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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
2章

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第43話 攻略の準備


「攻略に関して、現地の資料が揃った。その結果……状況めっちゃ最悪でーす! 攻略無理! 絶対無理!」


 ミラさんから貰った資料を読んだ結果、そう言う他なくなってしまった。

 本人は非常に気まずそうな顔をして、黙ったまま俺達の話を聞いているが。

 だってねぇ、無理ですよ。

 これまでに他の火山地帯で発生していた報告書を見た結果、レイドの前の状況としては最悪と言う他無い。

 “溶岩神ペレ”、コイツは本戦イベント前にどれだけ備えておくかが大事なボス。

 ストーリー性が強く、相手が作り出す幻影が各地に出現。

 ソレをどれだけ潰せるかによって本体の能力が変わって来る。

 ゲームではパーティやクランごとに、討伐数が管理されていた訳だが。

 現実となったこの世界では、そんな機能有る訳が無い。

 つまり探索範囲も火山地帯全域になるし、現実ではその場に行くのだって時間がかなり掛かる。

 そんでもって更に最悪なのは、相手の幻影を殺せず撤退したという報告ばかりなのだ。

 当たり前だ、目的など分からない新種が現れたのだから。

 普通ならアレらを討伐するより、脅威なら逃げる方が得策だろう。

 でも……それでは駄目なのだ。


「殲滅率が低すぎる。コレ、マジで最悪だぞ……」


「地面は完全溶岩フィールド、ゲームであれば常に高ダメージを受ける最悪な状況に代わる訳だ」


「で、でもリアルでマグマに足なんて突っ込んだら……」


「脚が無くなるね……うはぁ、やべぇ」


 皆が声を洩らす中、それ以上の想定を考える。

 俺がリーダーなんだ、常に最悪を考えろ。

 その事態に備えられる作戦を考えて、全員をしっかり使わないと勝てる相手じゃない。


「超無理矢理をやるなら、戦えるかもしない。でも無茶だ、安全マージンが全く取れない上に、これから準備を始めても間に合う保証がない。もっと言うなら、上手く行く確証が持てない」


 はっきり言って、無謀も良い所だ。

 何度も言うが、このレイドボスはストーリー性を重視している。

 だからこそ、これまでのイベントを放置してしまった代償は大きい。

 これは……勝てる筈の無い戦いだ。

 しかも現地民はソレに気付いてすらいない。

 馬鹿馬鹿しいよ、ホント。

 このあり得ない戦場に挑んでも、守っても、誰も事態に気が付かない。

 俺等に感謝の一つだってしてくれないだろう。

 だったら、逃げるべきだ。

 それが一番賢いやり方だというのに。


「クウリだったら、その状態のレイドをどうやって攻略するの?」


 ニッと、トトンが口元を吊り上げた。

 お馬鹿、この状況で期待した瞳を向けるんじゃないの。


「全員が生き残れる可能性、あるんだろう? 試してみようじゃないか。それこそ俺達の“本気”を試す良い機会だ」


 イズも、ニヤッと口元を歪めた。

 多分コイツは、全力を使ってみたいって気持ちが強いのだろうが。

 それでも。


「ごめんクウリ……自分でも滅茶苦茶言ってるって、分かってるんだけど……どうにかならない? 俺達は、アバターって“ズル”をしてるんだから。こういう時こそ、前に立つべきなのかなって。俺の柄じゃないのは分かってるんだけど」


 ダイラも、身体を震わせながらそんな台詞を呟いて来るではないか。

 だったらもう、やるしかないだろ。

 仲間達は皆アイツを潰す気でいる。

 後は俺の決断一つ。

 だったら、俺はどうするか。

 決まってんだろ、こういう時“クウリ”というキャラクターはどういう判断を下した?

 不安がある? 対処出来ない可能性がある?

 そんなもんいつもだろ、それをこのメンバーで潜り抜けて来たんだろ。

 俺達は何だ? ぶっ壊れの能力を持ったアバターだ。

 能力的にも、スキルも恵まれている。

 だったら、他の奴らより優っていると胸を張れ。

 綺麗事だったとしても、それをする意味があるのなら。

 この程度、俺達にとっては“いつも通り”だろうが。


「攻略難易度が上がれば上がる分だけ興奮する、なんて言ってた時期が懐かしいねぇ本当に。ったく、やってられるかっつぅの」


 思い切り悪態とため息を溢しながらも、テーブルの上にマップを広げた。

 ゲームじゃないからこそ、不利な要素が非常に多い。

 しかしコレが現実だからこそ、有利になる要素だってあるはずなのだ。

 それをとことん突き詰め、意地汚く戦ってやろうでは無いか。

 馬鹿馬鹿しいと思える作戦でも、滅茶苦茶単純な作戦でも有効打になる可能性だってあるのだから。


「溶岩神ペレの一番厄介な所、それはフィールドによるバッドステータス。逆にソコさえ何とかなれば、本体はレイドボスの中でも弱い部類だ」


 レイドだと思うから駄目なのだ。

 もっと現実的な思考で考えないと、多分勝てない。

 ダンジョンの時と同じだ。

 ゲームでは出来なかった事が出来る様になっている、なら逆にそこを利用してやれば良い。


「だが現状では、下準備が全く整っていない。つまり間違いなく足元はマグマの海になるぞ? 更にあのボスに近付けば近づく程温度が上がり、補助魔法でも補えない程の高温のデバフを貰ってしまう」


「今から可能な限りペレの幻影を潰して回る? いつから出現したのか正確に分からないから、本戦がいつ始まるのかも分からないけど……」


「でもソレをやる場合、もう馬車でチンタラ移動してる時間ないよね。クウリの羽を使って、一気に回るくらいしないと」


 全員の意見を聞きながら、絶対にやらないといけない事、もしかしたら出来るかもしれない事を全て書き出して行った。

 ほんの小さな疑問だったとしても、全て試す。

 それくらいしないと、勝てる見込みがない。


「なんか、皆さんとても熱心に作戦を立ててますけど……相手の行動って、こんなにも想像出来るものなんですか? それから、HPが半分以下とか……これはいったい」


「ごめんミラさん、マジで時間無いから後にして。それから、俺達が行ってた火山。あの地域立ち入り禁止の要請と、遠目から観察してくれる人を付ける事って出来る? 噴火が起きたらすぐに報告が欲しい」


「えぇと……支部長に相談してみます」


 本戦が始まるまでのカウントダウン表示なんて、当然ながら無い。

 しかしペレ自身が姿を見せたと言う事は、もうあまり余裕が無いのは確かなのだろう。

 今からでも出来る事は、全てやらなくては。

 まずは……。


「班を分ける。準備する側と、殲滅して回る側。ダイラ、お前には一番頑張ってもらう事になる」


「うっ……俺は準備側って事だよね、分かった。やってみるよ」


 試してみますか、新しい事ばかりの無謀な挑戦になってしまうが。

 コレだって、今後生きていく上で必要な事なのだから。

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