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我はツチノコ  作者: あいうわをん
第5章 ツチノコの証明 神樹さま、我のあの背負子、どうしたんでしょうね・・・ええ、夏にグラニーラムゼースミスの谷底で落とした、あの背負子ですよ
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ボルドウィン小隊の内情


 チチチチチ……光がドアから入り少女エルフのベッドに当たる。


「うーん…… 朝ですね…… 起きましょうか」


少女は目覚めるとすぐに起き上がり、大きく伸びをするとベッドからでる。


「さてさて、仕込んだ料理はどうなってますかね? その前におトイレ……スネークちゃんはおトイレまでは作ってなかったようですね……それではっと」


少女は建物の裏手に回り用を足す。


「私もスネークちゃんみたいに穴魔法が使えたらよかったなぁ。あれ、意外に便利そうでしたね」


用を足した後は彼女の持つ火魔法で排泄物を焼き払う。こちらの方が穴に排泄物を埋めるよりよほど衛生的であることは言うまでもない。さらに2属性持ちの彼女は魔法で水を出すと手を清め、それから顔を洗い、口をゆすいだ。


「ふぅ、さっぱりしました」


そのあと、彼女は腰のポーチからタオルを取り出し水気を拭いていく。


「よし、今日も一日頑張るぞ!」


 彼女の名前はハンナ・ヴィンデルバンド。アプフェル王国近衛軍ミア・ボルドウィン小隊の衛生兵である。普段の仕事は衛生兵として、隊の食事や健康管理、怪我・疾病の治療として、隊がうまく機能するようにする存在なのだが、彼女は王国軍にいる魔術士としてはトップテンにランクインするほどの実力の持ち主だった。なので緊急時には戦力として加わることもできる。アプフェル王国軍の次代の担い手として、軍上層部に評価されていたのだ。その彼女を今回の任務に送ったのは時の軍務卿バナン・ボルドウィン、小隊長ミア・ボルドウィンの長兄に当たる人物である。本来が無理筋だったこの任務に近衛軍を当てること自体がおかしな話だが、さらに誰かが自分の妹を任命するように勧めてきたのだ。これはもう自身の政敵であろうことは明白だった。兄として少しでも末妹すえのいもうとの小隊長になっての初任務を成功させてやりたいという親心、いや兄心であった。無論、そんな思惑があるとは隊の誰もわからない……


 ヴィンデルバンド衛生兵は昨夜仕込んだ料理がどうなっているかを確認するため、食事テーブルのところへ行く……と、そこには最後の夜営当番、ヒーディ・フランメクライゼル正規兵とカルラ・トレーネ正規兵がいた。二人ともぐったりしているようだ。何事かと思いヴィンデルバンドは声をかける。


「おはようございます。フランメクライゼルさん、トレーネさん。どこか気分でも悪いのですか?」


「あ……ああ。衛生ちゃんか…… おはようさん。魔力の使い過ぎで、ちょっとな……」


「ヴィンちゃん…… おはよ。スネ君からもらった魔力水晶。あれ使うとなんだかだるいのよねぇ…… 魔力は完全回復してるのにね」


「そうですか…… スネークちゃんの魔力水晶は純粋に魔力のみを回復させる効果なのかもしれませんね。ちょっとメモしておきましょう」


「それで……なんか解決策ってねーの?」


「このままだと今日は動けないかも……」


「そうですね、それでは隊長から預かったダブルポーションを飲まれてみてはいかがでしょうか? スネークちゃんが元住んでいたところで隊長がもらってきたらしいのですが? 他に体力ポーションはありませんし、少しでも回復すれば御の字ですが。スネークちゃんなら光魔法でだるさを取れるのかもしれませんが、まだ気絶したままでしょう?」


「「…………」」


「どうしましたか?」


「あーーー、オレらが番をしてからしばらくたって、スネークのやつ起きてきたぞ? またしばらくたって、実験とか言って魔法使って気絶してたけど……」


「それは何時くらいか覚えてますか?」


ヴィンデルバンド衛生兵、ポーチからノートとペンを取り出す。


「あれはオレらが番についてちょっとしてからだったから……5分ぐらいたってたよな?」


「そうですわね。交代時間が朝の3時頃ではなかったかと、砂時計がちゃんとしてればですけれど」


「時刻みの魔道具は隊長しか持てませんからね。すると、大体3時間と20分ぐらいで回復したのでしょうか…… どんな魔法を使ったか覚えてますか?」


「えー……と、オレが水晶玉に魔力を込めてくれるように頼んで、それとコマを水晶で作ってもらうように頼んだんだ」


「あたしも水晶玉に魔力を込めるように頼みました。あと、コマも1000個分貰ってそれに魔力を込めてもらいました」


「ちょっと待ってください! コマというのはいくつあるのですか?」


「確か、スネークは10000個作ったって言ってなかったっけ?」


「あと、体内にある水晶玉に魔力籠っているかなぁとか言ってましたから……」


「あ、そのあと青い水晶玉を吐き出してたな」


「なるほど、体の中に水晶玉を貯めてあるのですね? そして体内で魔力が貯められるか実験をしたと? その数はいくつかわかりますか?」


「いや、見たのはひとつだけだけど?」


「水魔法でしょう?たくさんの水晶玉にいっぺんに魔力を込めたんじゃないの?」


「それなら数はわからんか で、そのあとまた実験するって言ってたな?」


「そうね。体内にある祝福をかけていない水晶に青魔法掛けるって言ってたような……」


「お二人さんは額金をつけてませんが、どうやってスネークちゃんと話したのですか?」


「「……」」


「どうしました?」


「その、隊長さんのと新兵ちゃんのを無断借用した……」


「なるほど」


「怒らないの?」


「いえ、私はスネークちゃんが新しい魔法なり技能なりを取得したのかと思いましたので。額金通信だったのですね。うーーーん、それじゃあ次にスネークちゃんが起きるのは……3時間後ぐらいか…… それとお二人さん」


「な、なにか?」


「魔力量が大幅に上がっているのですが、どうされたのでしょう?」


「夜営って言っても基本暇だろ?」


「うんうん」


「それでスネークに言われた通り、魔力操作の練習してたんだ。それが結構面白っくってよ。スネークが気絶してからもずっとやってたら……」


「なるほど、急激な魔力容量の底上げによる体力の枯渇に近い減少のようですね。やはりダブルポーションを飲まれた方がよいでしょう。こちらをどうぞ」


そういって衛生兵は二人にダブルポーションの入った瓶をわたす。二人はぐびぐびとポーションを飲み干します。


「はーーーーっ、うまかった…・・・ちょっとだけ回復した気がする」


「ちょっとだけですか…… それではもう1本飲みますか?」


「ありがてぇ…… ングングング……ぷはーーーー! この一杯のために生きている!」


「うーーん、あんまり飲むとおなかが……」


「トレーネさん、無理はなさらない程度でお願いします。ヒーディさん、それでどのくらい回復された感じですか?」


「そうだなあと5本も飲めば大丈夫かな?」


「それでは、先に5本お渡ししておきます。トレーネさんにも。喉が渇いたときに1本飲み干す感じで飲まれてください。いっぺんに飲むとおなかが緩むかもしれないので……1時間に1本程度の感覚でお願いします。さて、食事の準備をしますが、お二人はおなか空いてます?」


「「ポーションでお腹いっぱい・・・・・・」」


「うーん、困りましたね……」


ヴィンデルバンド衛生兵の悩みは尽きない……


本日はこれにて。

お読みいただきありがとうございます。


虚、今日こそは誤字脱字ありませんように(>人<)


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