中古屋”ワンちゃんの落とし物”で拾った
我が発見したものは斜め向こうの防具屋だった。なぜ文字も読めないのに、そこが防具屋と分かったか? それは甲冑が軒下に置いてあったからです。文字が読めない人用にわかりやすい絵の看板を置いたり実物を置いてわかるようにしてあるのだ! 親切設計だね。ボルちゃん! あそこにドライブインするのだ!
「ん? 防具屋に行きたいのか? 武器屋ではなく?」
甲冑があるってことはさ~、手の部分を守る籠手みたいなのもあるよね?
「手の部分を守る防具…… ガントレットのことだろうか? 」
「ガントレット! いいねぇ! 鋼鉄のガントレットなんかないかな! 殴り合いをするのに威力が増すな!」
「剣もできないのに手の防御……… 剣を使うかと思いきや殴り合いをされるのは笑えますわね! いいんじゃないですか? 野蛮なヒーディ様らしくって、オホホのホ!」
「…… ガントレットはエルフ族で使ってる人、見たことない…… そもそも、女性用の、ある?」
がやがや店の前で煩いと思ったのか、ボルちゃん店の前に立った。
「ごめん。店主殿はおられるか? 」
店の奥から、はいは~ぃ、という返事がした。パタパタパタと音がして、出てきたのは小っちゃい子…… 子供店長か?
「旦那は今留守にしてて、話なら私が聞くよ? エルフさんたちかい? なにが欲しいの?」
奥様でした。さては店長、ロリコンやな?
「見たところ防具屋だが、こでガントレットは売ってるか?」
「ガントレットだけ? 防具はつけないの?」
ロリ店長嫁はじろじろと嘗め回すようにボルちゃん達を見ます…… なんか視線がいやらしい><
「防具をつけると機動力がなくなるからな。エルフ族は機動力に優れているから、その利点を消すわけにはいかない」
「でも、最近の防具は軽くて丈夫なものもあるよ? どうだい、このブラッディオックスの胸当てなんか?」
「私はガントレットがあるか聞いているのだが? 」
「あー、うちはガントレットだけってのはやってないねぇ。中古でよければ売ってるところ紹介するけど? その前にうちの商品、なんか買ってってくれれば」
ボルちゃん、何とかの胸当てを6人分購入します。まあ胸当てくらいなら邪魔にもならんでしょう。一応サイズ分けもありまして、ボルちゃんとエマさんが大、ハンナちゃんが小、そのほかの人たちは中になりました。これでオマケしてもらって銀貨2枚だと! 高いんだか安いんだかよくわかりませんな。
「中古品ならもうちょっと先に行ったところで売ってるよ。汚ねぇもんばかり扱ってるからすぐわかる。店の名前は……”ワンちゃんの落とし物”だったはずだよ。目印は樽に古びた剣が入り口に置いてるから。それじゃ毎度ありがとうございました~」
ワンちゃんの落とし物って…… 散歩させてたら必ず飼い主が拾わないといけないアレじゃないか! なんというものを拾わせてくれたんじゃーーーー。
少し歩きますと、それらしきお店を発見。文字は読めませんが、たしかに樽にぼろい剣やら槍やらが置いてあります。古本屋のバーゲンセールのようなものか? 中を見てもぼろいものしかないな。はてさて、拾い物はありますかな?
「いらっしゃいませ。何かお探しですか~」
揉み手をしながら出てきたのは、なんだかくねくねしたおじさん?
「ガントレットを探しているのだが、この店ならあると防具屋の店主に言われてな。探しに来た」
「うちは中古品しか扱っとりませんが、よろしいでっしゃろか?」
「ああ、中古屋に新品を求めているわけではないからな」
ガントレット、ガントレットはっと…… どこ置いたっけなー↑ 変な抑揚をつけて独り言をつぶやいていたが
「この樽にありました。お好きなだけ見てってちょーだいな!」
ボルちゃん、樽の中から一つ取り出しました…… すげー錆びてるぞ?
”錆はスネークちゃんの金魔法で何とかなるのでは? ”
おー、そうでしたそうでした。
「ご店主、やたらと右手が多いのはなぜだ? 」
「なぜってあーた、ガントレットは防具ですからね。剣を持つ右手を相手が狙うのは当然でしょう? 左手には盾を持つ場合が多いですからね。左手用があるのは双剣使いのためですよ」
「なるほど。で、これはどうやって装着するのだ? 」
「これはですねぇ、剣を握りやすくするために指の第一関節は出てるでしょ? だから、片手をはめるときにこの留め金を専用の工具で回していって、3点止めるところがありますので多少の腕の太さも調節できます」
「よし、ここにあるの全部買うからその工具も売ってくれ」
「よろしいんですか~♪ 毎度! 右手が5本と左手2本、工具をオマケしまして大銅貨7枚です!」
1つ1万円ぐらいか。価格がいまいちわからんが安い方なのかな? あっちの錆びた剣とかも予備で買っとく?
「ご店主よ、表に出ていた錆びた剣も買うからもう少し負からんか?」
「いいんですかぃ? 何本買って下さるんで?」
「そうだな、全部で何本あるかな?」
「こっちの樽には20本の剣、向こうの樽には12本の槍がありますよ。芯まで錆びついてなきゃ研いで使えるようになりまさぁ~、へっへ♪」
と、言うことは全部使い物にならないのを客を騙くらかして売ろうって寸法だな!
「隊長~、言っちゃなんなんですが、これ、使い物にならないと思いますよ~?」
「1本いくらで売ってるのだ?」
「そうですね、使い物になる剣もたまに出てきますし、どうです? 1本銅貨5枚で?」
「錆びた剣を銅貨5枚か? 槍も同じ値段で?」
「さよです♪ 」
「ガントレットも全部まとめて、銀貨1枚でどうだ? どうせ拾い物だろ? 」
「こんなものを何に使われるんですかい?」
「なに、剣の練習用にたくさん必要でな。どのみち初心者用だから、ぼろくても構わないので錆びた奴でもいいだろう」
「ま、いいでしょ、全部まとめて銀貨1枚。お譲りいたします」
中古屋でヒーちゃん専用武器と、予備の剣・槍を買って怪しげなお店”ワンちゃんの落とし物”を出たのであった……
本日はこれにて。
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