三人娘御紹介
メルちゃんに案内されて、ボルちゃん達の隣の部屋に入った三人娘。荷物を置いたらすぐに食堂の方に来た。喉が渇いてるかも知らんと思い、食堂で使われているエールドリンク用木樽に先ほど絞ったレモン果汁とハチミツ、若干の糖をくわえ、かき混ぜます……混ざったところで氷魔道具の中に入っている氷を加えてさらにかき混ぜます。我、マギハンドでもっていくから、先にハンナちゃん挨拶に行っといて。
「あー、皆さんお久しぶりです!」
「おー、ちっこいの! 久しぶりだな! 元気そうじゃねーか! 隊長にちゃんとしごかれていたか? 」
「ちゃんと名前で呼んであげなさいよ! えーと、ヴィンデルバンドちゃんでしたね。お見限り~!」
「フランメクライゼルさんもトレーネさんもボーデンさんもお久しぶりです!」
「……ん! 元気そうでよかった。それで……」
「あー、リーちゃん、新入りさんがいないのが気になってるのね! 隊長さん、あのこどうしたの? 」
「ああ、バウアーのことか。なんでも宿の主人と一緒に魚を獲りに行ったぞ。うまくいけばうまい魚料理が食えるな」
「あっはっは! なに言ってるんだい! うまくいけばうまい料理が食えるなんて当たり前だろ! 」
「漁はうまくいっても料理がダメな場合があるからな」
「え? リョーとリョーリをかけたのか? あはー、面白いことを言うようになったね! 堅物一辺倒だったのが成長したなぁ、隊長さんも! それで、ギルマスが言ってた助っ人ってのはどこにいるんだ? 」
「スネークちゃんなら台所にいますよ? そろそろ来る頃ですが……」
はいは~い。お待たせしました。飲み物とちょっとしたおやつですよ。食べすぎると夕食が食べられなくなるから気をつけなはれや!
「えっ! 魔力でモノを運んでるの? 」
「…… すごい…… あきれる…… 」
「木樽か? エールだな? そうだろ? って、どこにいるんだ? そのスネークというのは? 」
ここ、ここ、こっこだよーん。蛇だから、床を這って登場したのだ。我、飲み物を皆が集っているテーブルに置きます。メルちゃんの分もいれて6人分、ドリンクとデザートを作ってきた。
「わ、私もいいんですか? 」
メルちゃんはこの後調理で頑張ってもらわないといけないからな! 小腹を満たしとけや。それと飲み物はエールじゃないぞ。ハチミツレモンや! 我、テーブルの上にジャンプ!
「みんなに紹介する。これが今回の旅で協力してくれることになったスネークだ。スネークよ、こっちの三人が一応私の部下ということになっている。赤髪がヒーディ・フランメクライゼル、水色髪がカルラ・トレーネ、茶髪がリージー・ボーデン。スネークは人語を解するから君らの話は理解できているが、喋ることはできない。しかし、ギルマスから預かった額金通信機を使うことで意思疎通が図れるようになった。三人の分がないのは仕方ないが、何か話したいことがあったら私の額金を貸すぞ」
「隊長」
「ボーデンか、珍しく積極的だな。使いたいのか? 」
「このスネークとやら、本当に魔法が使えるのか? 」
「スネークちゃんの魔法はすごいのですよ! もうバンバン! バンバンなのです!」
「……バンバンなのか…… 」
「魔法の話はおいおいだな。君ら以外に近衛小隊はメンバーが集まると思うか? 」
「無理だなー! 野郎どもがあんたの言うこと聞くはずもないって! あっさり任務放棄して王里に帰ったのがいい証拠さ! 」
「上司に女性が成るのがそんなに嫌だったんですかねぇー? 私ならこんな美人な隊長さんが上司になってハッスルすると思うんだけど? 」
なんやハッスルって?
「皆もそう思うか…… それならもうここに集まった6人で再びグラニーラムゼースミスに向かうとする。予定は明日必要物資を調達し、準備でき次第冒険者ギルドに向かいギルドマスターに挨拶をしてから出発だ。今日は英気を養ってくれ。ヒーディ、酒も準備している。夕食のときにな」
そう言ってボルちゃんは木樽のハチミツレモンを飲んだ。
「これはスネークが作ったやつか? 相変わらずいろいろなものを作る奴だ。こっちのデザートはメルゼブルグで作ったやつか」
「なんだかおいしそうなプフィルズィヒですね。それではさっそく…… あむ」
桃をぱくりと食らう水色髪のねーさん。軍にいるというより飲み屋にいる方が似合っているねーさんだ。髪の赤いねぇちゃんは、こっちは軍人らしい感じがします。そして、茶髪の女の子、他の二人に比べてやたらと子供っぽい…… ハンナちゃんがいなかったら子供兵と言われても、ああなるほど、と思ってしまう感じだ。見たところメルちゃんぐらいの背格好ですな。メルちゃんは昨日桃食ったっけ? 食ってなかった?
「こんなに甘いプフィルズィヒは初めてです……しかも冷たい…… なんですかこれ!」
これはコンポートというデザートなのだ。メルちゃんもミスペルで作ってみるとよい。保存もできるし人気商品になると思うよ。
「…… とスネークちゃんが言ってます。スネークちゃんの商品開発はいつも冴えてるのです! 」
「すげーな! これ、お前が作ったのか? もっとないか? うますぎて味わう暇もなかったぜ! 」
「私も私も! こんなおいしいデザートなら大歓迎よ! 」
「…… 同じく…… 」
「追加で食べるのはいいが、食べすぎると夕食が入らなくなるぞ? 何せ今日のメニューはスネークが作るのだからな…… たぶん」
「たぶんて、どーゆーことー? 」
「宿のご主人が作るかもしれないということだ。今日の昼間、スネークが新しい料理を宿のご主人に教えてテスト販売したところ、あっという間に売り切れたからな」
「料理もそうだけど、この飲み物もおいしいわね! ツィトローネとホーニッヒだけでこんなに甘くなるの? 」
「これには糖、それと塩を少し入れてあるそうですよ? 汗かいて暑い中来られたので塩分をちょっとだけ入れたそうです」
「…… 興味深い…… 」
どうやら喜んでいただけたようです。




