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俺達冒険者!!

 なんやかんやと殺されかけつつも、こうして俺達はゴブリン10体の討伐を見事に達成したのだった。


 10体。


 今聞くと本当に少ない数字なんだと思い知る。


 なぜなら俺達が倒したゴブリンを数えてみた結果。


 47体と驚異の数字が出てきたんだ。


 そのうちの100%はもちろんゴードンが倒したゴブリン。


 コルトは数匹倒したと言い張るだろうが40匹は殺しているゴードンに足を向けて寝られるような数字じゃないのだけは確かだ。


 しかし困った。


 とんでもない数を殺してしまっていたのは別に問題ではない。


 ここで悩まされたのはギルドにゴブリンのどこを持ち帰るかという疑問についてだ。


 受付嬢は言った。


 ゴブリンの一部を納品してくださいと。


 話のほとんどをおっぱいが大きいという雑念で終わらせた俺が言うんだから確かな物なはずだ。


 しかし、このゴブリンの一部を納品してくださいと言うのはきっと冒険者としての資質を問われる事項に違いない。


 ここで間違ったものを納品してしまえば試験不合格となる可能性もあるはずだ。


 慎重に事を運ばねばならない。


 そこで足りない知恵と脳みそを古雑巾を絞るかのように俺達は知恵を出し合った。


 そして「牙とか爪で良いんじゃないか?」と俺は至極真っ当な意見を言ったつもりだった……


 しかし、コルトは納得いかないようで。


「でもなぁ……牙とか爪とかいくらでも偽装できそうじゃね? さすがに疑われるのは嫌だろう?」


「ああ、言われてみれば確かにそうだな? でもさ。そしたらどこを持って帰るよ?」


「47体もいるからなぁ……」


 そこで何を思ったのか俺達はゴブリンの死体を森から引っ張ってきて平原の一面に並べてみた。


 怪しげな儀式の真っ最中だと思われても仕方のない光景。


 極めつけには……


「とりあえず爪と牙をもぎ取って袋に入れてるけど……頭とかどう?」


 などと血まみれの魔術師がここにいるのだからより一層、怪しげな儀式の信憑性が増して仕方ない。


 頭は持って帰りたくないので「頭は重くね? しかもゴードンが潰して回ってせいでグロいぞ?」と反論。


「んん……難しいなぁ」


「あー!! ちくしょう。ギルドのお姉さんの胸が大きいばかりに俺達はこの依頼を失敗するのかぁ?」


「でもよ? ゴブリンの身体の一部としか言ってなかったぜ?」


 コルトがそう言い俺達はまた考え直す。


「ああ、そうだったっけか?」とゴードンのいつもの台詞。


 俺とコルトは目を合わせてとりあえず無視をした。


「なんかこう……ゴブリンしか持ってなくてなぁ……それも体に一つだけの希少部位って言ったら……」


 そして俺達は同時にひらめき、同時に答えた。


 「ち〇ち〇!!!」と。


「そうだよチン〇があったじゃねえか?」


「確かにそうだな。柔らかいし、もぎ取りやすい」


「玉も持って帰る?」とゴードン。


「いや玉はいいだろ?」


 呆れるようにコルト。


「二つあるしな?」


 俺のこの回答は多分、答えになってない。


 しかし、俺はここで重大なミスに気付いた。


 我ながら天才的ひらめきだろう。


「いやまてお前ら!! 俺は気づいちまった」


「どうしたよブラック」


 沈黙が場を包み重要な話を俺は切り出した。


「47本のチン〇をギルドに持ち帰る冒険者……見たことあるか?」


 そう、見たことない。


 つまりこれは常識じゃない。


 コルトとゴードンはしっかりと想像するように空を向くと。


「いやないな」


「うん。想像はできるけどなさそう」


 ゴードンは想像できるらしいが俺は想像できる余地なかったんだけど?


