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1st Season - 2

 午後の4時を過ぎ、由香里と圭介は家に帰ることにした。

「それじゃあ、またな。……いや、もう少しだけ帰るのやめようかな」

 外に出た途端、圭介が弱気な発言をして、由香里は笑った。

「もう、奈々ちゃんにケーキ買って帰るんでしょ?」

「わかったよ。それじゃあ、俺はこっちから帰るから」

「うん、じゃあ先に帰ってるね」

「圭介、呼び止めなくて良いのか? 由香里、本当は圭介のそばにいたいって思ってんだから誘ってやれよ」

 由香里が振り向いた瞬間、明は隠れるように家のドアを閉めた。

「もう……圭介、私はそんなこと、全然思ってないからね」

「わかってるよ。とにかく、俺は早く帰りたいからもう行くね」

「あ、私も一緒に……」

 すぐにでも家に帰りたい寒がりの圭介にとって、由香里のことはどうでも良いんだろう。そんなことを感じつつ、由香里は言葉を止めると、笑顔を作った。

「うん、早く帰らないと奈々ちゃんも待ちくたびれちゃうもんね! あ、後で遊びに行って良いかな?」

「良いよ。奈々も喜ぶだろうし」

「それじゃあ、後でね!」

 そうして、由香里は手を振った後、圭介と別の方向に歩き出した。

「私の意気地なし……」

 そんなことを呟きつつ、由香里は何度も通っている道を歩いていた。そこは、街灯や近所の家の明かりで夜でも明るく、安心できる道だ。

 ただ、公園の横を通り過ぎようとしたところで、由香里は足を止めた。

「奈々ちゃん?」

 寂しそうな様子でベンチに座る奈々を見つけて、由香里はゆっくりと近付いた。

「奈々ちゃん、どうしたの? そろそろ家に帰らないと、みんな心配するよ?」

 圭介から事情を聞いているため、奈々がここにいる理由はある程度わかっている。そんな理由から、由香里は自然と優しい声で話しかけた。

「ほら、一緒に帰ろうよ。もうすぐ圭介がケーキ買ってきてくれるよ」

「ケーキなんていらない」

 奈々は顔を下に向けて、由香里を見ることなく、そんなことを言った。

「……奈々ちゃん?」

「サンタさんも来なくて良い! お父さんに会いたい!」

 奈々の言葉を聞き、自然と由香里の目に涙が浮かんだ。

「……奈々ちゃんの気持ち、痛いほどわかるよ。だけど、今は家に帰ろう?」

「やだ! 帰りたくない!」

「何で?」

「帰っても……お父さん、いないもん!」

「だけど、今日はせっかくのクリスマスイブなんだし……」

「クリスマスなんて嫌い!」

 その時、奈々は突然立ち上がり、走り去ってしまった。

「あ、待って!」

 まだ言いたいことがあるため、由香里はすぐに奈々を追いかけた。しかし、どういうわけか由香里は奈々に追いつけないどころか、どんどん引き離されてしまった。

 そして、息が上がると、由香里は走ることをやめ、歩き始めた。

「……何で、あんなに速いの?」

 その時、奈々が道を曲がったため、由香里はチャンスとばかりに再び走り出した。由香里は奈々が曲がった先の道が行き止まりであることを知っている。だから、何とかそこで追いつこうと考えていた。

 しかし、由香里が行き止まりになった場所に着いた時、そこに奈々の姿はなかった。

「何で……?」

 脇道もないため、なぜ奈々がいなくなったのかわからず、由香里はわけがわからなくなってしまった。それでも由香里は呼吸を整えると、また奈々を捜そうと、走り出した。


 ケーキ屋まで数十メートル付近のところまで来た時、圭介はここまで来たことを少しだけ後悔していた。

 もしも今、ケーキ屋まで数百メートルあるとしたら、圭介はケーキを買わずに家を目指すつもりだった。しかし、ここまで来て引き返すわけにもいかず、圭介は早足でケーキ屋の中に入った。

