エルフ娘三戦士、登場!
我とハンナちゃん、メルちゃんで晩飯を何にするか考える。ボルちゃんはリュックづくり、婆ズはポーション作りで飯作りにはノータッチです。ナーギー獲りに行った二人がちゃんと獲って帰ってくるとは限らない。宿に泊まる人数も不定だ。そうなるとやはりニクにした方が無難だ。せっかく山椒が手に入ったのでスクローファの角煮でも作ってみるか? そういやメルゼブルグで八角も手に入ったことだし。
「ムム! ”カクニ”というものは初めて聞きます! どのようなものでしょうか? 」
角煮は、簡単に言うとブタニク……スクローファニクを酒・ゾヤゾーゼ・糖で煮たものだ。カタマリニクで大きくカットした立方体にするから角煮というのだ。
「スクローファでやらないとだめなんですか? タウルスではいけないのですか? 」
よくわかりません…… タウルスはお値段が高いからじゃないですかね?
「でも、スネークちゃんは、タウルスニクをワインで煮たとき、ものすごく大きくカットしてましたよね? 」
そうですね…… そんじゃ、大きな肉の塊を酒・ゾヤゾーゼ・糖で煮たものを角煮と呼ぶか! スパイスでの味付けは山椒と八角な! これは譲らない!
「譲らなくても大丈夫です。みんな{角煮}なる料理を知りませんから!」
それじゃ、メインはそれな! ナーギーが獲れたらそれは別売りということで。あとはポテサラでも作るか?
「{ポテサラ}ですね。正式名称は{ポテトサラダ}で間違いない? 」
間違いない! 今日何人泊まるか知らんが20人分ぐらい作っておけばいいか。作り置きができるからな。そう言えば、ここはブロートはどうしてるんだ? 自分たちで焼いているのか?
「いやいや、ブロートは街のブロート屋さんで配達してもらってます」
なにブロート? ヴァイツェン? ローゲン?
「長持ちするローゲンブロートです」
黒パンな! 安くて長持ちする黒パン。チーズと一緒に食べるとこれまたおいしそうな黒パン! アルプスの少女の常食、黒パン。あれって、婆が食べても大丈夫なん? やたらと堅そうだが?
「スネークちゃんはなんだかんだ言うて、ポーション屋のおばあちゃんが心配なんですね? このツンデレさん!」
べ、別に婆の心配したわけじゃないんだからね! 硬くて食べられなかったら食事を楽しめないんじゃないかと思っただけなんだからね! しかし、やはりツンデレというのは勇者文献から来た用語なのだろうか……
我とハンナちゃん、メルちゃんで夕食つくりをする。と言っても作業をするのはマギハンドを出している我で、ハンナちゃんは何やら必死にメモをしている。メルちゃんは勝手を知らない我のため、調理場の助手をしている。
からららん♪
ん? お客さんが来たのか? メルちゃん、対応して。
「おーい! 隊長さんはいるかーーーー? 」
能天気な声が響く。隊長ってボルちゃんのことか? 台所で調理しながら、我聞き耳を立てる……立てる耳たぶ、ないんですけど! 声がでかいから丸聞こえです!
「いらっしゃいませ。何か御用でしょうか? 」
「ちょっと、ヒーディさん、声大きすぎ! 他にお客さんいたら迷惑でしょう? ごめんなさいね、オホホホ。私たち、ここにエルフの人が泊まってるって聞いてやってきたのです。まだお泊りになられてますか? 」
でかい声を聴いてボルちゃんは作業をやめて玄関に向かったようだ。
「宿側からすれば客のことを話すのは信義上よくないな。メルジーナ殿はしゃべらなくて正解だ」
「いや、勢いに押されて何も話せなかっただけです…… ボルドウィン様のお知り合いでしょうか? 」
「ああ、立場上、私の部下ということになるかな? フランメ、トレーネ…… 後ろにいたな、ボーデン。 よく来てくれた。中に入ってくれ。メルジーナ殿。彼女らも今日1泊するから、料金を払うよ。銅貨18枚だ」
「お客様ということでよろしいのですね。それではボルドウィン様のお隣の部屋に案内させていただきます」
「いや~助かったー。手持ちもすくなくなってきたことだしよー。冒険者ギルドの依頼書には碌なのがないし、隊長さんが戻ってきてくれて助かったぜ! 」
「そりゃヒーディさんが考えなしにお金使ってたからでしょう? リーちゃんがいなかったら薬草採取だってままならなかったんだから」
「…… リーちゃんって呼ぶな。私はあんた達より先輩」
「だってー、リーちゃんって隊の中じゃ2番目に小さいじゃんか! あの子供衛生兵が入ってこなかったら間違いなく子供兵だぜ? 」
「…… お前も私をリーちゃんと呼ぶな。私は人生の先輩」
なんか面倒くさい人たちがやってきましたな。




