第69話 現地の人と試合
なぁんて、色々考えてみた訳だが。
結局の所予想に過ぎない、出会ってみないと何にも分からない。
なので、とっととお金貰ったら出て行きましょーって結論に落ち着いた俺達。
数日後には買い取り金も支払われたし、もう旅立ちの準備は整った。
と言う事で、日が暮れそうな時間に差し掛かってから街を出発してみれば。
「おや? また嬢ちゃん達か。こんな時間にお出かけか? あまり感心しないな」
「あれ? おっちゃん達、街中警備じゃなかったの?」
街から出てすぐの所で、居酒屋オジサンズが再び登場したではないか。
エンカウント率高いな、オイ。
とりあえず知らない仲でもないので、片手を上げながら近づいてみると。
なんか随分と物々しい雰囲気で部隊が編制されていた。
え、なに。戦争でも始まるの?
「アレから、件の女に遭遇したりしてないだろうな?」
「全然、これっぽっちも。これ、何かあった感じですか?」
そう言ってから周囲の男達を眺めていると、彼は溜息を一つ溢してから。
「目撃情報は街中だけじゃないって事だよ。しかももう夜になるからな、外の警備となるとこれくらい必要なんだ。それで? お嬢ちゃん達はどうした、まさかこれから仕事に行くとか言わないよな? もう日が落ちるから、明日にしたらどうだ?」
ものっ凄く心配してもらっている所申し訳ないが……俺達の場合、夜の方が都合が良いのだ。
人目があると、空飛べないので。
とはいえ確かに兵士達から見たら、こんな娘っ子四人衆がこの時間に街から出るのは見逃せないのだろう。
相変らず、真面目だねぇ。
「これでも結構強いんで、大丈夫です。んで、これから次の街に向けて出発します」
「おいおいおい、本気かよ……女の子四人な上に、夜に出発って。魔物や魔獣、盗賊の類だって出る可能性があるんだぞ? 例の通り魔の女だけじゃない、脅威はそこら中にある。しかも歩きって……頼むから考え直せ、な?」
そんな会話を続けていれば、周りの人達も話を聞きつけて集まって来てしまう始末。
やーっべ。
口々に考え直すべきだ、とか。
もう少し身の安全を考えて、とか。
物凄く街に戻る様に促して来る。
でもなぁ、ここ最近夜はこんな風に警備しているとなると……明日になっても同じ結果になる気がするんだよなぁ。
昼間の間に出るのが一番手っ取り早い上に、問題も少ないのだろうけど。
こういう人達がどこまで足を延ばしているのかも分からないなら、下手に翼を使う事も出来ない。
なので、このまま強行突破して旅立ってしまうのが一番楽なんだけど。
「え、えぇ~っと! アレです! 俺攻撃術師としては結構強い方ですし、こっちのダイラはこの街に来てから“聖女”に認められた聖職者です!」
「あ、あぁ……あれか? 冒険者に聖女が生れたって噂になってた……」
「それです! あとはこっちのトトンはこう見えて、魔物の突進を平然と止めるタンクでして!」
「いやいや、流石にそれは話を盛り過ぎだろう」
クッ! 駄目かっ!?
相手は善意MAXの発言なので、変な行動を取って敵意を買いたくないし。
出来れば「いってらっしゃーい、元気でねー」的に見送って欲しい所なのだが。
「こ、こっちのイズは魔法剣士です! 多分例の辻斬り魔法剣士より強いです! なので、問題無し! 俺達で、どうにか出来ます! ヘーキ! オレ達、ツヨイ!」
もはやどーにでもなーれ! って勢いで叫びまくったが。
最後に辻斬りの話した瞬間に、皆様の雰囲気がピリッと鋭くなった気がした。
お、おっとぉ?
俺等なら勝てる的な発言は、流石に不味かったか?