 クリスマスということもあって、周りにある商店街と同様に店の中も混んでいるが、暖房が効いている分、圭介にとっては天国のような場所に感じられた。そのまま、店の中に長時間待機することも考えたが、圭介は予約していた奈々の好きなケーキを買うと、すぐに店を出た。

「寒い……」

 圭介はあまりの寒さに鼻をすすりながらそんなことを呟いた。しかし、呟いたところで寒いことに変わりはないため、圭介は早足で家を目指した。

 その途中――商店街の中心付近で、人だかりがあった。

「クリスマスツリーが倒れたんだってさ」

「マジで? 危ねえな」

「でも、クリスマスツリーが倒れるなんて、おかしくない?」

 人だかりの横を通り過ぎる時、そんな会話が聞こえてきたため、圭介は何が起きたのか何となく理解した。どうやら、商店街の中心にあるクリスマスツリーが倒れたようだ。

 ただ、できるだけ早く帰りたいという考えがあるため、圭介はすぐにその場を後にした。気にならないといえば嘘になるが、クリスマスツリーが倒れたといった程度の話では、止まる気になれなかった。

 しかし、商店街から少し離れ、人気のない道に入った時、圭介は立ち止まった。それは、道の真ん中にサンタクロースの恰好をした人が倒れていたからだ。

「あの……大丈夫ですか?」

 圭介は状況が飲み込めないまま、適当に声をかける程度しかできなかった。しかし、なかなか相手が起き上がらないため、圭介は肩の辺りを軽く叩いた。

「ん?」

 圭介が肩を叩いたことにより起きたのか、元々起きていたのかはわからないが、その人物はやっと反応を見せた。

「大丈夫ですか?」

「え……ああ」

「あの……」

「俺はカイト」

「いや、そうじゃなくて……」

 圭介が知りたいのは名前ではなく、何故こんなところに倒れていたのかということだが、面倒になってきたため、聞くのをやめた。

 サンタクロースの恰好をしたカイトは、圭介と同じぐらいの歳に見えた。ただ、とにかく普通の人とはどこか違って見えたため、圭介はあまり関わらないよう、すぐこの場を後にすることにした。

