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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
2章

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第34話 お上品になってしまう


「その結果が、コレか」


「はい、今回は大収穫です」


「いや、まぁ……うん、そうだな」


 仕事も終わり、街に戻って来た私達。

 クウリさん達を宿に送ってから、私だけはギルド支部長の所に戻った。

 彼に提出した書類には、今回最深部と言って良いであろう場所まで潜った報告書と。

 今回の収集品のリスト。

 あの後クウリさんの魔法によって、数多くの鉱石を掘り当てた。

 もはや数年くらい遊んで暮らせる程の金額に至っている事だろう。

 そしてなにより、あの錆びた塊。

 アレが幾つも出て来たのだ。

 現状は錆び落としに出しているが……もしかしたら、歴史的な物品を掘り当てたかもしれないのだ。

 もはやニヤけた頬が戻らないというもの。

 依頼側もかなりの興味を持っているらしく、是非交渉したいと熱心な声を上げているらしい。


「それで、彼女達の報告は? コレだけだと、なにやら珍しい魔法を使うという事しか分からないんだが?」


「今回は特に報告する様な事はありませんね、普通の戦闘でも強かった。としか」


「強かったとは、どの様に?」


「トトンさんがバーンってやって、イズさんがズパーンと。ダイラさんがドーンと守って、クウリさんがバリバリッ! ってやったら終わりました」


「……」


 何やら不満気な支部長が此方を睨んで来るが、本当に今回はそれくらいしか報告が無いのだ。

 というより、鉱石の査定と錆びた物体の調査を進めて欲しい。

 むしろ今の関心は、そこしかないと言って良いだろう。


「はぁぁ……分かった、もう良い。引き続き彼女達と行動を共にして、こっちに報告を上げてくれ」


「あ、そういえば」


「何か他に報告する事があるのか?」


 ポンと一つ手を叩いてから、もう一つだけ報告出来る内容を思い付いた。


「彼女達、溶岩でお肉を焼いていました。美味しかったみたいです」


「……うん?」


 と言う事で、今回の仕事も無事終了するのであった。

 あぁ、早く買い取り金と錆び錆びの物品返ってこないかな。

 彼女達がこの街に来てから、物凄く稼ぎが良くなってしまった。

 もっともっと仲良くなって、また同行させてくれるくらい仲良しにならなければ。


 ※※※


「本日は~なんか買い取り金も凄そうなので~……前祝いをします!」


「イエェェ!」


 宿に戻ってそう発表してみれば、トトンは喜びのあまり変な踊りを踊っていた。

 でも、たまには良いよね?

 仲間を労う為にも、ここ最近の疲れを吹っ飛ばす為にも。

 そして異世界の食の調査って意味もあるけど、今日だけは難しい事は考えない!

 美味しい物を、いっぱい食べます!

 あとやっと落ち着けたので、武器とか服とか装備とか色々買います!

 前回姫様からいっぱい報酬も貰ったし、いいよね!?


「しかし、前祝いと言っても……どうする? 俺達はこの街に詳しくないぞ」


 イズがもっともらしい発言をするが、フッフッフ……この俺がそんな事を予想していないと思ったかね?


「適当な食事処に入るってのも、当たり外れ大きそうだしね。どうするの? 異世界だから、俺達の予想もしてない食べ物とか出て来るかもしれないよ? 虫とか出て来たら……俺、食べられないかも」


 不安そうな様子を見せるダイラ。

 しかしご安心なされよ、俺がテンションだけでモノを言うかと思えば大間違いだぜ。

 幹事の経験など、腐る程してきた社会人なのだから!


「いでよ! リーンさん達!」


 俺達の部屋の扉を勢いよく開ければ、既に廊下に待機してくれていたらしいリーンさんとゴッツイ双子ちゃんズが手を振っていた。

 しかし、ミラさんの姿が無い。

 別件の仕事、とか言っていたが……まぁアレだろ、俺等に対しての観察任務の報告だろうな。

 とはいえ彼女の性格からして、悪い報告はしない筈。

 というのと、今回の仕事は本当に何もしていないからな。

 報告する程の内容すらない筈だ。


「現地の事が分からないのなら、分かる人に聞けば良いじゃない! 作戦!」


「「おぉ~」」


 トトンとダイラは拍手で返してくれたが、イズに関してはアハハッと苦笑いを浮かべていた。

 仕方ないじゃんよー、俺だって美味しい食事処とか調べてる暇無かったし。

 この方が早いだろー? 皆この街に来てからずっと一緒なんだから、面子が増えるくらい良いだろー?

