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我はツチノコ  作者: あいうわをん
断章 ツチノコのいないところで
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6

3/4会話会><




 ボルドウィンの上奏した情報(光の世界樹、それに育てられたツチノコという魔物、その魔物が使う魔法、世界樹を枯れさせる可能性のあるデス・ファンガスという魔植、道中並びにグラニーラムゼースミスでのツチノコの行動しでかし)があまりに重要すぎて、一旦間を開けることにした国王並びに諸卿達。しかし、さほど間を開けるわけにはいかない、なぜなら、神殿からの要請に対する対処も検討しなければいけないからだ。



 ミア・ボルドウィンは、その兄である軍務卿バナン・ボルドウィンと共に軍務卿執務室にいた。バナン・ボルドウィンは、ミア・ボルドウィンの20歳年上の80歳(基本人族40歳相当)で、周りにいた諸卿達よりも二回り(30歳や40歳程度)も若い年齢だ。軍人と言うには中肉中背、文官と行っても通用する、軍人らしさのない男だった。今年になってから前代軍務卿ヴァルター・ボルドウィンが高齢の為軍務教職を辞任し、その後を継いだのだ。その年齢のせいで各所から猛烈な反対が上がったのだが、彼は軍務省内での実力によりその地位を手にした。だが、軍務卿になったばかりのため、まだまだ諸卿会議内でのその発言に力はさほどない。今回の谷の風の里魔植討伐軍の長に自身の妹が選ばれたのもその影響だった。


対外遠征経験のない近衛軍の、しかも女性!


指揮能力に疑義のある彼女なら、必ず失敗・・してくれるに違いない! そう思われてどこかから推薦されていたのだ。その身内である軍務卿自身も討伐成功するとは、願ってはいたが思ってはいなかった。バナン・ボルドウィンは秘書に飲み物を準備してもらい、その後は人払いとして下がらせた。


「さて、ミア。初めての討伐任務よくやってくれた、礼を言うぞ」

「兄上、私は王命と軍令に従って任を全うしてきただけですよ? 礼を言われることはありません」

「そうか? それでは、家族として、お前の兄としていう。よく無事で戻ってきた!」

「それほど過酷な任務だったのですか? 」

「ミア………… お前、最初に風谷の里に行って散々な目に遭ったこと、もう忘れているだろう? あれは本軍が出張ってもなかなか討伐できるようなものではないぞ! 」

「ブラッツ兄や、炎軍団でもですか? 」



ブラッツ兄とは、ミア・ボルドウィンの一つ上の兄のことである。ブラッツ・ボルドウィン(年齢45歳、基本人族23歳相当)もアプフェル王国の軍人である。軍務卿の配下には三軍あり、そのうちの一軍をブラッツ・ボルドウィンが任されていた。彼も30歳にして軍に入り、風魔法と剣技を操り若くして頭角を現していった。そしてそのまま軍団長の位置までつくようになった。



「本当はブラッツに行ってもらいたかったのだが、各所から反対があってね…… 軍務卿になったばかりの手前、我を通すわけにもいかないのだ……。それに防衛任務中だし」

「では、炎軍や水軍では?」

「炎軍に任せたら世界樹さまにまで被害がでるかもしれなかったからね。水軍は……」

「やはり、派閥が? 」

「そう。水の世界樹が風の世界樹を助けるなどあり得ぬ、なんで馬鹿なこという人達がどこにでもいてね…… ミアは風だから討伐軍隊長に選ばれたのだ。まあそれだけではないと思うが」

「それにしても、近衛軍に所属する私である必要があったのでしょうか? 」

「むしろ、ちょうどよかったのではないかな? 私の妹だし」

「すると、私がこの任を与えられたのは、私が軍務卿の身内で、しかも失敗しそうだから、と言う理由だったのですか? 」

「そうだな。支度金の高を見ても明らかだろう。たった金貨10枚で20名の部下を連れて3ヶ月の討伐遠征って、無理筋だったが…… 本当によくやったな、ミア」

「優秀な部下と運に恵まれましたので」

「優秀と言ってもあの近衛軍だろう? ああ、私の送りこんだ彼女は俊英だったということか」

「やはり、ヴィンデルバンドは兄上の駒でしたか」

「気づいていたのか? 」

「いえ、遠征軍に入るには経験が足りないし、軍人にしては戦闘訓練もされていない。衛生兵という名目もこれまで聞いたことがありませんし。本軍にはそのようなシステムがあるのかと思いましたが、後で確認したところそのようなものはありませんでしたので」

「まあ、衛生分野というと国務省厚生部のものだからね。彼女は我が省と国務省で奨学金を出し合って仕事をしてもらっているのだ」

「16歳(基本人族8歳相当)の子供にですか?」

「まあいろいろと事情があるのだ」

「そうですか。それではバウアーも兄上が? 」

「バウアー?」

「新兵が4人、討伐隊に参加したのですが、その中の一人です」

「新兵を討伐隊に入れることは私は反対したのだが。と言うか、4人も新兵が配属されていたのか…… そうか、そのなかに優秀なものがいたのか」

「残りの3名は風谷の里再集結時に姿を見せませんでしたが…… やはり逃亡扱いになるのですか? 」

「うーむ。新兵を討伐軍に組み込むこと自体、異例のことだからなぁ。部隊編成したのは我らの方だし、責任の所在を問われるとこちらとしても非がない、とは言えなくなる」

「通常であれば処罰の対象でしょうが…… そこら辺は私の方でなんとかします。兄上はその新兵達の所在確認をお願いします」

「そうだな。王里に戻ってきているやも知らん。手配しておこう。それで、そのバウアーというのは新兵なのに、それほど優秀だったのか? 」


ミア・ボルドウィンは腕を組み小首を傾げる……


「優秀というのは違います」

「ではなんだというのだ? 」


彼女は組んだ右腕を外し、拳を顎に当てた。


「…… そうですね。なんというか、規格外? よくあれで軍に入れたな、と思いました」

「ミアには扱いづらい者などよくあることだろう? いつものように叩いて言うことを聞かせればよいだけではないか。ほら、なんと言ったか? お前の同僚のなんとか、と言う者も」