「俺、もう行きますね」

 圭介はそれだけ言うと、足早に去ろうとした。

「あ!」

 その時、突然カイトが叫び声を上げたため、圭介はまた足を止めた。

「バッジがない!」

 カイトはそう言うと、圭介の方に近付いてきた。

「バッジ、盗っただろ?」

「は?」

「あのバッジは大事な物なんだよ! お願いだから返してくれよ!」

「いや、ちょっと待てよ!」

 状況が飲み込めず、圭介は混乱してしまった。

「何か、なくなったの?」

「だから、バッジがないんだよ!」

「とりあえず、俺は持ってないよ」

「ホント? 隠してないか?」

「何で隠すんだよ? 大体、盗ったなら、いちいち起こしたりしないで逃げるだろ?」

「ああ、そうか……」

 カイトは、ガッカリしたように肩を落とした。

「そんなに大切なものなの? 誰かからのプレゼントとか?」

「そうじゃなくて……。とにかく一緒に探してくれないか?」

「どんなものなのかわからないで、探せるわけないじゃん」

 圭介の言葉にカイトはしばらくの間、何か考えているような様子を見せた後、口を開いた。

「実は俺……サンタクロースで、あのバッジがないと何もできないんだよ」

「……ふーん」

 そこまで聞いて、圭介はやはり関わるべきではないと考え、適当に返事をしてから歩き出した。

「おい、どこに行くんだよ?」

「寒いから帰る」

「一緒に探してくれよ!」

「サンタなんだから、トナカイに頼んで、そこら辺を飛び回れば良いだろ」

「だから、バッジがないと何もできないんだって!」

「そのバッジって何なんだよ?」

「何って……サンタクロースならみんな持ってる物で、不思議な力を持った物で……」

 カイトが説明に困った様子を見せたことで、圭介はため息をついた。

「その辺の設定、ちゃんと作っとけよ」

「作り話じゃない! ただ、説明できないだけだよ!」

「何だよそれ?」

「持ってるのが当たり前の物を説明できるわけないだろ。簡単に言えば色々なことができて……」

「はいはい、わかったよ」

 圭介は無意識のうちに、カイトをバカにするような態度を取っていた。

「サンタクロース、信じてないのか?」

「信じるも何もサンタなんていないし」

「何でそう思うんだよ?」

「だって、煙突から入ってくるって言ってるのに煙突がない家にも来るとか、大人の都合で設定変えられてんじゃん」

「確かにそうだけど……」

「それに、俺の家にはサンタが来たことなんてないし……」

 そこまで言って、圭介は何となく寂しい気分になり、言葉に詰まってしまった。

「名前、何て言うの?」

「は?」

「名前」

「名前って……俺の?」

 突然話が変わったため、圭介はすぐ答えられなかった。そして、答えて良いのかと迷いつつ、そこまで警戒することでもないかと結論を出した。

「……俺の名前は圭介だよ」

「じゃあ、圭介。俺と一緒にバッジ探してくれないか?」

「は?」

「バッジが見つかったら、俺がサンタクロースだって証明できるから」

「嫌だよ。寒いから家に帰るって」

「なあ、頼むよ。ないと先輩に怒られるんだよ」

「大体、何でここにいるんだよ? みんな起きてるじゃん」

「今日が初めての仕事だから下見だよ。人間界がどんな感じなのか見たかったし」

「はいはい、そうですか」

 相変わらずカイトの話を信じていない圭介は、適当に返事をした。

「なあ、一緒に探してくれよ」

「何で寒い中、見ず知らずの人を助けないといけないんだよ?」

「そうだけどさ……」

「カイト!」

 その声に、カイトは慌てて声がした方を向いた。それに合わせ、圭介も視線を動かした。

「リナ!?」

 起こった表情の少女を見て、カイトは慌てた様子だった。

「もう、何やってるの?」

「リナ、何でここがわかったんだよ?」

「とにかく、早く帰るよ。このままじゃ間に合わないよ」

 リナと呼ばれている少女もサンタクロースの格好をしていて、カイトと同い年のように感じた。カイトの話が本当だとすると、リナもサンタクロースの1人だと予想できるが、カイトの話を信じていない圭介はそんな予想を立てることもなかった。

 そして、カイトがリナと話をしている隙に、圭介はそっとその場を後にした。


 圭介が離れたことにカイトが気付いたのは、数秒ほど経過してからで、既に圭介の後ろ姿は遠くにあった。

「あ、行っちゃったよ」

「……誰?」

 圭介の後ろ姿に目をやりつつ、リナは小さな声で尋ねた。

「ああ、圭介とか言ってたよ」

「そうじゃなくて、あまり人と話しちゃいけないって、あれほど言われたじゃない!」

「そう怒るなよ。俺達がサンタクロースだなんて信じてないから」

「自分がサンタクロースだなんて言ったの!?」

「しょうがないだろ。一緒にバッジを探してもらおうとしてたんだから」

 そこで、リナは険しい表情になった。

「……今、何て言った?」

「あ……」

「バッジなくしたの!?」

「……どっかに落としたみたいで」

「早く言いなさいよ! 誰かが拾っちゃったらどうするの!?」

 リナに怒られ、カイトは顔を下に向けた。

「どこで落としたのか、わからないの?」

「わかってたら、取りに行ってるよ」

「じゃあ、いつ落としたのよ?」

「飛んでいる時に鳥をよけたら、そのままソリから落ちて、多分その時かな……」

「落ちたって……」

 カイトの言葉にリナは呆れた様子だった。

「1度戻って、長に探してもらうよ。その方が早いだろうし」

「そんなことしたら、先輩にばれちゃうよ!」

 カイトの先輩は、リナの先輩でもあるレイアのことだ。とても厳しく、だらしがないカイトはよく怒られている。そんなレイアに今回のことが知られたら、どれだけ怒られるか考えると、カイトには恐怖しかなかった。