 そんな事を思いながら、デデンと効果音が付きそうな勢いでゲスト達に掌を向けてみれば。


「皆さんが来てから、凄い稼ぎになっていますからね! ちょっとお高くても、凄く美味しい所を紹介しますよ!」


「でも、堅苦しくない所。騒げるところ」


「お酒も食事も美味しい店、いっぱい紹介する。好みとかあったら、教えて。全部要望に応えるから」


 元気な声を上げるリーンさんに、フンスッと力強い拳を握る双子ちゃんズ。

 絵面が凄い事になっているが、今となっては慣れてしまった。


「とりあえずミラさんが帰って来たら出発するから、お前等準備――」


「あら、それならタイミングが良かったかしら? お待たせしました、最後の案内役も登場ですよ」


 そんな事をやっていれば、お仕事が終わったミラさんも登場したではないか。


「では、改めて……宴ジャァァ!」


「「うぉぉぉぉ!」」


 ※※※


 宴、だった筈だったのですが。

 今俺達は、滅茶苦茶静かなレストランに来ていた。

 一発目に関しては、ミラさんのお勧めで。


「アプラトノスのステーキになります、此方のソースを付けてお召し上がりください」


「アッ、ハイッ……」


 ものっ凄く小さい声で返事を返してみれば、給仕の方……というか執事みたいな恰好の人が下がって行った。

 アプラトノスって言ったらアレだ、ゲームでも出て来た大型の食材モンスターだ。

 某狩りゲーに出て来る様な、飯要員以外存在価値の無い子なのだが。

 アイツもこの世界に居るのか。

 というのは良いとして。


「アノッ、ミラさん……これは、どうやって食べれば……」


「クウリさん、そんなに緊張せずに。ココはそこまでテーブルマナーに煩い店ではないですから。先程も言った通り、外側からシルバーを使えば良いだけです」


「アッ、ハイ……」


 な、慣れない。

 前菜だのなんだの、滅茶苦茶お洒落な料理が出て来たし。

 こういうお店、リアルでも行った事無いし。

 何かもう雰囲気に圧倒されて、何喰ってるのかさえ分からないんだが。

 それはトトンとイズも同じだったようで。

 今はドレスを着ている訳でもないのにちびっ子は大人しいし、イズに関しては何度も「箸が欲しいな……コレ」とか呟いている。

 やはりみんな、こう言う席には慣れていないのかと思っていたが。


「おぉ、アプラトノスってこういう味なんだ。皆も食べてみなよ、凄く柔らかいのに噛むと味がジュワァッって溢れて来る感じ。美味しいよ?」


 皆が固い動きをしているなか、ダイラだけは随分と自然体で食事を続けていた。

 そういえばコイツ、姫様と茶会をしている時も俺等程場に緊張した様子は無かったな。

 もしかしてリアルでも金持ちというか、良い育ちだったのだろうか?

 普段からは全く想像出来ないけど、今のダイラは凄く頼もしく見える。

 貴族との付き合いとか無理! とか言っていたのに、やるじゃないか。

 よし、コイツの動きを真似して食えば良いんだな?

 そう思って、ダイラの動きを完コピしようとしたのだが。

 キョロキョロしながら食事を続けていけば、カチャカチャと音を立ててしまう訳で。

 余計に周囲からの視線を集めてしまう結果になってしまった。


「あの、クウリ? 別に飲み物を飲むタイミングまで真似しなくて良いんだよ? それから本当に、マナーに関しては厳しくないみたいだから……好きに食べて平気だと思うよ?」


 物凄くバレていた、なんか恥ずかしいぞ。


「うっまい、すげぇ柔らかい。けど俺はもう少し噛み応えあった方が好きだなぁ、ガブガブって食いたい」


 もはやテーブルマナーは諦めたのか、運ばれて来たステーキに齧りついているトトン。

 コイツ程の思い切りが良ければ、どれ程楽だった事か。

 最後にイズの方へと視線を向けてみると。


「どうぞ、イズさん。切り分けました」


「箸も貰いましたから、自由に食べて下さい。ホント、この店は大丈夫ですから」


「すまない……助かる。どうしてもこういう空気には慣れなくて……和食なら何とかなるんだが」


 ミルキーとシーシャから手厚い介護を受けていた。

 そして、満足そうな笑みを浮かべながら箸でステーキを食べ始める。

 あの二人、慣れると本当にフレンドリーだな。

 最初にあった頃、ムスッとしながら此方を見下ろしていたのが嘘みたいだ。

 あの見た目で、口調も滅茶苦茶丁寧だし。


「あの、クウリさん。何か分からなかったらすぐ聞いて下さい。私で良ければ、教えますから」


「ありがとう、リーンさん……ホント、助かります」


 隣に座るリーンさんに、そんな声を掛けられてしまう中身男性社会人の俺。

 情けねぇ……。

 というか、この人達こういう店に慣れてるのね。

 ちょっと意外。

 冒険者と言ったら、もっとガッと喰ってガッと飲む、みたいな店に行くものとばかり思っていたのだが。


「二件目は、もっと荒っぽい所というか。ホントに酒場って所ですから」


「いやぁ、うん。助かります」


 この店は彼女達の奢りらしく、私達に出来る最上のおもてなしを! との事だったが。

 俺には、なかなかハードルが高いよ。



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