「いや、誰のことか、見当もつきませんね。それに私は叩いて言うことを聞かせたことなどありませんよ? それはさておき、バウアーは兄上の駒というわけではないのですね? まあ女性の手駒があるとは思ってませんでしたけど」

「ん? バウアーというのは女性なのか? 女性で新兵…… そういう兵卒がいるとは聞いていたが…… 体は大きいがあまりやる気は感じられない、と言う評判だったが…… 」

「たぶんその評判の者ですよ。ですが、やる気が感じられないのはきちんと食べてなかったからなのではないかと」

「ほう? きちんと食べさせれば、きちんと働くということか? 」

「それがそうでもないわけで…… そういう所も規格外なところです。軍人には見られないタイプですね。ですが」


言葉を切って、一度置いてあるグラスを持ち、飲み物を呷る。中身は冷えている果実水だった。


「兄上、私はもう子供ではありませんよ? 普通にハーブティで十分です」

「おおそうか。ミアの大好きなトラウベだぞ? ヴァインはもう飲めるようになったか? 今度うちに来い。そういや、陛下に呪蜂のアルコホール漬けを送ったそうだな」

「兄上の所にも送りましたよ? 届いてませんか? 」

「いや、ずっと省内にいたものでな…… 」

「! 家庭内不和? 」

「いやいや、家内円満だぞ? 」

「ならばうちに帰って下さい! 今からでも遅くありません! ヴァネッサ様を放っておくとは、なんという駄目な男ですか! 義姉上がかわいそうです! 」

「まったく、果実水ごときでこのように責められようとは…… それで、バウアーとやらをそれほど気に入ったのか? なんなら婿にするか? 」


ミア・ボルドウィンはため息をついた。


「先ほど、バウアーは女性と言ったばかりですよ? 」

「いや、女性ということにしてある男性かと…… 」

「とにかく、エマ・バウアーは女性です。そして」



もう一度、ミア・ボルドウィンはグラスに口を付けた。懐かしい味だ。子供の頃、よく野外で取れた物を絞ってジュースにしてたことを思い出した。昔のことを思い出したが瞬時に切り替える。


「あれは英雄に至るかもしれない者です。一軍を率いる将としては不適格ですが」

「ほう? 」

「気は優しくて力持ち、そのような者を、スネークは、”ヨコヅナ”と呼んでいました」

「ん? 今のバウアー評はスネークとやらの見立てか? 」

「いえ、これまで道中を共に過ごした私の意見ですよ、兄上」

「ふぅん…… そうすると今度の人事はどうするか…… ミアはそのバウアーを手元に置いておきたいか? 」

「私のみが今後の任を全うしていこうと思うならヴィンデルバンドを部下にしていただきたいですが、エルフ族全体のことを考えるとバウアーを育てた方がよいかと」

「他の女性兵はいらない? 」

「いらない、ということはありませんよ? ともに苦楽を過ごした仲間ですし。ですが、まあ彼女たちなら衛士になっても問題はないでしょう。私は衛士には堅苦しくて向かないかと」

「そんなことはない。お前、宮廷でモテモテだぞ? 女官たちから、氷の薔薇剣士とか無法殴り、男嫌いに女殺しといろいろな名前を付けられている。私はよく知らないが、お前と女官の恋愛物語が本になっていると聞いたことがある」

「えぇ~? 」

「最近だと、”晴天乱流”だったか? 不遜な二つ名がついたものだな! なんでも晴れた昼間に地の雨を降らせたと聞いたぞ? これでまた、何か噂になること間違いなしだな! ああ、そうだ。ひょっとしたら王女殿下や王子殿下に会って剣の指導を頼まれるかもしれないので、心得ておくように」

「えぇぇ? 王家の剣術指南は剣聖様が務めるのが筋なのでは? 」

「うむ…… 剣聖殿が王里を去られてもう何年になるか…… お前やブラッツにはよくしていただいたな…… あの討伐で足を悪くされて任に叶わずと王里を出られたが…… 殿下達が大きくなったのでまた招聘したら来ていただけるだろうか? 」

「剣聖の位にはまだ就かれておられるのでしたらあるいは」

「エルフ族が嫌になって出て行かれたのでなければな。しかし、あの方は基本人族故、そろそろ体が言う事を聞かなくなっているかもしれん。神殿に連絡がてら聞いてみるか」




久しぶりの兄妹の会話はここから他愛ない話へと転がっていった。


久しぶりのお金^^;

               ここに万をつける^^;   

 ↓

金貨1枚=大銀貨10枚  10,000,000円 1千万円相当

大銀貨1枚=銀貨10枚    1,000,000円

銀貨1枚=大銅貨10枚     100,000円 

大銅貨1枚=銅貨10枚      10,000円 

銅貨1枚=大鉄貨10枚       1,000円

大鉄貨1枚=鉄貨10枚        100円

鉄貨1枚が10円相当^^。


つまり金貨10枚=1億円で20人の兵士を使って魔物を討伐してこい、という命令でした。

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