 」
「オレ、そんなに暇に見える? 」
「見える見える! 新築牛舎で涼んでいるくらいには暇に見えるぞ! 」
「へいへーい。行ってきますよ~」
崖の村で働くのはなにも大人だけではない。ボーネンが村長宅に行くと、子供がたくさん集められていた。手には何やら持っておりそれを口に運ぶとモガモガごっくん飲みこんだ。
「おー、お前たちいいもん食ってるじゃないか! 」
「ボーネンのおっさん、何しに来たんだ? これは俺たちの分だからやらねーぞ! 」
「人が食ってる分まで取り上げたりしねーよ! 村長に呼ばれたんだが、どこにいるかな? おーい、そんちょーさーん! おーい! オレが来たよー! オレにもお助けイモよこせーーーー!」
大声で叫ぶボーネンのおっさんを、子供らが指差して笑う。
「あーあ、ひとんちで大声出して食い物ヨコセとかいってるー!」
「恥ずかしいねー!」
「うん、恥ずかしい!」
「あんな大人になっちゃだめだな! 」
「だめだな! 」
「何言ってやがる! 大声出した方が相手によく聞こえるだろうが! 全然恥ずかしくない! 」
そこへ、年の頃は60過ぎであろうか、お年寄りと呼ばれるにはまだまだ先だぞ、と言わんばかりに颯爽と男が現れた。この村の村長、アーベル・ランドルドである。
「で、用事はなんですかー? オレもお助けイモ食っていい? 」
「なんだ、飯はまだだったのか? まあいい、要件聞いたら食って仕事しろ。こっちはこれからまた町へ戻らんといかん」
「え? 帰ってきたばっかでしょ?お土産は? 」
「ああたんまりあるぞ! お仕事というお土産がな! 」
「それお土産ちがーう! 具体的には食い物ヨコセ~! 」
「ほんとにお前ってワシに対しても遠慮がないの~、おーーい、アデリナ! アレ、持ってきてくれ! 」
村長の大声に反応する女性がアデリナ、村長の娘がはいはーいとうちの中に入っていった。それを見たボーネンは子供たちに
「それ見ろ! 大きな声を出すとすぐに伝わる! 村長のお墨付きだ! 」
と、偉そうに物申した。
「そりゃそんちょーんちだから、そんちょーは大声出していいにきまってんじゃん! 」
「ボーネンのおっさんはそんなこともわからないんだ! 」
「おっさんだからしょーがねぇ! 」
速攻で返されるボーネンのおっさん、おっさんと呼ばれるのもしょうがないのか? 年齢は30を超えたら仕方ないのか?
「こらーーーーー! お前ら、もっと俺を敬え! 」
「ファビ君、敬われたいんだったら、仕事で評価されなよ。そら、ポテトフライだよ! 庭のテーブルで食べなよ! 」
と、先ほど家の中に入っていったアデリナが出てきて食べ物の乗ったトレイを渡した。ファビアン・ボーネンをファビ君と呼ぶのは、アデリナがボーネンより年上なのか、それとも同郷同年代の好なのか……。ボーネンは片手で皿だけ受け取り、すぐにフライドポテトなる代物をもがもがと口にする。
「お、おお! ねーさん、こりゃうまいな! いつものお助けイモとは触感とか味とか全然違うな! この横についてる白いのと赤いのがまた食欲をそそる! 」
「おっさん、評論家かよ! 」
「素直にうめーって叫んでればいいのに! 」
「おっさんのくせに口は達者だな! 」
「うっさい! お前らなんか、お蛇様の呪いでフライドポテト食ったら喋れなくなっちゃえ! 」
「「「…… 」」」
この口の悪い三人の子供達は、ひと月ほど前にエルフの従魔としてやってきたお蛇様に呪いをかけられて果物や甘味類を食べたら麻痺するようになっていたのだ。そのことを指摘されると三人とも押し黙ってしまった…… と、トレイで頭を叩かれるボーネン。
「こら! そんなこといわないの! これから一緒に仕事するんだから! 」
「え~、こいつら引き連れて仕事しなきゃなんね~の? 」
「お前、こいつら連れて、黒麦とお助けイモの収穫をしてこい、収穫が終わったら耕してもう一度作付け。もう一回ならギリギリ育つじゃろうて。こいつらの模範になれるような仕事をしろよ? 」
「えーー? 黒麦とかイモとか、もう貯蔵庫いっぱいだろ? これ以上はいらねーんじゃない? 」
「バカ野郎、今年は天候不順で穀類は値上がりするんじゃ! それに思ったよりガルス・ガルスの餌の消費が多い」
「鳥の餌なんて虫食わせとけばいいじゃん」
「虫だと卵を生む数が少なくなるらしいからな…… アレは文字通り、金の卵を産むからな」
「卵ねぇ…… オレ達全然食ってないけどな」
「そんなわけあるか! お前が食ってるその白いのは卵からできとるんじゃ! 」
「えええ! まじでー! 」
「まじまじ、だから頑張って黒麦づくり頼むぞ。イモと黒麦の作付面積なんかはお前に任す。あーーー、そうだ。終わったらエッゲルトのところに行ってくれ。ガルスの餌に黒麦以外で何とかならんか研究するんだと。いろいろ材料持って試してくれ! それでは、ワシはまた村をでるぞ! お前らもちゃんと働けよ! あと1年とちょっと我慢すれば、街まで行ってスイーツたくさん食べさせてやるからな」
「ま、まじか! 」
「こんなにうれしいことはない! 」
「そんちょー! 約束だからな! 」
「おう! そんじゃ後は頼んだぞ? 」
用件を伝えると村長はさっさとその場を離れた。全く急に忙しくなってしまって人手が全然足らんなぁとぼやきながら。
「人手ねぇ…… そういや、村のバーさん連中も最近全然見かけねぇな。くたばっちまったのかな? それにしては葬式をやってないが…… 」
ガンガンガンガン! 今度はトレイの角で強かに何度も頭を殴られるボーネン。
「ファビ君? 先輩たちをバーさん呼ばわりしちゃいけないって昔っから言ってたけど、全然わかってないね! 」
頭を抱えて蹲るボーネンを見て、この人だけは怒らせないようにしようと思う子供達であった。ある意味よい見本となったボーネンであった。
ツチノコ登場COMINGSOON!!(ショウガ変わるよ^^;(五時ではない><))
また来週~(@^^)/~~~