「だろ?! 加えて素材受け渡し所で少なくともあの麗しの受付嬢に見られるんだぜ?!」


「な?! それはまずい!!」


 少なくともコルトは同意してくれた。


「え? 別に良くね?」と無神経なゴードン。


「良くない!! 俺達が47本のゴブリンのチン〇。略してゴブチンを持って帰るような、そんな卑猥集団だととらえられかねない!!」


「どうせ、受付嬢も夜はイケメンのチン〇見てんだから見慣れてるだろ?」


 あ、これは盲点だった。


「いや……そういう話じゃないんだよ! って確かにそうだよな。あんだけ綺麗なんだから見慣れてそうだよなぁ……はぁ……」


 俺の恋心が一瞬で壊れた気がした。


 肩を落とす俺の横で熱弁をするのはコルト。


「しかしだ。ゴードン! 俺達が納品していたものが47本のゴブチンだってわかった時どうなる?!」


「どう……なる?」


「数人が幻滅するどころの騒ぎじゃないぞ?」


「まじか!」


「そうだな……俺達がいつか大成した時に見習い時代に47本のゴブチンを納品した冒険者だと記憶に刻まれてしまえば、どんな娘と出会っても恋心のコの字も残りはしねぇ」


 残るのはゴブリンのチン〇を納品した事実だけだ。


 ええい、もどかしい。


 時間も限られている。


「よし! こうしよう。プランAは爪と牙、プランBは頭、そしてプランCはゴブチンだった!」


 俺は提案した。


 あえて全部持ち帰ると。


「なるほど! あったまいいな!」とゴードンのフォロー。


 心底、不安になった。


「それでプランAの順からリスクが低い物から納品していけばいいという算段か……ブラック。お前頭いいな?!」


 コルトのお墨付きももらえた。


 多分……これでいける!!


「よし!! そうとあらば集めるぞぉおお!」


「おう!!」


 俺達は力を合わせて47体のゴブリンから爪と牙、頭とチン〇をもぎ取る。


 そして俺達はこのまま帰るにはなんだか忍びなかったので穴を掘って47体のゴブリンを埋めて帰ったのだった。


 余談だけれど穴掘りに大剣が役に立つとは思わなかった。


 そんなことをしていたせいでギルドに着くころにはもう日も傾き町は夜の色に染まっていた。


「今日はなんだか疲れたなぁ」


 そうコルトが言うので……


「大剣持ち上げてただけだろ?」


「しょうがないだろ? これ重いんだよ」


 開き直った。


「武器買い替えが必要だな?」


「いや、これは俺の相棒だ。変えん!」


「まだ言うか! それとゴードンもだぞ?!」


「え、なんで?! 魔法、役に立ったじゃん?!」


「あれを魔法とは呼ばねえよ! 呼ぶんだとしたら質の悪い黒魔術だ」


「黒魔術……かっこいい!!! 俺黒魔術使いになる!!」


 どうやら変なスイッチを押してしまったようだ。


 こうしてギルドへと戻ってきた俺達。


 依頼の報告やら素材の納品をしている冒険者達でにぎわっている中で納品をしている冒険者達の列に並ぶ。


 そして、とうとう俺達の納品の番がやってきた。


 ここは素材を広げられるだけの広い台がいくつもあり職員それぞれ一人ずつ付いている。


 俺達の担当になった職員はさぞ、おモテになられるであろう優男系の職員。


「ええっとギルド登録試験依頼のゴブリン10体の討伐ですね? 納品内容を確認させてください」


 そこで俺はいけ好かねえやつだなぁと思って職員を見てしまったせいで出遅れてしまった。


 おもむろにゴードンが「これだ!」とドヤ顔で出した袋。


 ゴブチンの入った袋だった。


「あ、ちょ! 待っ!!」と言うと慌ててたせいかギルド職員の男から疑いの目を向けられる。


「何か見られてはまずいものでも入っているのですか?」と……


 いやぁ……まずくはないけどみたらまずいものなんだけれど……


 その中、後ろでコルトは頭を抱えていた。


「おいコルト……弁明のために俺達のも出そう」


「そうだな……」


 半ばゴブチンの回収をあきらめ俺達はそれぞれの袋に入ったものを差し出した。


「ずいぶん多いですね……」


 不思議そうに俺達を見る職員。


 それからまず最初に検品されたのはゴードンの出した袋のゴブチンからだった。


 開けた瞬間漂う異臭。


 俺達も何度嗚咽をもらしたことか……


「んな?!」


 引きつる職員の顔。


 俺だって引きつりたいし逃げたい。


 そこでたまらず俺は「ああ、そのさ?! 俺達初心者でさ。それでその……ゴブリンのどこをもぎ取ればいいかわからなかったら……その……すみません。チン〇もぎ取ってきました!!」


