1st Season - 3
リナは他のサンタクロース達が待つ世界に近付いていた。本来ならここに来ることなく、カイトがなくしたバッジを探したかったが、長に話を聞きたいということもあり、リナは大急ぎでここまでやってきた。
その時、リナは遠くにレイアの姿を見つけた。
「何で、先輩がいるんだろ?」
何も知らないリナは、そのままの速度でレイアに近付いていった。
「リナ、ストップ!」
「え!?」
レイアに突然そう言われ、リナは慌ててしまったが、何とか止まることができた。
「どうしたんですか?」
リナは一瞬、わけがわからなかったが、すぐにガラスのようなものが道を塞いでいて通れなくなっていることに気付いた。
「何で塞がってるんですか?」
「リナ、すぐにカイトがなくしたバッジを探して」
「え?」
「多分、ここが塞がってるのはバッジのせいだと思うの。誰かがバッジを拾って、そのせいじゃないかって」
レイアの言ったことが理解できず、リナは固まってしまった。
「ほら、しっかりしなって! 今、人間界にいるサンタクロースはリナとカイトだけなんだから、2人でこれを何とかしないといけないんだよ?」
「え、でも誰が持ってるのか、見当も付かないんですけど……」
「それは、このガラスみたいのが結界になってるみたいで私達にもわからないの。でも、とにかくバッジを探さなきゃいけないの」
「それに、出発の時間はもうすぐだし……」
「だからこそ、すぐに見つけないといけないの。私達はここが開いたら、すぐにでも出発できるように準備しておくから」
「そんなこと……」
「いちおう、長の水晶でリナ達の様子はわかるの。だけど、こっちから直接話をしたりはできないし、バッジがどこにあるかもわからない」
リナはレイアの話を真剣に聞き、今の状況を少しでも理解することに努めた。
「時間がギリギリでも、2人がバッジを見つけてここが開いた瞬間に私達は出発するから、何とかバッジを見つけて」
レイアの言葉にリナは少しだけ考えた後、頷いた。
「今、カイトは……さっきいた場所から、近くの商店街の方へ向かってるみたい」
「わかりました。すぐにカイトを見つけて、一緒にバッジを探します」
「リナとカイトなら大丈夫だよ。私の後輩なんだから」
レイアの言葉にリナは少しだけ笑った後、すぐにバッジを探しに向かった。
奈々が姿を消したという、行き止まりになった場所まで由香里に案内され、圭介は固まってしまった。
「本当に奈々はここに行ったのかよ?」
「本当だよ」
「ここに行ったなら、いるはずだろ?」
「それがいなかったんだって」
圭介は相変わらず由香里の言っていることに納得がいかなかった。
「多分、見間違えたんだろ」
「違うよ。本当に消えちゃったんだから。それこそ、突然姿を消したみたいだったの」
「ああ、もうわかったよ。とにかく別の場所を捜そう」
圭介はここにいてもしょうがないと思い、別の場所を捜すことにした。
「圭介! 奈々ちゃんいた!?」
その時、明の声が聞こえ、圭介と由香里はそちらに目をやった。
「明、どうしたの?」
「おばさんから事情を聞いたんだよ」
「それで捜してくれてるのか?」
「そうだよ。結局見つかってないけど……」
「いや、ありがとう」
圭介は心から礼を言った。
「それじゃあ、分かれて捜そうか」
「良いけど、由香里は奈々を見つけても逃げられるから1人にしない方が良いよ」
「もう、うるさいなー!」
由香里は怒った顔で、そんな風に言った。
「明、由香里と一緒にもう1度この辺を捜してくれないかな? 俺は商店街の方に行ってくるから」
「うん、わかった」
「それじゃあ、後で」
圭介はそう言うと、さっき歩いた道を逆方向に走った。
「どこにいるんだよ?」
どこに奈々がいるかわからないため、圭介は辺りを確認しながら進んだ。
「あ……」
その時、圭介はカイトを見つけた。相変わらず、バッジを探しているのか、カイトは下を見ながらうろうろしている。圭介は話しかけないまま通り過ぎようとしたが、少しだけ考えた後、足を止めた。
