表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/166

第70話 ステータスとは違う何か


「うっそだろ!? お嬢さん、滅茶苦茶強いじゃねぇか! これで制限ありで戦ってんのか!?」


「光栄だ、と言っておこう。しかし貴方も強いな、随分と速い上に……フェイントが上手い。かなり頭を使って戦う剣士の様だ」


「そりゃ、どうもっ! ハハッ! 平然と防ぎながら言われてもな!」


 金属音を響かせながら、イズとマトンさんの剣が火花を上げる。

 俺は剣士ではないので、ゲームの時みたいに“スキル”として囮とか、キャンセルを入れる様な事をしてくれないと……正直イズが言っているフェイントとやらは理解出来ないが。

 それでも周りの兵士達が、良く分からない所で「おぉ!」と声を上げたりしているので、かなりレベルの高い試合になっているのは確かみたいだ。


「トトン、お前なら分かる? いまいち俺には分からないんだけど……ダイラも、どうよ?」


「わっかんないよ俺には、後衛補助職だもん。ただ速いなぁすごいなぁって感想しか……現地の人で、こんな人初めてかも。ミラさんより速いよね? すっご」


 なんて、ダイラと一緒に素人丸出しの感想を溢していれば。

 二人の戦闘ジッと見つめるトトンが、さっきから何やら指で太ももを小さく叩きながら……リズムを取っている?

 何やってるんだ? コレ。

 すると、トトンは一つ頷いてから。


「うん、やっぱ間違いないかな。俺も剣術とかは良く分かんないけど……あの人、相手のタイミングを微妙にズラしながら戦ってるんだ。対人戦が凄く上手い」


「「と、いうと?」」


 珍しくトトンが真面目な顔をしながら、瞬きさえ惜しむかの様子で戦闘を見つめていた。


「連撃って、基本的にその人のリズムがあるんだよね。タンタン、ココ。タンタンタタン、ココ。みたいな」


「えと……リズムゲーの話してる?」


「それに近いかな。でもそれを、あえて相手は微妙にズラしてる。その結果何が起きるかって言うと……えぇと、二人に物凄く分かりやすく言うとね? 俺がパリィを三回に一回は失敗するかも」


「はぁ!? マジかよ!?」


 最後の例えは、物凄く分かりやすかった。

 というか、驚愕してしまった。

 トトンのパリィの失敗率なんて、マジで少ないのだ。

 だというのに、もしもトトンがあの人と戦った時はそうなるって事なのか?

 あり得ないだろ、なんて思ってしまうが……トトンの表情は何処までも真剣。


「長時間戦えば戦う程、リズムが崩れて来る。最初はこうだったのに、次はワンテンポ速い。次は半歩踏み込んで来たり、変な所で剣を引いてみせたり。“騙し討ち”が滅茶苦茶上手いって感じ。強いよ、あの人。ステとレベルが同格で、武器だけの戦闘なら……俺じゃ泥仕合になるかも」


 いやいやすっご、マジかよ。

 魔法やらスキルやら織り交ぜるのなら違うのだろうが、実力のみの腕っぷし勝負だとトトンに匹敵するって事か?

 ていうか、イズだって別に遊んでいるって雰囲気は無い。

 むしろ、若干戦い辛そうにしているし。

 つまり剣術って意味だけで言えば、二人と同格に近い存在って事か?

 これが、冒険者に頼らずに国の為に戦って来た兵士の実力。

 どれくらいの位置に居る人だとかは、未だ分からないが。

 それでもやはり“こちら側”は凄い。

 こんな人達がゴロゴロしているとなると……マジで惜しいな、この世界。

 レベルやら何やらがあれば、俺達なんぞ平凡な一般人になっていた可能性すらあるわけだ。

 とはいえ、やはりそういう“ステータスの違い”が土俵を崩してしまう様で。


「ちぃっ! 凄いなオイ!」


「……こんな勝ち方、本当に申し訳ない。“こっち側”に来てから、初めてそう思ったよ」


 イズの剣を防御したマトンさんを、無理矢理押し込んで相手がバランスを崩した瞬間。

 そのまま身体ごと押し込む様に前進して、もう一撃を叩き込んだ事で勝負は決まった。

 ダイラの保護によって守られ、怪我はしなかったが。

 コレが本物の戦闘なら、マトンさんは死んでいた事だろう。

 完全にごり押し、ステータスの差を利用して一気に片を付けた状態。

 傍目でも見ても、ソレが分かる程にイズの攻撃は無理矢理だった。

 とはいえ勝負というのは、そういう“ごり押し”だって必要になる事はある。

 魔物相手だったら、基本はソレな訳だし。

 更には剣の世界だって、綺麗な事ばかりでは無いってのも分かる。

 だとしても、イズは凄く悔しそうに奥歯を噛んでいたが。


「ハハッ、これでもこの隊じゃ一番の成績だったんだがな。参った、お嬢さん……じゃないな、イズさん。俺の負けだ、だからそんな悔しそうな顔しなさんな。魔法有りなら、俺の完封負けだよ」


「いや、その……すまない、そうじゃないんだ。しかし、礼を言う。ありがとう、マトンさん。貴方は強い」


 それだけ言って、倒れ込んだ相手をイズが掌を引いて起こしてみれば。

 周囲の兵士達からは喝采が上がった。

 どうやら、俺達の……というかイズの実力は認められたらしい。


「それで、さっきの話だが。いいかい?」


「あぁ、ここまで教わってしまったからな。協力しよう、リーダーからの許可も既に貰っている。今晩だけは、共に過ごすと誓おう」


「……言い方」


 と言う事で、今夜兵士の皆様と行動を共にする事になった。

 つまり、完全徒歩にはなってしまったのだが。

 まぁ、いいか。

 どうせ人が居る内は飛び回れないし、国境付近ってのもどうなっているのか分からないし。


「では改めて依頼しよう。えぇと、リーダーはそっちのお嬢ちゃんで良いのかな?」


「どーも、一応俺がリーダーです。それから、お嬢ちゃんじゃなくてクウリって名前があるので」


「そうかい、それじゃよろしくな? 攻撃術師、クウリ。あ、そうだ前払いだったな。ちょっと待ってくれ? 門番の所から、軍の金くすねて来るから」


「問題にならない様にお願いしますね? 足りないなら、少しくらいサービスしますから」


 なんて冗談を交わしつつ、兵士の方々が街の門まで走っていくのであった。

 さてさて、一応このまま予定通り進む形になる訳だが。

 兵士さんと一緒となると、どうなる事なのやら。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