朝飯前の一仕事
短め。
テーブルの上の大きな魚・・・・・・コーイと呼ばれた魚は、まだ口をぱくつかせていた。
「…… 生きてますね……」
「そうだな。これはバウアーが捕まえたのかな?」
「あたしじゃないですよー、まだ起きたばかりですー」
「これは大きなコーイだなぁ……バウアーでないとすると、二人のうちどちらかだが……ま、トレーネだろう。大方、ナインテールでマゼンタフロスを探っていたら獲物がいたので捕まえたといったところか」
「捕まえたはいいけどよ、気持ち悪いので触りたくねーとか言って、そのままにしてる」
「ヒーちゃん、川に戻すから手伝ってって言っても手伝ってくれないんだもん!」
「だって、気持ちわり―じゃねーか!」
「ちょっとちょっとお二人さん、コーイは貴重な食料ですよ! まだいるんなら捕まえてほしいですが!」
「だとよ! カーちゃん、頼むぜ!」
「隊長、解体はお任せしてもよろしいですか? 私は朝食の準備をしてます」
「わかった」
隊長と呼ばれたエルフは、脳天に剣を突き刺し、コーイを絶命させる。
「バウアー。これを吊るしてもらえるか?」
「あ、ロープならここにありますので使ってください。あと、血もお鍋に保存してください」
「了解。吊るす奴は……いつぞやブラックベアを狩った時の木材でいいか…… どうした? 二人とも? コーイを狩ってきてくれるんじゃなかったのか?」
「いや、隊長ってワイルドだなぁって……」
「あぁ、思ってた以上だな」
「なんだ君ら、生魚を触れたぐらいで大げさだな。バウアーは、これくらいなら素手で捕まえてくるぞ」
「ここら辺、コーイがたくさんいそうですねー」
「バウアーは、コーイを捕まえる前にこっちを手伝ってくれ。ボーデンもだ。二人は漁を頼んだぞ」
「隊長さん、オレは……」
「フランメは、もちろんコーイの確保だ。捕まえたらテーブルまで運んでくれ」
「ヒーーー!」
こうして、朝食前に人の大きさもあろうかというコーイが7匹捕獲された。
「ふむ、こんなに獲れるものなのだな! トレーネは朝からいい仕事したな!」
トレーネと言われたエルフは、げんなりした顔で親指を立てた・・・・・・ もう一人のいい仕事をしたフランメと呼ばれたエルフは…… そそくさと石小屋の真ん中にある風呂場へ直行した。魚の生臭さを取るためである。昨夜風呂に入ったときに隊長が出していた石鹸で服・装備を洗うためである。ついでに自らの魔法で風呂の水を温めた後全身を洗っていた……