「えっと、カイトだっけ?」
圭介が呼ぶと、カイトは顔を上げた。
「ああ、圭介だっけ?」
「ちょっと頼みがあるんだ」
「……何かあったの?」
カイトは圭介の様子から、ただごとではないと感じてくれたようだ。それは、圭介にとって助かることだった。
「奈々が……俺の妹がいなくなっちゃったんだ。1人でいる小学1年生の……わからないか。小さな女の子を見かけたら、家に帰るよう言ってくれないかな?」
「でも……」
「俺も奈々を捜すのと一緒にバッジも探す。だから、頼むよ」
「……わかった」
「ありがとう。それじゃあ、俺は行くよ」
その場をすぐに離れようとしたところで、圭介はあることを思い出した。
「なあ、聞いても良いかな?」
「ん?」
「カイトがなくしたっていうバッジ、具体的にどんなことができるんだ?」
「ああ……圭介なら良いかな。普段、俺達はトナカイとソリを出したりしてるけど、他にも色々できるよ」
カイトは少しだけ考えた様子を見せた後、話してくれた。それを聞いて、圭介の中に1つの疑問が生まれた。
「姿を消すことって、できるのか?」
「え? できるけど、何でわかったんだ?」
「いや、あと……」
そこで、圭介はある推測を立てた。それは、カイトの言っていることが事実だという前提から生まれたものだ。
「ケーキを消したり、クリスマスツリーを……」
そこまで話したところで、圭介は確認する必要があることを思い出した。
「カイト、ちょっと一緒に来てくれないか?」
「さっきから何なんだよ?」
「良いから来てくれよ」
「……わかったよ」
そのまま、圭介とカイトは商店街の中心までやってきた。先ほどに比べれば人は減っていたが、それでも十数人の人が不思議そうに倒れたクリスマスツリーを見ていた。
「何だ、これ?」
カイトは倒れたクリスマスツリーをじっと見た。
「カイト、ちょっと確かめたいことがあるから、ここで待っててくれ」
「ああ、わかった」
圭介はそんなカイトの様子を少しだけ気にしつつ、ケーキ屋に向かった。その理由は、ケーキが突然消えたことが気になったからだ。
そして、圭介がケーキ屋の前まで来た時、店の中は大騒ぎになっていた。
「だから、ケーキが入ってなかったのよ!」
「いえ、でも……」
「一体、どういうことなんですか?」
入った瞬間、そんな声が聞こえ、圭介は固まってしまった。
「すいません、何があったんですか?」
「それが、買ったケーキが突然消えちゃってここに来たんだけど、みんなも同じことが起こってるみたいで……」
圭介は近くにいた人からそれだけ聞くと、すぐに店を出て行った。
カイトは倒れたクリスマスツリーの周りを歩きながら、じっくりと観察するように見た。
「これって……」
その時、嫌な考えが頭に浮かび、カイトは首を振った。
「そんなことあるわけないし」
そう言いつつも、カイトの頭から、嫌な考えが消えることはなかった。
「カイト!」
その時、圭介が走って戻ってきた。
「圭介、このクリスマスツリー……」
「ごめん、ちょっと来てくれないかな?」
「おい、さっきから何なんだよ?」
「ここで話すとまずいことを話したいんだよ」
圭介に手を引かれ、カイトは人通りの少ない道に移動した。
「……さっきのクリスマスツリー、どう思った?」
圭介の質問に対して、カイトは真剣に考えてみた。
「……おかしな倒れ方だと思ったよ」
「バッジを使ってやったことかな?」
「え?」
サンタクロースをまったく信じていない圭介の質問とは思えなかったため、カイトは驚いてしまった。
「あと……」
「カイト!」
その時、リナが来たため、圭介の言葉は中途半端なところで遮られた。
「もう、何をしてるの?」
「圭介の妹で、奈々って子を捜す代わりに、圭介もバッジ探してくれるって言うから……」
「勝手なことしないでよ」
「それより、バッジの場所わかった?」
