epesode 2
「起きたかね?」
綺麗な澄んだ声が聞こえる。
シェーラは体を起こして声の主を探す。そこには黒髪緑眼の変わった格好をしたあの女性がいた。
女性は座っていた椅子から立ち上がり、壁に立て掛けていた大剣と上着を持ってドアに手をかける。
「…何処にいくんだよ」
シェーラが尋ねると女性は短く
「…ノイシュタット」
そう言って外へと出た。
女性が出て行ってしまった後、シェーラはベットから飛び降り、すぐ後を追った。
出た部屋は森の中の小屋だったようで、周りを見渡すとシェーラの姿に怯える他のプレイヤーの姿があった。
ある者は彼女を恐れ、避け続ける。
またある者は、彼女に戦いを挑み、己が勝利したと雄叫びを上げようとする。
シェーラはそんなプレイヤー達を噛み殺すかのように一人、また一人と戦いを挑むのである。
走り続けて数分後…。
女性を追って見つけた場所は魔物…NPC【ノンプレイヤーキャラクター】が集まる群生地。
魔物の中でも一際大きい狼型のNPCが、女性に向かって吼える。
そのまま地を蹴り勢いをつけ、NPCは女性の肩に噛み付いた。
血が肩から滴り落ちる。女性は背中の鞘から抜き払った身の丈以上ある大剣を片手で持ち、一言。
「炎に飲まれろ」
灼熱の炎を身に纏った大剣がNPCの体を真っ二つに裂く。
NPCは叫び声かj悲鳴か分からない声を上げ、地面に崩れ落ちて死んだ。
魔物の群れは恐怖を知らず、ただ一人の女性相手に攻撃を仕掛ける。
ある者は強者を倒す為、集団をつくる。
それが強者に倒されない為の弱者の手段でもあり、逃げでもあるのだ。
シェーラはそれが気に入らなかった。
集団などというグループをつくることで、同じレベルで一緒に楽しく、といった
お仲間ごっこをいつまでも続けなければならない。
それは、レベルの停滞を意味する。
だからシェーラはギルドや仲間といった集団に入らない。
シェーラはレベルを上げて、上げて、上げ続けて。
気づいた頃には彼女は一人になっていた。
「…おい、そこの雌牛。面白ぇから加勢させろ」
シェーラはにまにまと笑いながら、魔物の群れの中心へと入っていく。
手を前へ出し、それを横に払って詠唱を唱える。
「神の繰り出す正義の鉄拳、牙をむけ!アリーデヴェルチ!」
地面から棘のような形をした岩が勢い良く飛び出て、魔物たちをなぎ払う。
女性はいきなりの出来事に少しの間呆然としていたが、直ぐに剣を構え魔物に
向かって走り出していった。
「おっ立て!火車!!エンシェント・ドライヴ!」
「双覇!」
シェーラが放った火の玉が、女性が振るった衝撃波が魔物を蹴散らしていく。
最期の一匹を倒し終えた頃には、シェーラは無邪気に笑っていた。
「あはは!何だよお前やるじゃん!」
女性は剣を鞘に戻し、少女の前に立って
「君のような強者にほめられるなんて光栄だよ」
といって笑った。




