表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/167

第85話 久しぶりの会合


「お疲れぇい。なぁんか、すっげぇ久しぶりに会った気分」


「クウリもイズも久しぶりー! 元気してたー!?」


「とはいえ、ほんの一週間程度なんだけどね。長かったぁって感じるよ」


「俺の方は、かなり有意義な時間だったがな。皆の方はどうだった?」


 それぞれの研修を終え、久し振りに集まったパーティメンバー達。

 借りていた宿に無事帰還し、本日ばかりはイズのご飯を思いっきり楽しみながら報告会を開く事になった。

 と言う事で宿のキッチンを借りて、全員で料理。

 フッフッフ、教会で鍛えられた料理の技術を見せてやるぜ!

 なんて思っていたのだが、イズとダイラからは苦笑いをされてしまった。

 何故だ。


「さて、それじゃ食事をしながら始めようか。俺からで良いか?」


 テーブルの上に料理が並んだところで、イズが真っ先に手を上げてから少々気まずそうな顔を浮かべ。


「正直、あまり報告出来る事はない。ほぼ訓練ばかりだったので、此方の世界の剣術は多く学べたが……無属性魔法に関しても、かなり感覚で扱うイメージが強かった。どちらに関しても、恐らくトトンと認識をすり合わせる事くらいしか出来ないだろう」


 と、言う事らしい。

 何でも無属性魔法はとにかく分かりやすいが、他の魔術に比べてもある意味“適性”が全てなんだとか。

 魔法に関してはイメージが大事ってのは俺も教わったが、無属性は基本的に感覚派が集う。

 更にはもっとここの力があれば、もう少しだけでも瞬発力があれば。

 そう言った身体の欲求に近い願望を叶える魔術だそうだ。

 他の魔法に比べてもこれはかなりイメージしやすいが、逆に才能の無い人間だと、いくら頑張っても向上しないモノなんだそうで。


「俺とダイラの無属性の適性って、どんなもんだっけ?」


「かなぁ~り微々たるモノだった気がするね。それこそ基礎の基礎程度しか習得できないんじゃない?」


 と言う事で、イズの報告終わり。

 早い。


「魔法学園の報告は俺からするけど、トトンもそれで良いよね?」


「いいよー、俺結構寝てばっかりだったし。あぁいうフワッとした感じの授業、ホント苦手」


 そこは起きてなさいよ、と言いたくなったが俺も他人の事は言えない。

 まぁトトンだからな。

 頭の出来は悪く無くとも、コイツの場合は基本感覚派。

 長々語られても、飽きてしまうのは予想していた。

 そんな訳で、皆してダイラに注目してみると。


「俺達に関しては属性も違ったから、そっちに関してはまた後で報告するとして。基本的に“こっちの世界の魔法”ってモノを、基礎から勉強したって感覚に近いかな。魔法とは何か、どうやったら使えるのか。そして詠唱の必要性、とかね?」


「あ、俺の方も最後に詠唱とは? って授業やったわ」


「やっぱり? 聖魔法は祈り、他の魔法は呪文。なんて事は無いみたいだね。どちらも等しく魔法であり、プロセスというか、考え方が違うだけって分かったのも結構大きいかも」


 と言う事で、ダイラが教わった事を説明してもらった結果。

 やはり基礎の部分は一緒というか、シスターに教わった事と似たような内容も多かった。

 基本的には魔力の放出、そしてその取扱いが一番大事。

 そして詠唱。

 此方に関しては、言葉そのものに力があるとかそういう意味合いではない。

 よりイメージを具体的にする為に、はっきりと言葉にして紡ぎながら確たる想像をさせる為。

 例えば前任者が使った魔法はこうであった、だからこういう言葉の羅列を紡げば、後から使う術師でもイメージが湧きやすい筈。

 という意味合いが強いみたいだ。

 実際に無詠唱で魔法を使える人間だってそれなりに居るらしく、そういう人達は頭の中でしっかりとイメージが固まっているという事なのだろう。

 なんて、簡単に言ってしまえばコレだけなのだが。

 いまいちピンと来ないんだよな……そんな簡単なモノなの? って言うのと、結構色々考えながらヒールを行使しても発動しなかったのは何故?

 そんな疑問を上げながら、ふむと首を傾げていると。


「クウリの場合は聖魔法を教わってたからね、多分余計に想像し辛かったんじゃないかな? 俺の場合“地”だったから、凄く分かりやすかった。ちょっと見てて」


 どうやら既に何かを掴んだらしいダイラは、テーブルの上に……粘土? の様なモノを取り出してから。


「今からクウリの人形を作るね? 本当に基礎的な、というか地属性魔法の練習みたいなモノなんだけど」


 そう言って粘土に手を翳したダイラ。

 やがて粘土はモコモコと勝手に動き始め、段々人型に変化していく……のだが。


「な、何か歪って言うか……いつになったら終わるんだ? コレ」


「そう思うでしょ? でも実際コレが、人の“想像力”ってモノを形にした状態なんだよ」


「うん?」


「この土には、今俺の魔力が籠ってる。つまり全体を操作している訳。しかも本人が目の前に居るのに、細かい所までちゃんと想像出来ていない証拠。しかも一か所を意識して再現度を上げようとすると、他が崩れる。つまり記憶力だけじゃなくて、全体の把握能力がかなり求められるって事だね」