「あ、それは……」
リナは圭介がすぐそばにいたため、話をしても良いか少しだけ迷っている様子を見せた。しかし、相当切羽詰まった状況なのか、結局リナは話を始めた。
「バッジ、誰かが拾ったみたいなの」
「え!?」
「あと、私達の世界と人間界を繋いでいる道が結界みたいなもので塞がってて、通れなくなってるの」
「何で、そんなことに……?」
「カイトがバッジを落としたせいでしょ。でも、何で通れないようにしたんだろう?」
「それより、間に合うのかよ?」
「私達がバッジを見つけて、結界みたいなものを解けば、すぐにでもみんな出発してくれるから」
カイトは自分が大変なことをしてしまったと自覚し、どうにかして解決する方法を模索した。
「とにかく、誰がバッジを拾ったかわからないけど、探すよ」
「ああ、わかった。圭介、そういうことだから……」
「ちょっと待って、少しだけ考えさせて」
すぐに出発しようとしたが、圭介に呼び止められ、カイトとリナは少しだけ待つことにした。
「倒れたクリスマスツリー、消えたケーキ、来れなくなったサンタ、そして突然姿を消した……奈々」
そこで、圭介は確信を持ったような目を見せた。
「そのバッジで死んだ人に会うことはできるの?」
「え?」
「良いから、答えて」
圭介が何を考えているのかわからなかったが、カイトはその質問に答えることにした。
「多分、無理だと思うよ。あのバッジは人が持つと、俺達サンタクロースが持つよりも強い力を発揮するらしいけど、そこまで強い力は持ってないし」
そこで、圭介は険しい表情になった。
「……もしも2人の言ってることが本当だとしたら、奈々がバッジを持ってると思う」
「え?」
「サンタがいるとか、不思議な力だとか、そんなのはまだ半信半疑なんだけど、百歩譲って本当だとしたら、奈々が持ってるとしか考えられない」
圭介の話に根拠はないが、カイトは何故か信じたいと思えた。その気持ちは、リナも同じだったようだ。
「奈々ちゃんはどこにいるの?」
「それがわかってたら、とっくのとうに見つけてるよ」
「行きそうな場所とかわからないの? 何か思い出の場所とかでもいいの」
「そんなの……ある」
圭介は何かを思い出したような様子を見せた。
1年以上も前のことになるが、奈々がどこかへ行ってしまって、帰ってこない時があった。
圭介は父と一緒に捜しに出掛けたが、奈々はなかなか見つからなかった。
「奈々、どこに行ったんだろう?」
「圭介、奈々がよく行くところはどこか、知らないか?」
「思い当たるところは全部捜したよ」
既に随分遠くまで来ていたが、奈々はどこにもいなかった。それでも、圭介と父は息を切らせながら奈々を捜し続けた。
そして、圭介達はある公園で奈々を見つけた。
「奈々!」
「ここにいたのか……」
奈々を見つけて、父は安心したように、大きく息をはいた。
しかし、奈々は圭介達に気付いても、ただ下を向いているだけだった。
「奈々、どうしたんだ?」
そんな奈々に父は優しく声をかけた。
「……ごめんなさい」
「ん?」
「お母さんが大切にしてたネックレス、なくしちゃったの」
奈々は小さな声で言った。
「遊んでたら、どこかに行っちゃって……」
「大丈夫だよ。お父さんも一緒に探してあげるから」
「でも、見つからなかったら……」
「その時はお父さんと一緒にお母さんに謝れば良いんだよ」
父の言葉に、奈々は少しだけ迷っているような様子を見せた後、頷いた。
「だから、一緒に帰ろう」
「……うん」
奈々は泣きながら返事をした。
「それにしても随分遠くまで来たんだな」
父が感心したようにそう言っても、奈々は特に何も言わなかった。
「奈々、辛いことがあった時、家に帰りたくない時、そんな時に奈々が家に帰ってこなかったとしても……」
父は奈々の頭をなでながら言った。
「こうやってお父さんが迎えに来るからな」
「……うん、わかった」
奈々は涙を拭きながら頷いた。




