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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
3章

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第68話 別のフラグ


 最後の依頼を終え、怪鳥の解体、買い取り金が用意できるまではこの街に居る事になった俺達。

 ちなみに卵に関しては、テイマーに近い職業もあるらしく。

 結構高値で買い取って貰えた、やったぜ。

 移転の書類はもう受け取ったし、もう仕事は受けない事も伝えて来た。

 最終支払の方も二日あれば終わるって事なので、適当に街中をぶらつきながら必要な物を買い込んでいれば。


「お? いつかの嬢ちゃん達じゃないか?」


 急に背後から声を掛けられた。

 この街だと普通に話しかけられる関係になった人は居なかったので、割と驚きながら振り返ってみれば。


「あ、居酒屋に居たおっちゃん達」


「そうそう、覚えていてくれたか」


 今はお仕事中なのか、結構厳つい鎧に身を包んだ数名が軽く手を上げていた。

 衛兵って感じの装備じゃない気がするんだが……あっ、攻撃部隊って言ってたか。

 え、もしかして件の辻斬りさんが出たとか?

 なんて事を思って、首を傾げていれば。


「安心しろ、緊急事態って訳じゃないさ。衛兵だけじゃ手が足りないっていう事で、俺等も巡回に駆り出されているだけだ」


 という事らしく、皆緩い笑みを浮かべている訳だが。


「手が足りないって……また例の女の人が出てる感じですか?」


「あぁ~えぇと、そうだな……お嬢ちゃんは攻撃術師だって言ってたもんな? 一応教えておいた方が良いか」


 何やらキョロキョロと周囲を見渡してから、屈んで此方に身を寄せて来た先頭のおっちゃん。

 そして、表情を引き締めてから。


「これまで問答無用で戦闘が発生していたんだが……最近じゃ少し様子が違うみたいなんだ。攻撃はして来るが、質問の方が多いというか。相手をただ斬る訳では無く、まるで情報を流す様な動きに出たらしい。重傷被害は前より少なくなったが、出現報告が増えている」


「狙っているのは、やっぱり攻撃術師?」


「あぁ、しかも探している相手はどうやら女の子みたいなんだ。攻撃術師の女、とは言わずにあえて“女の子”と表現したらしい。だから、お嬢ちゃんは余計に気をつけな。遭遇しても、絶対に戦おうとはするな? 出来れば、見ただけで術師と分かる恰好も控えてくれ。それからコレ、この街限定ではあるが、ソイツの指名手配書だ。目撃情報が増えて来たから、結構正確に描けていると思うが……頭に入れておいてくれ」


 そう言って渡された手配書に視線を落としてみれば。

 何と言うか、すげぇ美人が描かれていた。

 銀色の長髪に、赤い瞳。

 スカート丈の少々短い真っ赤なドレスを着ており、黒い手袋にロングブーツ。

 仕立ての良さそうな黒いローブを羽織っており、大きなフードで顔を隠している様な恰好。

 更には。


「これって……身長はちょっと分かんないですけど、この人に比べても、こんな大きな長剣を持ってたって事ですか?」


「あぁ、そうだ。刃渡り、刃の幅もそれくらいの大きさ。身長はそうだな……そっちの聖職者のお嬢さんくらいだ。やけに切れ味が良くて、コッチの剣なんぞスパッと切断してくるらしい。何かの魔法だろうが……魔剣だなんだと噂も出ているくらいだ」


 ツーハンデットソードって奴だろうか?

 真っ黒い禍々しい剣に、赤い模様。

 女性が持つには、あまりにも大きすぎる見た目。

 ダイラくらいの身長って言うと、男性でもこの剣を扱うのは結構苦労するんじゃないか?

 そんな風に思ってしまう程大きな、というか長すぎる両手剣。

 下手すりゃ俺の身長くらいあるんじゃないの?


