表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界平和に不都合なぼくたち  作者: さんかく
第三話 独裁者さん、お断り
75/153

第74回 世界平和と世界を引っ張っていってくれるひと

 けっきょく、ぼくらは引っ張っていってくれるひとがほしいんだ。ぼくでいえば、かえでかもしれない。あの子は引っ張るっていうか突き上げに近いけれど。


 過去に2回起こった人類による世界大戦の後もそうだけど、国を立て直せるほどのリーダーシップを持っているひととなると、そんなにいない。

 政治家も戦争でずいぶんいなくなった。

 アイノースも、あんなことが起きてからは表に立つことがだいぶと減った。

 でも、世の中にはそういう役割を担うためにいるようなひともいる。終末戦争を止めるためにぼく、かえで、エリカ、リンカがいたように、ぼろぼろになった国を建て直す役割を持ったひとがいる。平和な世の中だったらもしかしたら過激すぎて政治家にもなれなかったかもしれない。でも、過激でクレイジーな終末戦争のあとだからこそ、表す頭角もあるんじゃないかな?


 でもだいたい後世に名前を残すのは、表さなくても良かった頭角のことだ。


 そんなひとを歴史の教科書はこう表現をする。


 独裁者。


 さて。魔王とどっちがいいのだろう?


※ ※ ※


 ぼくは郵便受けに入っていた4通の手紙をナナミさんに渡した。

 大中小、それぞれ形が違うけれど、いちばん違うのは書かれている言葉だ。英語と中国語が書かれているのが2通あり、残り2通にはイタリア語とドイツ語だということが、ナナミさんの視認で確認できた。


 復興対策本部の若きエリートさんは、深いため息をついた。


「まさか、短期間に4通もくるなんてね」


「ぼくもびっくりです。それも郵便受け投函されるとか、身元ばれすぎですね?」


 ナナミさんはドイツ語で書かれたという手紙を、時折辞書を引きながら読み始めた。書いてある内容はだいたいおんなじだ。意訳すると、こうだ。うちの国に来てよ、いい扱いするからさ。


 どうやら最近は英雄のリクルーティング市場が活況らしい。


 ちなみ報酬はどんな感じなんですか? と聞いたら、ぎろりと睨まれた。

 上司に転職活動を見つかったサラリーマンはこんな気分なのかな。しないけどさ。


 前にも書いたかもしれないけれど、ぼくとかえではいろいろな国から誘われている。

 目的は保身だ。

 自国以外の国に肩入れされるのは怖いし、対策とかぶっちゃけてめんどくさい。だったら、めちゃくちゃ高いお金を出してもいいから、囲っておいたほうが楽、という極めて合理的な話だ。


 それは日本も同じ。政府はぼくらと海外のひとの接触が、ほんとうに不安らしい。


 ナナミさんは、ぼくらと復興対策本部、ひいては政府との窓口さんである。

 国としては専任をつけたいと思っていたかもだけど、どこもか人手不足だという。そういう事情と、すばぬけた能力とすばぬけた美貌という才能に恵まれてしまったがために、ナナミさんは復興対策本部のすこぶるつきの激務と、ぼくらのお守りという仕事を振られることになった。


 ナナミさんの美貌に、最近くまが絶えないのは、ぼくのせいじゃない、と思いたい。


「少なくとも、彼らが直接的に君に危害を与えることはあんまり考えられないし、間接的に脅迫をすることも、結構リスキーだから、近々で迂闊な行動には出ないと思う。でも、まあ、せめて監視カメラくらいはちゃんと動かしておかないといけないわね。あと、付近の警戒強化も」


 せっかく警護という名義の監視が緩んできたのに、今度はほんとうに警護目的の監視がつくのかと、ちょっと憂うつだ。それは、まあ、ナナミさんもそうなんだろう。少ない人材を警護に回さないといけないのだから。


「それと、溜まってから持ってくるのはやめて。ポイントカードじゃないんだから、都度報告。君の身を守るためよ」


「ほんとうは?」


「あたしがサボっていると思われるからよ。勘弁して頂戴」


 目の下のクマの原因はやっぱりぼくらしい。ごめんなさい。


「それと、エリカちゃんのこともちゃんとフォローしておいてね。あの子が強力な魔法を使えると知られたら、世界は黙っていないわ」


 うん、わかっているよ。ぼくはそういってうなずいた。

 エリカの存在はちゃんと隠し通さなければいけない。

 少しずつあの子は自分の世界を広げていっているけれど、その分、リスクだって高くなっているんだから。


 まあ、あの子がふつうのひとに倒されちゃうことなんて、ほとんどないけれどね。


 そんな油断が、今回のどたばたを引き起こしてしまったといってもいいかもしれない。


 油断大敵。


 まさにね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