なんて事を思いつつ、あははと乾いた笑い声を溢していれば。
「そっちのお嬢さん、イズって言ったかな? こっちの嬢ちゃんが言っていた事は本当かい? すまないが、そんな風には見えない体格だが」
おっちゃんがそんな事を言いながら、イズに視線を向けてみると。
イズの方はニッと口元を吊り上げてから。
「試してみるか? いいぞ? 此方も皆様の実力には興味がある。それに……件の女だって、屈強な見た目はしていなかった筈だ」
どうやらこの雰囲気に乗るつもりらしく、イズは腰に差している二本の長剣の柄を叩いた。
流石にコレで「ふざけんな! だったら勝負しろや!」とはならないだろうなぁと予想していたのだが。
意外な事に、相手は長剣を抜き放ったでは無いか。
おっと? 真面目な皆様にしては意外だったが、もしかして直情タイプ?
などと、思ったのだが。
「もしも先程の話が本当なら、試合して少しだけ実力を見せてくれないか? それから……こんな事を言って良いのか分からないが、君の実力が本物だった場合。我々から依頼したい事がある」
「件の女の調査に協力、かな? 一晩限りとはなるが、少しだけ行動を共にして欲しいと見た」
「その通り。こう言っちゃなんだが、結構被害が増えて来ていてね。魔法剣士には魔法剣士を当てたい。だからこそ、ちょっとだけ付き合って欲しい。もちろん、報酬に色は付けよう。これから旅立つんだろう? 全て前払いだ」
だ、そうで。
コレはまた予想外の方向で突破口が出来たな。
門を抜けてすぐの所だったから、報酬未払いの心配も無さそうだし。
しかも門番の人にブンブンとランタンを振って、何かしら合図を送っている。
これは試合だ、トラブルじゃないって所なのかね。
よく分からないけど、門番からも返事が返って来たのを確認してから。
「と言う事らしいが、どうする? リーダー」
クククッと笑いつつ、イズがそんな事を言って来るが。
もう顔を見ただけで分かる、戦いたいのね。
了解了解、まぁこのまま口論していても仕方ないし。
「いくつか確認します。これから旅立つという所で、この街の周辺をウロウロしてたらかなり時間を取られてしまいます。国境周辺までならお付き合い出来ますけど。その辺りに関しては、どうお考えで?」
「そっちの都合と合わせるよ、お嬢ちゃん。アイツの目撃情報はかなり広範囲だ、こっちも虱潰し状態なんでね。付き合える所までで良い」
なら、決まりだ。
「イズ、通常武装。特殊効果なし、魔法は禁止。ダイラ、両者の武器と全身に“プロテクト”を掛けてくれ。これは試合だ、これから仕事する兵士に怪我させちゃ困る」
「「了解」」
指示を飛ばせば、ダイラがすぐさま二人に保護魔法を。
そしてイズは二本の長剣を抜きながら、相手の前へと歩き出した。
はてさて、意外な所で思わぬ収穫だ。
兵士って存在の実力は、これまでに見た事が無かったからな。
「魔法剣士ではあるんだが、今回はリーダーから禁止されてしまったからな。剣術だけでお相手する。イズだ、お見知りおきを」
「この街の冒険者って言うと、正直弱いってイメージしかなかったが……ハハッ、こりゃ期待出来そうだ。気迫が違うねぇ、お嬢さ……いや、イズさん。俺は“マトン”、よろしく。言っておくけど、冒険者が貧弱な分ここの兵士は強いぜ?」
「それは期待出来るな。是非、全力でお願いしたい」
そう言って両者は剣を構え、周囲の者達は距離を空けた。
ピリピリとした空気が広がって来た頃、兵士の一人が剣士二人の視界に映る場所まで走って来て。
「それでは……両者、準備良いですね? ……では、試合開始!」
声を上げた次の瞬間に、ガキンッ! と物凄い音を立てて両者の剣がぶつかり合うのであった。
うっそ、マジか。
あのおじさん、今まで見て来た人達よりずっと速いかも。