 この台詞聞いて、なんだか少しだけしっくりきた。

 なるほど、確かに地属性……というか土とかだと分かりやすいな。

 つまり魔法っていうのは、使う一瞬の間にしっかり全体を想像出来ないと発動しないのか。

 コレを術者が全員出来るのかと言われると、流石に無理な筈。

 だからこそ、多少粗があっても発動はする。

 しかしそれは完成度の差に直結し、コレが術者としての実力に影響を及ぼす訳だ。


「いやでも……何度か練習した時とか、一回だけ怪我した子供に使った事もあったんだけどさ、全然上手く行かないのよ。ヒールの効果とか、回復量とか。それこそ怪我を治すプロセスみたいなのも考えながら使ったんだけど、全く発動しなかった。なんでだろ?」


 ダイラの話だと、あの時ばかりは聖魔法が発動してもおかしくない気がするんだけど。

 魔力放出が足りなかった? いやまさか、結構ガンガンに出していたと思うが。


「えっとね、多分聖魔法の使い方を勘違いしてる……のかな? そっちで直接教わった訳じゃないから、多分になっちゃうけど。そもそもとしてさ、クウリの想像した様な事をイメージしてる回復術師って他に居ると思う? 体の構造や治し方、そんなものを全部記憶して、想像出来る人って居ると思う? 予想だけど、多分“向こう側”の医師でも不可能じゃないかな」


 あ、確かに。

 俺は医者でも無いし、人体の構造に特別詳しい訳でもない。

 だったらこの時点でイメージがフワッとしている、既に条件未達成って訳か。

 ではどうしたらヒールが使える? 他の人は、どうやって魔法で人の傷を治しているんだ?

 もはや謎ばかり増えていき、更に首を傾げる結果になってしまったが。


「そこに関しては、トトンの“風”魔法が分かりやすかったかな。トトン、魔法が成功した時ってどんなイメージで行使してた?」


「難しい事は良く分かんないから、相手が吹っ飛ぶイメージ!」


 元気な声でトトンが声を上げる……けども。

 え、何。そんな簡単なイメージでも魔法って発動すんの?

 これまで考えて来た小難しい内容は何なのか、とか思っていたが。


「でもあんまり魔力乗せすぎると、吹っ飛び過ぎたりそもそも発生しなかったりした!」


「えぇ……なんか雑ぅ……あ、いや、待った。そういう事か?」


 コレがダイラの言っていた“分かりやすかった”現状なんだとすれば。

 俺は聖魔法、というかヒールにおいて全て勘違いしながら行使しようとしていた事になる。


「つまり物体を形作るとかなら、かなり全体イメージが必要になるけど。瞬発的な攻撃や治療、そう言ったモノは具体的なイメージって言うより、ソレを使ってどうなるかっていう“後のイメージ”、もしくは“どう効果を及ぼすか”の想像が重要って事か? それだけでも一応は発動する上に、魔力放出は基本的にバランス。特大魔力をぶっこんでも発動すらしない」


「事前の状況理解も大事だと思うけどね、一応ソレで発動する事は分かったよ。そして詠唱を皆必死で覚えてるけど、ソッチに関して取説を記憶している様な感覚かな。ゲーム内の記憶をイメージして、無詠唱でやった方が早いって事も分かった。でも順当に魔法が段々使える様になる訳では無くて、出来る事にも向き不向きがあるみたい。ゲームとの違いだね」


 なんともまぁ、色々とお土産情報を持ち帰ってくれたものだ。

 つまり俺の場合治す工程を必死に考えても無意味、ちゃんと想像出来ないんだから。

 だったら治った後の相手の姿をイメージして、それに近付く様に術を行使するって方が本来の使い方に近いって訳だ。

 なるほどねぇ……属性や使い方によっても、必要な情報量とプロセスが違って来るって訳か。

 というかシスターの言っていた“祈り”も大事だって話、もしかして相手の怪我を治す為に綺麗な心で~みたいな事だったのだろうか?

 相手の健康と安全を祈りながら治療を施すみたいな。

 リジェネに関しては、アレが元々そう言う詩だと理解していたからこそ、“詠唱”として効果が発揮していたって事か。

 んで、俺自身が魔法使うぜーって意気込んで無かったから、魔力量も安定した。

 みたいな?

 うは、改めてそう考えると俺全く聖職者に向いてないじゃん。

 性格的に。

 聖属性魔法を使いたいなら、無詠唱なんて夢のまた夢だなこりゃ。

 んで、適性があろうと全部を使える訳じゃない、と。


「それで、クウリの方はどうだったの?」


 あ、そう言えば俺の報告をまだしていなかった。


「多分、リジェネが使えるようになったわ。つっても、吟遊詩人みたいな魔法の使い方だから、あんまり使い所無さそうだけど。普通のヒールとか全然駄目だった。そっか、リラックス状態だったからこそアレだけは発動したのか。魔法使おうって思ってすらいなかったもんなぁ……」


 そう答えてみると、パーティ全員が動きを止めた。

 そして、しげしげと此方を眺めてから。


「リジェネ、だと?」


「クウリが、吟遊詩人?」


「え、どゆこと? クウリ何か楽器とか出来るんだっけ?」


 あ、やべ。

 これ見せろって言われるヤツじゃ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