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我はツチノコ  作者: あいうわをん
第5章 ツチノコの証明 神樹さま、我のあの背負子、どうしたんでしょうね・・・ええ、夏にグラニーラムゼースミスの谷底で落とした、あの背負子ですよ
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スネークのいない(いるけど)丑三つ時の夜営

朝の予約投稿して寝る……


 中天に輝くお月様がいつの間にか傾いた頃、川のせせらぎの合間に金属のぶつかり合う音が聞こえてくる。


「さすがに2mの得物だとなかなか間合いに入らせてくれないな!」キンッ!

「そんなこと言って、ちょっとでも隙を見せたら、すぐに懐に入ってくるくせにっ!」カンカンッ!

「それそれっ! さがってばかりだと、あとがなくなるぞっ! 地形を頭にいれておけっ! それっ!」

「参った! よそ見した瞬間に入られちゃったよ…… 隊長、また早くなったね!」

「ああ、このブーツのおかげだな」

「ええーーーー、もしかして風魔法使ってた?」

「まあそういうことさ。ボーデンだってブーツ履いてるだろう? あれでスネークのように土魔法の土壁をだしたりすればいいんじゃないか? もしくは穴魔法を使って一気に地面に潜るとかできないのか?」

「あー、そういう使い方ができるんだ。全然思いつかなかったよ」

「ボーデンは素直だからな。あまりフェイントをかけたりしないだろう? そこら辺が、フランメやトレーネにやられる原因だ」

「フェイント」

「ああ、そろそろ残り40分ぐらいだから、我らも風呂に入って汗を流すとするか」


二人のエルフは模擬戦を止めると、石小屋の方へと向かった。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 一方石小屋のなかでは。一人のエルフが目を覚ました。


「うーん、爽やかな目覚め―! いつぶりかしら? こんなにすっきりと目が覚めるなんて! さて、起きましょ起きましょ! お腹もすいちゃったし! あ、でもヴィンちゃんはまだ寝てるようだし、朝ごはんにはあと3時間くらいあるわねー隊長たちって…… まだ寝てないわよね? 何か食べるもの持ってないか、きいてみようかしら? それにしても…… 寝穢いぎたないやつねー。ほら、ヒーディ、起きるわよ!」

「うーん、あと1時間……」

「あれ? まだそんなに時間残ってるのかしら? 私が早く起き過ぎた?」


そんなことを呟きながら起きた方のエルフは外へ出た。確か、昨晩食事をしたところに砂時計が置いてあるはずだ。そう思い、薄闇の中を歩いていく。篝火はすっかり下火になりなかなかあたりが見えにくい。


「まずは薪を足さなくっちゃね……」


そう独り言をつぶやいたが、石小屋の真ん中、風呂のところがやたらに明るい。誰か入って……いるとしたら隊長とボーデンに違いないわ、と思い直す。でもあの灯りは何かしら?そんな疑問を持つと、そのエルフは石小屋の真ん中の風呂と呼んだところへ入った。


「あー、トーレネか、もうすぐ交代だから起きたんだな! ご苦労」

「隊長……その光る宝石は何ですか?」

「これか? これはスネークが作ったやつだな。光魔法を閉じ込めているらしいが、誰も魔力を取り出せないのでずっと光りっぱなしだ。篝火代わりに使っているが便利なものだな」

「それがあるんなら、篝火焚かなくってもいいですか?」

「あーーー、鍋の煮炊きに使っている火は消さないでくれ……朝になったらヴィンが回収するから、それまでもたせればいい」

「鍋の中には何が?」

「食べるものが入っているぞ。お腹が空いているのなら食べてもいい……それでは、我々はそろそろ出るか。フランメはどうしてる?」

「まだ寝てます」

「カーちゃん。鍋は5つあるから時々かき回してくれとヴィンデルバンドから作業依頼があった。あとはよろしく……」

「ボーデン。寝るには早いぞ。ほら、風呂から出て! トレーネ、すまないが入り口のタオルを頼む」


トレーネと呼ばれたエルフはタオルを二つ持つと隊長と呼んだエルフに渡す。隊長は自分の体を拭いた後、ボーデンと呼んだエルフの体を拭いて外へ出た。全裸である。このエルフは裸族なのだろうか?


「そら、ボーデン。もう少しだ。このコップを持て!スネークの眠り薬が入っているからすぐに寝れるぞ!」

「ふぁああい……」


ボーデンと呼ばれたエルフも全裸である。ふらりの全裸エルフはコップをもって石小屋の中へと入っていった。トレーネと呼ばれたエルフに、後を頼むと言い残して。残されたエルフは


「隊長、パイオツカイデー!」


と謎の言葉を発したが、慌てて自分の置かれた状況に気づく。


「あ、砂時計、あとちょっとしかない! ひっくり返さなきゃ! あとあのバカ女を起こさなきゃ!」


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 トレーネと呼ばれたエルフは、もう一人バカ女と呼んだエルフを簡易ベッドから引きずり出した。


「ほら、ヒーディ! 起きなさい!」

「うーん、あと5分……」

「もう夜営の時間は始まってるの! 起きなきゃ水ぶっかけるわよ!」

「……わかったよ…… そんなきゃんきゃん吠えるなって……」

「キャウンキャウーーーーン!吠えたくもなるわよ! なんでこんなのとペア組まされたのかしら?」

「そりゃおめぇ、リーちゃんは隊長さんの訓練相手だし、新兵ちゃんは衛生ちゃんの助手だし、他におらんめーが……ああ、スネークが起きてたら組まされたかも知らんがね」

「スネ君の方がよっぽどましよ!」

「そうだな、お前なんかよりよっぽど話せるな!」

「え? なに? あんたスネ君と直接話したの?」

「ああ、衛生ちゃんが魔力使いすぎて瞑想するからって、額金かしてくれたよ。なかなか話せる奴だったぞ。リーちゃんも武器の説明の時に話をしたらしい…… お前、直接話してないの? 嫌われてるんじゃねーの? ははっ」

「そ、そんなはずはありませんわっ!」

「新兵ちゃんが言ってたろ? 欲をかいたやつは嫌われるんじゃねーのか? さーて、オレは魔力操作の訓練するけど、お前どーすんの?」

「……朝ごはん食べる……」

「あー、いいねぇそれ! 俺も食べようっと!」

「食べる前に、鍋の中身をかき混ぜろって伝言された」

「混ぜりゃーいいんじゃね?」

「あんたもやるのよ! そら、かき混ぜるときはじっくり全体が均一になるように混ぜるの!」

「おーーー、うまいもんだなぁ! ちなみにこのすごい香辛料の匂いのする料理はなんだ?」

「”カレィ”っていうスープらしいわ。スネ君が考えたんだって」

「加齢か、カーちゃんにぴったりだな。加齢のカーちゃん!」

「馬鹿なこと言ってないで、あんたも他のやつ混ぜなさい!」


鍋の中身を混ぜ終わった二人のエルフ。麦粥を食べ終わった後は、それぞれのトレーニングを励むことにしたようだ。夜明けまでもうすぐ……


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