「もう、みんな知ってるよ」

「え!?」

「だって、長にカイトがいる場所を聞きながら、ここまで来たんだから」

 リナの言葉に、カイトは肩を落とした。

「まあ、途中で長の声が聞こえなくなったから、捜すのに苦労したけどね」

「絶対、先輩に怒られる」

「怒られるだけで済めば良いけどね。でも、何で長の声が聞こえなくなったのかな?」

 リナはそう言いながら、手を上げた。

「バッジの場所、長に聞いてくるけど、戻ってくるまでカイトも探してよ」

「ああ、わかった」

 その時、リナの目の前にトナカイとソリが出現した。

「それじゃあ、行ってくるね。なるべく人と話さないようにしなさいよ」

「ああ、わかったよ」

 リナはソリに乗ると、そのまま空へ飛んで行った。

「探せって言っても、どうやってだよ?」

 リナが去った後、カイトは小さな声で呟いた。


 人が住む世界とサンタクロースが住む世界は1本の道で繋がっている。普段、その道は塞がっていて通れないが、クリスマスイブとクリスマスの日だけは自由に行き来できる。もっとも、行き来できるのは基本的にバッジを持ったサンタクロースだけだ。

 サンタクロースが勝手に人間界へ行くこと、それ自体は禁止されていない。ただし、サンタクロースが人間界へ行くことで発生するトラブルを避けるため、むやみに行かない方がいいとされている。

 また、そもそもの話として、忙しいサンタクロース達からすれば、プレゼントを配りに行く目的以外で、人間界へ行く暇などない。そのため、カイトのように仕事をサボって人間界へ行くサンタクロースなど、前代未聞だ。

