フランクフォートの武具通りにて
毎度ありがとうございやしたぁという掛け声を背に、ボルちゃん小隊は全員馬に乗って通りを進む。我はボルちゃんの頭に乗ったままだ! 高所から街の見学ジャー!
”次は武器を買うのか? いい店があるんか?”
「うむ、シュッツ殿に昨日伺ったのだが、馬屋からそう離れていないところに武具を専門に売る通りがあるそうだ。そこで気に入ったものがあれば買うといいと言われた」
”武具通りってあるんだ”
「うむ。通称”親孝行通り”だと」
”なんや、その名前は?”
「武器や防具を使って立身出世をしたものが親孝行をした、という逸話があるそうだ。いろんな店があるそうだぞ。依頼受注するところもあれば、大量生産したものを販売するところもあるし、戦場などで落ちていた武器の中古品を売っているところもあるそうだ」
むしろ、戦場や冒険の場で早死にして親不孝になりそうなのだが?
「おっと、ここが通りの入口のようだな。それでは公共馬房止めで馬を止めるか。ヴィン……とバウアーは留守番しててくれ。こっちの3人用の武器を見繕ってくる」
ハンナちゃんだけだとなんだか不安だし、エマさんだけっつーのも同じです。不安の質は違いますな。ハンナちゃんだけの場合は見た目子供だから悪い大人が寄ってきそうだし、エマさんだけの場合はぽやーんとしてるから生き馬の目を抜く商人ども、結局悪い大人が寄ってきそうだ。エマさんはハンナちゃんの用心棒、ハンナちゃんはエマさんのご意見番で二人一緒にいれば間違いは起こらないだろう。
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通りをぶらつきながら、我はボルちゃんに聞いてみる。つうか、ここにはボルちゃんしか我の言葉は通じないのだ。
”3人に何か装備したいものあるのかな? 剣は持ってるんだったっけ? 腕前はヴァッへ君やヴェヒター君と比べるとどう?”
「3人とも剣は支給品のショートソードを使っている。彼女らは入隊して……何年になるかな? 最近、剣の技量はあがっていないようだ……」
「剣はどうも性に合わなくってよー。どっちかというと格闘技の方が好きだな! 殴り合いとかなら隊長さんでも勝てるかもしれん!」
「ヒーディは全然隊長さんの速さに追いついてないでしょ? 一発も当てられないうちに鳩尾に一発で終わり、いつものパータン!」
「…・・・隊長の鍛え上げられた肉体の鎧をぶちのめすのは無理……」
「魔法抜きなら彼らより少し上程度かな?」
「彼らって誰ら?」
「道中、基本人族の若者を少しだけ鍛えてきた。最初は素人同然だったがその熱意で短期間のうちに見る間に上達していったよ。君らも彼らぐらい熱心だったらなぁ……」
そうか、ヴァッへ君・ヴェヒター君と同程度か…… なら魔法の特色とその性格を生かした武器を考えた方がいいな。
通りを歩いているが、ピンときたものはないなぁ。短剣や長剣、槍、槌のでかいの、バールのようなもの……バールってなんや? あ、青龍刀があった。でもなんだかドワーフおじさんの持ってたものより輝きが違うなぁ……
「バドエル殿が持っていたものはミスリル製だったからな。そこになるのは鉄製だろう。基本人族ならそれで充分。どうだ、フランメ? このアサヤを使ってタフティーブでもやってみるか?」
朝や? たふてーぶ?
「あー、棒術も剣術も訓練がいるじゃんか? 私はそういうの、苦手なんだよな」
「訓練をすればそれだけ強くなるのだが? ならなにか希望はあるか?」
「そうだなぁ、バウちゃんのもってたやつ? ああいうので火魔法使って熱くしてぶんなぐるというのはどうだろう?」
あれは石でできてるからなぁ。ヒーちゃんがどのくらいの温度の火魔法を使うかしらんが、溶けてしまうんではないかい?
「スネークが言うには、石だと火魔法で溶けてしまうのでは? 」
「あ~、そうかぁ…… 鉄の剣でも強度が落ちるくらいだしなぁ…… 石なら溶けるか……」
鉄だと柔らかくなるだけ? どろどろになったりはしない?
「スネークはフランメの火魔法のことを知りたがってるな。火魔法を纏った手で何かをつかむとそれも温度が上がる。間違いない?」
「間違いないさー! すぐ柔らかくなるからあんまり火魔法に魔力込められないんだよねー」
どこかでリミッターがあるのかもしらんね。これ以上魔力使って火魔法のレベルを上げると使えなくなるかも、そう思うと火纏いの魔法では石は溶け、鉄は柔らかくなる辺りが限界か。魔力を飛ばせるようになれば話は変わるのかもしれないが…… うーん、どうしよう?
「ミスリルで試したことはあるか?」
「あるわけないさー! 触らせてもくれないよ、あんなお高いもの」
ミスリルか…… ミスリルが素材で剣をつくるときは、どうやって成形するんかね?
「そうか、ミスリルか……」
試してみるか?
「え? でもよー、ミスリルさんなんてそこら辺にはいねーだろ」
ミスリルさん! ミスリルさんをめったにお目にかかれない貴婦人さんみたいにいうなや! 我、おえっと礫を一つ吐き出して、口に銜えると、真上に放り投げます。そして、目立たないように
”銀魔法Lv.3 銀メッキ”
ぷしゅ~~~。落下するまでに万遍なく礫にメッキをかけました。
「フランメよ、それを拾って、火魔法を使ってみてくれ」
「何やりたいのかわかんないけどさ、隊長さんが言うんならやってみるよ」
言ったのは我なんですけどね、残念!
本日はこれにて。
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