「つーわけだから、特に嬢ちゃんは気を付けてくれよ? 何かあったら、すぐ周りに助けを求める、もしくは前に教えた俺達の詰め所に来い。そこなら間違いなく戦闘員は滞在している」


「了解でっす、心配してもらってどうも」


「いいさ、それが俺達の仕事だからな」


 それだけ言って、彼等は片手を上げて去って行った。

 いやはや、異世界モノの物語って兵士が適当だったり、王様が悪役だったりって話はいっぱいあったけど。

 コッチの世界の兵隊さんは随分と真面目だねぇ。

 なんて事を思いつつ、改めて手配書に視線を落としみると。


「ますますアバターって気がするんだけど……どうなんだろうね?」


「しかしダイラ、俺の記憶ではこんな武器はあのゲームには無かった。ナイフ、短剣、長剣、大剣。サイズは様々だが、ツーハンデットソードと言えるような武器のカテゴリー自体が無いんだ。隠し武器、または未確認の職業っていう可能性は無くもないが……」


 そう、そこなのだ。

 少なくともあのゲームにはこんな武器はない、というか確認した事が無い。

 俺の知らない武器って可能性も疑ったが、イズの言う通り両手剣のカテゴリーは大剣のみ。

 ゲームだからこそ、この長さでも片手で扱う様な代物かとも考えたが。

 剣士であるイズも知らない武器と言う事は、多分俺の予想は外れだ。

 あのゲームは“どんな自分にでもなれる”という謳い文句だったから、本当に隠し職業って可能性もあるが……そんなモノがあれば、ネットの掲示板で話題になっていた筈だ。


「形とか色はレイドの黒竜装備にも似てるけど、あれでドロップする魔剣ってイズの使ってるヤツだもんね? 片方」


「その通りだ、トトン。だがしかし……クウリ、どう思う?」


 そして皆の視線が此方に向いてくる。

 う~むと唸りながら、ジッと手配書を眺めてから。


「プレイヤーって可能性は捨てきれない、とは思う。ただし、俺達と同じゲームのプレイヤーじゃないかもしれないな」


「あぁ、なるほど。他のゲームからって可能性もあるのか」


「でもでも、あり得るのかな? それに今の俺達みたいに、現地の物を使ってるってだけの可能性も……」


「た~しかに、それじゃどうやっても判断出来ないよねぇ」


 なんて、皆揃って悩んでしまうが。

 それでも、俺達と同じプレイヤーだとは考え辛い点もいくつか。


「コイツは、前衛なんだよな? なのにわざわざドレスを着るか? イズと同じ様な身体能力があれば、戦えない事はないかもしれないけど。こんな派手な剣を使ってるのに、わざわざそんな事をするメリットが分からない。趣味ってんなら、まぁ分からなくも無いが。更に言うなら、辻斬りなんてする奴にしてはドレスも派手過ぎる。それに今まで俺達は、現地でこんな剣を見たか?」


「前回の太古装備とかに近いのかな……? 能力値的にも、見た目の異様さからしても。特殊武器って感じだよね」


「アレだってトトンが強化した事によって能力値がおかしくなっただけだ。現物そのままじゃ相手の剣をスパッと出来るとは思えないんだよな。相当やっすい剣とかなら分かるけど、兵士の使ってる武装だぞ?」


「そうなって来ると、やはり他のゲームからの転生者。という線が強くなるのか?」


 俺の考えている事を端から喋ってみると、皆は更に首を傾げてしまう。

 とはいえコレだって俺の予想、妄想の類だ。

 だけど、警戒しておく事に越したことはない。


「可能性として考えてるってだけ、後はこっちの都合を織り交ぜて考えた結果って事を前提に話すと……一つは別ゲーのプレイヤーが、俺達と同じ様にこの世界に来た。もう一つは……」


 こればかりはあまり考えたくないし、勘違いだった場合は俺がただのビビリというか、自意識過剰なだけになってしまうのだが。


「コイツが探している“攻撃術師の女の子”。もしもソレが俺の可能性を万が一にでも考えるとするなら……コイツ、魔人じゃね?」


 異常な身体能力、魔剣と思われる武器。

 そして探しているのは攻撃術師の“女の子”。

 俺の今の外見では、大人の女性というには些か幼いからな。

 もしも前回の羊頭との戦闘情報がどこかしらから漏れた、みたいな事があるとすれば……。

 相手は、“魔王”を名乗ってしまった俺を探していると言う事になるんじゃないか?


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