こ、これが強化された武器? カーちゃんの独り言
私はスネ君から強化された武器…… って言っても鞭なんですけど、渡されました。正直、あまり気乗りはしなかったのですが…… だって、この武器売ってた店長、あの気持ち悪い服装倒錯者が、私のこと殿下とかいうんだもん。ボルドウィン隊長に比べたら全然だけど、私だって派遣先のナイトラウンジでは女王様として接客してたんだからね!女王様は傅かれてなんぼでしょーがああああああ! ま、あとの二人は妥当な評価だけれども!
でも。まあこの武器はなんだか性に合ってるわ! あの岩をあいつらに見立てて…… こらヒーディ! いっつもいっつも私に集ろうとするんじゃない! 貸した金返せ! 私の食べている皿から料理を取るな! 私が眠いのに話しかけるな! …… ハァハァ!悪のヒーディ・フランメクライゼルは私の鞭で成敗できました! 次は…… おいリージー! 3つ年上だからって偉そうにすんな! いいたいことがあるんならはっきり言え! 軍人なんだから人見知りすんな! 嫌いなものを私に食べさそうとするな!……あーーーー、癒されるぅ! なにこれ? やたらとすっきりするわ! あの出来の悪い二人となんでチーム組まされたのか…… それは一緒に入った女性軍人が次々と辞めていったから…… そんなあっさり辞められるの? って聞いたら、結婚するとか、実家を継ぐとか、妾になるとか…… 最初の二つはいいわよ! 妾って何よ!? …… バイトで商家の護衛に行って? そこの大旦那様に見初められた?! 軍人なんていつ死ぬかわかったもんじゃないし抜けれるんなら早く抜けたかった……クッソ、そんな抜け道ルートがあったのか! あの女! 笑いながら私にアドバイスなんかしてやがる! クソがぁああああぁあああああ!
……ふぅ、なんだかすっきり! 結構な回数鞭振るったわね! おかげさまで腕と背中、あとおしりと太ももがパンパン! もう疲れちゃった…… そうよ、こんな時こそ、スネ君の光魔法よ! ああ、気が付かないうちに暗くなってきましたね…… 拠点の方は……煙が立ってますね! 全身けだるいけど心地よい感じ…… 夕飯の準備、ヴィンちゃんがやってくれてるのでしょうね。他は……バウちゃんかしらね? ガサツな二人には料理はできなさそうだし、隊長は粗食だし…… いやいや、スネ君がやってるんじゃない? そうよ、きっとそうよ! 宿屋でおいしいもの作ってたの、スネ君だったそうだし! 私は急に軽やかになった足を回転させて拠点へと戻った……
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あれ? 調理してるのは、ヴィンちゃんとバウちゃんだけ? 背の高い方のガサツ女は椅子に座って何か飲んでるわね…… そんなことより、スネ君はどこ?
「あ! トレーネさんお帰りなさい。スネークちゃん、一緒じゃありませんでしたか? 」
「え? スネ君いないの? 」
なんだか急に体がけだるくなってきたわ…… 私も椅子に座ることにしましょう。
「トレーネさんと一緒じゃないとすると、隊長と一緒なのですかねぇ? 」
「……そうかもね…… 光魔法使ってほしかったんだけど、いないんじゃしょうがないわね…… ヴィンちゃん、何か飲むものないかしら? 」
「スネークならあの小屋の中で寝てるぞ? 」
えっ? なにその情報?
「なんかオレの武器に祝福掛けるとかなんとか言って。掛け終わったらふらふらになったのに、そこからさらに透明な石を作ったと思ったらまた魔法を使いやがったぞ? あれじゃ完全に魔力の過剰放出だ。気絶する前にベッドに連れてけって遺言を残してたから、オレがあそこの石小屋のベッドに連れて行ったんだ」
「ああ、そうなんですね。スネークちゃんはああなったら半日はあのままですね」
ガーン…… すると私は寝なきゃ回復しないの……?
「いつもそうだろうがよ。何言ってるんだお前? 」
ああ、バカ女の相手をするのもばからしい……
「トレーネさんお疲れのようですね。スネークちゃんから教わったハチミツレモン炭酸水でもどうですか? 疲れたときは甘酸っぱいものが効くそうですよ」
そういって、渡されたのはバカ女と同じカップに入った、なんかシュワシュワする飲み物…… これ、宿でも飲んだわね……一口啜る……ああ!口の中がピリッとしますが蜂蜜の甘さが和らげてくれますね……
「隊長たちが帰ってきませんが、どうしましょうか? もう夕飯にします? 」
「もうちょっと待ちましょうか。それともうすぐ暗くなるので篝火はもう少し増やした方が…… 後、あの小屋はどうなっているのですか? 」
「右側が私たちの寝るところです。あの辺に篝火を置きましょう。真ん中がお風呂だそうです。私もさっき様子を見に行ったのですが、中には熱々のお湯があってまだ入れそうにありません。食事が終わって適温になってなかったら水魔法で少し冷やそうかと思ってます。左側は馬小屋です。エマさんが飼い葉をあげて、私が水をあげたので今日はもうお馬さんたちはお休みですね」
「…… 私ももう休みたい…… 」
「お疲れのようですね。そしたら、今夜の夜営は、最後の方に回してもらいますか? 」
「ここで夜営をするの? 」
「はい。これまでの経験上、野宿をしているときは誰か1人は必ず起きて見張りをしていましたから。今日は6人いるので、二人一組で3時間づつになるかと思います」
「あたしー、なんか知らないけど寝てたんですよねー。だから早番にしてもらいたいんですけどーーー? 」
「そういえばエマさんは私が瞑想終わりの30分前に起きたんでしたっけ? するとあれは大体100㏄で3時間ぐらいの効果があるようですね…… 問題は濃度ですが、どのくらいを混ぜたら効くのでしょうか…… あの時の水球の大きさは直径が3mくらいでしたから、それであの粉の量だと……スプーン一杯くらいかしら……」
「ハンナちゃーん、隊長さんたちが帰ってきてますよーーーー、もうお皿だしてもいいんじゃないですかねーーーー? 」
「え? どうしてわかるのですか? 」
「なんかーーー、話し声が聞こえますよーーー? だんだん大きくなってきてるのでーーーー、近づいてるんじゃないですかねーーー? 」
バウちゃん、こんなに耳がよかったかしら? 私はヴィンちゃんとガサツ女を見ます……両方とも首を横に振ります。
「ま、近づいてるんならお皿を出してすぐ食べられるように準備しましょう」
「わーーーい、オニクーーー! 」
「今夜のメニューはなんですの? 」
「タウルスニクのステーキです! 明日はいよいよグラニーラムゼースミス入りですからたくさん食べてしっかり休養をとりましょう! 」
「ステーキかぁ!いいな! しかもタウルスニク! こっちだとシャーケとかコーイとかばっかりだったもんな! たくさん食えるんだろうな? 」
「はい! 500gの塊肉を焼きましたので! 足りなかったらじゃんじゃん焼きますよ! 」
タウルスステーキかぁ! ほんとに久しぶりだこと! よだれが出ますわね!
「おいおい、カーちゃんよ! よだれ垂れてるぞ! まったくガサツな女だなぁ! あははははは! 」
ガサツ女はあんたの方でしょーが!
本日はこれにて。
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