 するとひきつった顔の職員。


「確かにわかりにくいとは思いますが……ただ10本だけでも……ぷふ!!」


 笑われた。


 隣にいる冒険者はドン引きしている。


 見たらまずいとかそういうレベルを通り越してガン見してドン引きしてた。


 しかし、チン〇と頭はなかなかひどい臭いだったので一瞬で検品が終わり「ありがとうございました。これらは……お返ししますね」


「いや、いらない」


 即答した。


 受け取ったなら返そうとしないでくれ……


「それではこちらで処分……しますね?」


 笑いをこらえつつ鼻をつまむ職員。


 顔が引きつっていた事は当分忘れそうにない。


 けれどだ。


 そんなトラブルまみれの納品劇も幕を閉じて、いよいよ冒険者として世に羽ばたく瞬間が来た。


 最初はどうなるかと不安でいっぱいだった。


 大剣を持ち上げられない前衛職を志望した元農家のコルト。


 魔術もろくに撃てない狂気の魔術師コスプレをした元漁師のゴードン。


 結果、ゴブリン10体の討伐は47体の大量虐殺になってしまったのだけれど……なんとかなってよかった。


 そして今朝がたぶりの受付嬢に呼ばれカウンターへと向かう。


「ご依頼お疲れさまでした」


「お嬢さんも朝から晩までお疲れさまです。もしよろしければこの後お暇でしょうか?」


 必死にアプローチしてみる。


 するとにこやかに「あいにく予定が埋まっておりますので結構です」


 断頭台に置いた首をきっぱりとためらいなくはねられた気分だ。


「そうですか……」


「玉砕したな?」


「ゴブリンみたい」


 コルトとゴードンの茶々。


「お前ら……」


 そんな俺達の流れを正そうと受付嬢。


「おほん……ひとまずあなた方の功績ですね。10体のゴブリンの討伐を依頼した中で、え……? ゴブリンの爪、頭……え?」


 お姉さんの信じられないとでも言わんばかりの表情。


「まさか……?!」


 俺達が納品した詳細についても事細かに記録されていた事実が発覚する。


「恥部……?! を47体分を納品された功績により……銅級冒険者と認定いたします。ぷふぅ」


「いやだって! お姉さんがゴブリンの一部って言ってたから!! どこが一番適切なのかなぁって議論した結果チン〇が良いって思って俺達頑張ってもぎ取ったんだよ?!」


「っぷ……ちょ、傑作……」


「ちょ! ちょっと笑うのはいけないのではないのですか?!」


「だからって47本……普通取ってきませんって……ぷふぅ。すみません。深呼吸、深呼吸よ……ふぅ、はぁ……すぅ……はぁ……ぷふ」


 俺とコルトは恥ずか死ぬ思いになった。


 けれど、お姉さんの笑顔をめいいっぱい見れたのだから良しとしよう。


 こうしてゴブリン10体の討伐でゴブチン47本の納品を経て俺達は晴れて冒険者となった。


 まだまだ駆け出し。


 これから俺達にどんな冒険が待ち受けているのかわくわくせずには……せずには……


 大剣を眺めるコルト。


 魔術の杖(狂気のこん棒)を眺めるゴードン。


 二人を見て先行きが不安になる俺だった。



 この三人が冒険者へと至る物語はここまでです。


 ここまでお読みいただきありがとうございました!


 王道の勇者ではなく脇役の冴えないポンコツ三人組、飯屋のウェイター、稲刈りが速いだけの農家、船に弱い漁師という組み合わせの冒険者達が今後どのような活躍を繰り広げるのか正直自分も気になります。


 結構前にプロットで仕上げた物語なのですが案の定、長編になったのでお蔵入りにしてました。


 顛末はなかなかに汚くも綺麗になって行ったのですがそれを書く日がきたらまたお読みいただけたらと思います。

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