「まったく、帰ってきたら、うんと叱ってやるんだから」

 レイアは独り言を言いながら、カイトとリナの分のプレゼントを包んでいた。

「おい、長の話は聞いたか?」

 その時、同僚のサンタクロースに声をかけられ、レイアは手を止めた。

「どうしたの?」

「とにかく来てくれないか?」

 本音を言えば、手を止める余裕はないが、レイアは長のもとに向かった。そこには大勢のサンタクロースが集まっていた。

「どうしたの?」

「大変なことになってるんだ」

「大変って……?」

「みんな、静かに!」

 長の声を聞き、騒いでいたサンタクロース達は話を止めた。

「カイトが人間界へ行ったという話はもう聞いておるな?」

 長は言い辛いのか、少しだけ考え込んでいる様子を見せた。

「……カイトが、バッジを落としたようじゃ」

 長の言葉に、全員が息を飲んだ。

「そのことと関係があるのか、人間界と繋がっている道が結界のようなもので塞がっておるのじゃ」

「ちょっと待ってください! それは、人間界に行けないということですか?」

 長の言葉にレイアは慌てて尋ねた。

「ああ、そうじゃ」

「え、そんな……」

「それじゃあ、どうするんですか!?」

 長の言葉に他のサンタクロース達は騒ぎ始めた。ただ、レイアは気持ちを落ち着かせると、どうするべきか考えた。

「すいません、外にいるリナやカイトと話をすることはできますか?」

「わしからの声は届かないようじゃが、結界があるところなら、直接話ができるはずじゃよ。丁度、リナがこっちに向かっておる。話がしたければそこで待てば良い」

「わかりました。みんな聞いて!」

 レイアの大きな声で、サンタクロース達は騒ぐのをやめた。

「私達は道が開いたら、すぐにでも出発できるように準備をするよ!」

「しかし、このままでは……」

「私はこれから結界があるとこまで行ってリナを待つ! 今、人間界にいるのはリナとカイトだけだよ。こうなったら、2人にどうにかしてもらうしかないでしょ?」

「……確かに、それしかないな!」

 他のサンタクロースもレイアの意見に賛成の態度を見せた。

「私から今どんな状況なのか、リナに直接話すよ! 後は2人を信じて、私達は私達ができることを……」

「ああ、わかった。ただでさえ遅れているんだ。みんな、急いで準備を進めるぞ!」

 リーダー的存在のサンタクロースがそう言うと、サンタクロース達は一斉に準備を再開した。

「レイア達の分まで俺達がやる。レイアはすぐにでも向かってくれ」

「ありがとう!」

 レイアは礼を言った後、すぐソリに乗った。そして、結界がある場所を目指して移動を始めた。


 最終的には早足どころか、全力疾走してきた圭介は、肩で息をしながら家に入った。

「ただいまー」

「おかえり。奈々を見なかった?」

「帰ってないの?」

 既に午後5時を過ぎ、辺りはすっかり暗くなっている。奈々がこの時間に家にいないのは珍しいことだ。

「何だよ、せっかくケーキ買ってきたのに」

 圭介は少しだけ不機嫌そうにそんなことを言いつつ、ケーキが入った箱を袋から取り出してテーブルに置いた。

「奈々、何かあったのかしら?」

「大丈夫だよ」

「でも、父さんのことがあったばっかりだし……」

「そんなこと言うなよ!」

 圭介が突然叫んだため、母は驚いた様子を見せた。

「ああいったことは、連続して起こるわけないんだよ。確率的に考えたってそうじゃん」

「……そうね」

「心配なら、俺が捜してくるよ。ケーキは冷蔵庫に入れておくね」

 圭介はテーブルに置いていたケーキの箱を持ち、冷蔵庫に入れようとしたが、そこで少しだけ違和感を覚えた。

「暗くなってきたから、圭介も気を付けてね」

 圭介は母に返事をすることなく、ケーキの箱を開けた。

「あれ?」

「どうしたの?」

 圭介の様子を見て不思議に思ったのか、母も箱の中を見た。

「……ケーキがない?」

 箱の中には何も入っていなかった。

「元々入ってなかったのかしら?」

「いや、帰る時は重さがあって……だから、今持った時におかしいと思って……」

「あら、それじゃあ不思議ね」

 その時、家のチャイムが鳴ったため、圭介は玄関に向かった。

「こんばんは」

 ドアを開けると、そこには由香里が立っていた。

「奈々ちゃん、帰ってる?」

「いや、まだだけど?」

「さっき、奈々ちゃんを見かけて一緒に帰ろうとしたんだけど、見失っちゃって……」

「は?」

 由香里の言っていることがよくわからず、圭介は混乱してしまった。

「詳しく話してくれない?」

「奈々ちゃん、クリスマスが嫌いだって……あと、家に帰ってもお父さんがいないなら、帰らないって、そんなことを言っていたの」

「いや、それなら何で無理やりでも連れて来なかったんだよ?」

「だって、逃げちゃったから」

「追いかけろよ」

「追いかけたよ。だけど見失っちゃったの」

 圭介はその部分だけ納得がいかなかった。どう考えても、中学1年生の由香里が小学1年生の奈々を見失うとは思えなかったからだ。

「由香里……足、怪我してるの?」

「いや、してないよ」

「じゃあ、何で見失うんだよ?」

「わかんないよ。私だって不思議なんだから。行き止まりの道に行ったはずなのに、いなくなっちゃったし」

「もう、とにかく捜しに行くよ」

 圭介はこれ以上、由香里と話すのは無駄だと思い、とりあえず奈々を捜しに行くことにした。

「由香里、最後に奈々を見た場所、教えてくれないか?」

「うん、わかった」

「母さん、奈々を捜しに行ってくるね」

「うん、気を付けてね」

 母の返事を聞いた後、圭介と由香里は外に出た。

「たく、こんな寒い中、どこに行ったんだよ?」

 圭介はそんな文句を言いながらも、早足で歩き出した。

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