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我はツチノコ  作者: あいうわをん
第4章 ドラゴンへの道
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ハンナちゃんの口上



 大将の焼くナーギーのかば焼き、焼いているうちにナーギーの脂がじわじわと身から出てきて、ポタリ、と汗をかいたように落ちていく…… じわっ! そのたびに炭火から煙が立ち込めのぼっていく。風は吹いていないので、上へ上へと煙は登るのだが…… 我が風魔法で煙を道の方に誘導しているのだ! ちょうど昼時、昼飯時だ! 匂いにつられて人が集まってきましたな。さてさてここは、ハンナちゃんに客寄せをやってもらいましょうかな。口上はこんな感じで……


「さぁさぁ、御用とお急ぎでない方は、そうでない方も寄ってらっしゃい見てらっしゃい! よらずに済ますと大損こくよ! 」


いい感じの声の張りですな!さすがに歌舞伎好き? なハンナちゃん! いつもやってるあれが歌舞伎かどうかは知らんけど! 声につられて二人ほど足を止めてくれた。


「これから始まる口上こうじょうを、遠からんものは音に聞け! 近くば寄って目にも見よ! 」


ここでハンナちゃんが、柏手を打つ! ぱーーーん!


「先ほどから舞い立つ煙、鼻腔をくすぐる香ばしさ! この煙、なめてもらっちゃ困ります! 匂いを嗅いだらそれだけで、ブロート半斤食べられる、そんな魔法の煙です! 」


ざわ…… 。あたりが騒然とする。そこへ空気を読まない人、エマ・バウアー参上!


「ふわぁあああ。よく寝たーーーーー! なんだかいい匂いがしてますねぇ! スネークさーん、お水頂戴ーーーー!」


我、観客に気づかれないように、エマさんのお口に水魔法ぴゃーーーーーー!


【WARNING!WARNING!WARNING!】

【水魔法消滅まであと67!】

【WARNING!WARNING!WARNING!】

【水魔法消滅まであと67!】

【WARNING!WARNING!WARNING!】

【水魔法消滅まであと67!】


”スネークちゃん、この後なんて言えばいいですか?”


”エマさん、シエスタ後直後で悪いんだが、ブロート1斤食べられる?”


”よゆーですよー! あ、でもブロートだけだとちょっと…… あーー、でもいい匂いがしますねぇー ”


「さぁ、そこの大きな荷物を抱えたお客さん! いま、私の口上嘘だろうと思ったね! 論より証拠! 今からこのエルフのお姉さんが、煙の匂いを嗅いで、ブロード食べまくりますよ!」


ハンナちゃん、ポーチからヴァイツェンブロート取り出して、エマさんにお渡しします。エマさん、焼き場から出る煙をすんすん嗅いで、ブロートを食べますね。


「あぁー、ブロートだけじゃ物足りないーーー!」


「どうです皆さん、この煙を嗅ぐと食えば食うほど食欲が出る! 暑くて蒸したこの時期に、食欲の落ちた人もたくさんいるんじゃありませんか? そこで! 」


ハンナちゃん、また柏手を打つ! まあ指示しているのは我なんですけども!


「その昔、伝説の勇者達が、暑い今時期に食べるとよいとこの世界にもたらした、ナーギーの{かば焼き}! 食えば食うほど元気になる! ナーギーの{かば焼き}をここの宿のご主人が、本日復活させて見せましたー! 」


煙に巻かれた客の一人が反応する。


「けどよー、エルフのお嬢ちゃん。その食い物がどうして{かば焼き}ってわかるんだ? うまそうなのは認めるが? 」


「エルフ族に伝わる勇者文献というのがありますが、ご存じ? 」


「いや、知らない」


「それによりますと、ナーギーを裂いて炭火で加熱したものに黒い調味料を塗って焼いたものが{かば焼き}と書いてあります。特に、ナーギーの{かば焼き}を今時期に食べると食欲増進健康優良精力増大家庭円満子孫繁栄すると言われているのです! 」


「もふぁもふぁぁあ、へぇ、これってそんな効果があるんですねー! 単にひたすらおいしいだけかと思ってましたーーーーー! ものすんごくおふぃふぃーーー、んまーああああーーーい! 」


何をしゃべっているかと思えばエマさんが串焼きを一つもらって食べてました。なんだか見学している皆さん、じゅるりとよだれを垂らしていますな。


「さてお立ち合い。このナーギーの{かば焼き}、実はまだ完成品じゃありません! これに秘伝のスパイスをかけると完成なのですが…… 本日はまだ入手されておりません。それが完成した暁には、このナーギーの{かば焼き}、銅貨5枚でも足らないくらい! 」


「そりゃ高すぎるだろ! ぼったくりだ!!」


「いえいえ、お客さん。これには秘伝のタレが使われております。その原料の一部は東方よりもたらされたスプーン1杯銅貨1枚もするゾヤゾーゼだ! それ焼くときにおしげもなく刷毛で塗りたくっているのだ! 本来ならそれくらいするのだが、今日のところは1串銅貨3枚で販売だ! 」


「おじさーん、もう1本くださいなー!」


エマさんが、今度はポーチから銅貨3枚払って1串もらった。


「はふっふぁふっ、焼き立てのナーギーにしては、ふぉわふぉわっ…… うまうま…… どうしてこんなにふっくらしてるんですかねぇ! めちゃくちゃおいしい! おじさんもう一つ! 」


「さあさあ、速くしないとこのお姉さんが全部食べてしまいますよ? 味は御覧の通りの保証付き! さぁ、無くなる前に買った方がいいよ! 」


「お嬢ちゃん、俺に1本!」


「あ、俺にも2本くれ!ゾヤゾーゼってどんなもんだ?」


「あーーー、儂も1本もらうぞ。食べるとホントに元気になるのかの」


「私たちにも3本お願いします!」


「はい毎度! 毎度! はい、お釣りは銅貨7枚ですね! 」


ハンナちゃんが売り子をしてます。人だかりが増えていき、焼いてた分がなくなってきた……


「メル! すまんがナーギーを生け簀から取ってきてくれ!」


メルちゃんが生け簀に行って戻ってきた。最初に5匹持ってきた分はすべて売り切れたので、次の10匹を捌いたら本日は終わりです。ハンナちゃんが並んでいる人に買いたい本数を聞いていきまして今日作れる{かば焼き}の本数を調節します。最終的に155本のかば焼きが売れ、銅貨465枚の売り上げになった。


「こ、こんなにも売れるものとは思わなかったぜ……」


ま、食ってるやつには我が光魔法で疲れを取ってやってたからね。これで元気になってくれたらよい評判が広がるでしょう。


本日は1話のみにて。

お読みいただきありがとうございます。

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