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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
9章

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第227話 招待するのは、世界じゃない


「やぁ、久し振りだね」


 瞼を開ければ、目の前にはスーツの男。

 いつも通りの夢、そして見慣れた“ゲームマスター”が机を挟んで正面に座っている光景。


「どうなった!? 上手くいったのか!?」


 思わず席を立ちあがり、身を乗り出しながらも声を荒げてみれば。

 彼は小さく笑いながら、いつも通り此方に珈琲を勧めて来た。


「さぁ……どうかな。それは、“皆次第”だ」


「え?」


 不思議な言葉を言い放った彼がニコリと微笑むと同時に、目の前にはシステムウインドが表示された。


「私が出来るのは、ユートピアオンラインに影響を与える事。つまりそちらの世界のベースの部分。君が仲間達をあの地へ“招待”したストーリーは作れても、結果までは確定していない。あの世界は既に“本物”と化した、だからこそ全て私が完全支配出来る訳では無い。ここまでは、分かるね?」


「あ、あぁ……」


 目の前の男……トレックはこの世界の創造主。

 けどこの世界はベースを参考にしただけで、彼がこの世界の神様という訳では無い。

 全ての決定は更に“上”に委ねられると言っても良い、中間管理職みたいなもの。

 それは、理解しているのだが……。


「状況を整え、世界は変化を望み、その条件にあった人物を厳選する。そしてその条件に、おそらく君の仲間達なら“弾かれる”という事は無いのだろう。だが……前にも言った通り、世界というのは“意外と適当”なんだよ。失敗すれば次を探せば良い、上手くいったのなら今度は別で試してみれば良い。そもそも思考を持っているのかすら分からないが、結果を見る限りその方向性が強い」


 では、どうすれば良いのか。

 こんな所まで来て、結局放置されるのか?

 本気で運頼みしか出来る事が無くて、今のアイツ等が“無かった事”にされた場合は、仕方ないって済ませるしか無いのか?

 そんなの、認められるはずがない。

 誰に何と言われようと、俺は認めない。

 俺が作り出した“何か”だったとしても、転生者ってヤツとはちょっと違ったとしても。

 アイツ等は……そこに居たのだから。


「だから、君にも協力して欲しい。道筋は整え、世界の神様という奴は傍観する姿勢なら……まだまだ、可能性は捨てきれない。君は“あの時”……ユートピアオンラインがサービス終了を告げる間近。いったい何を思った? いったい何を口にした? 世界に対して、どんな言葉を放った?」


「ゲームが、終わる……その瞬間?」


 確かあの時は、何かもう呆然としていて。

 ずっと遊んで来た、というかマジで人生を掛けるレベルで、空いた時間は全て注ぎ込んだ程のネットゲーム。

 すげぇ自由度高いし、プレイヤーも多いし、この先もずっと続くのだろうって思っていたのに。

 急に発表された、サービス終了の告知。

 俺が一番楽しいって思っていた世界が、終わった気がした。

 こんなのオンラインゲームだから仕方ないねって、知らない誰かに笑われた気がしたのだ。

 けど、俺にとっては違う。

 あのヴァーチャルの世界で、俺は“たった一人”になったのだ。

 現実世界ではあっちもこっちも走り回って、笑顔を貼り付けてペコペコ頭下げて。

 言いたくも無い事を言いながら、売りたくも無い自社商品の為に営業して。

 立場が上がっても、給料も大して増えない。

 でも結果が増えれば、仕事量が倍増していく。

 それでも全部やれって、大人なんだからって我慢して生きて来て。

 その鬱憤を全て、あのゲームの中で発散して来たのだ。

 ただ一人になれ、という事は。

 全て自分の責任だという事。

 俺のやった事は全部俺の責任で、放った言葉は全部俺に返って来て。

 これだけ聞くと、すげぇ窮屈そうに聞こえるけど。

 けど……それで良いんだ。

 “それだけで良いんだ”って開放感があったのは確か。

 気の合うヤツと仲良くするのも良し、性格悪い奴と喧嘩するのも良し。

 でもそこはゲームの世界で、現実世界じゃ絶対出来ない様な事も出来る世界。

 目には目を、歯には歯をってスタンスだって可能だし。

 例えPVPでやりあった相手でも、街中で見つければ声を掛けたって良い。

 てめぇこの前はよくもやりやがったな! なんて言われても。

 ゲームルールに則った戦闘であるのなら、相手だってそれは承知の上。

 だからこそ、仕方ねぇなぁ~今回だけだぞ? なんて言ってドロップ品を返してやれば、意外とソイツとも仲良くなったりする訳で。

 皆、自由だったのだ。

 明確なルールの他に、誰しも自分のルールを持っている世界。

 それをキッチリと表現出来て、それぞれ違うのが当たり前の世界。

 だから仲良くなれば、どこまでも気軽に話すし。

 誰だれはあぁしたこうしたなんて噂が流されれば、すぐに悪評も広がったりもするが。

 その全てが、“自分で見て判断する”事を強要される世界だったのだ。

 流される事無く、自らで考えろ。

 従うのではなく、自らで決めろ。

 そんな当たり前の事を、自然とやらざるを得ない世界。

 だからこそ誰しもが、生き生きしている様に見えた。

 プレイヤーの数だけストーリーがあり、他人と関われば世界が広がる。

 いくら探求しても終わらない“楽園”だったからこそ、俺は。


「“俺はまだ、やり切ってない”」


「そう、その通りだ。君はあの瞬間、世界に対して“残る事”の意思表明をした。友人達と愚痴る訳でもなく、誰にも聞こえない様な声を零す訳でもなく。“世界に対して”宣言したんだ。俺のストーリーはまだ終わってないから、勝手に終わらせるなってね」


 今思えば、とんでもなく我儘な意見だ。

 ゲームであり、管理者が居る以上。

 俺の意見なんぞ、はっきり言って知った事ではないのだろう。

 でも俺にとっては、本当に心から望む“願い”だったのだ。

 お願いだから、終わらせないでくれ。

 この世界に居た“クウリ”というキャラクターは、まだその先を望んでいる。

 もっと先を見たい、あっちもこっちも欲しい。

 これからもずっと、ここに居る一人として歩んでいきたい。

 そんな“我儘”を、世界が見つけた。

 俺というプレイヤーの声を、多くの人の声に紛れる小さな呟きを。

 この世界が、拾い上げた。


「だから、今度は君が“導く”番だ。私の言葉や、世界そのもののストーリーでは……きっと“皆”は応えない。君の様に、求めてくれない。皆、諦めるという事を知っているからね。だから……君が、声を掛けてくれないか?」


「……え?」


「君だよ、クウリ。魔王と呼ばれた、数多くの功績を残したプレイヤー。レイドでもPVPでも、更には様々な個人スコアでも名を残して来た……“魔王クウリ”。でも君の周りには、いつだって仲間が居た。他の皆が求めていたのは世界じゃない、“繋がり”なんだ。彼等彼女等が求めたのはユートピアオンラインではなく、“君自身”なんだよ。なら……君の声なら、きっと届く」


 彼の言葉と共に、システムメニューが勝手に動き出し。

 俺の目の前には、いくつもの別ウィンドウ開いて行く。

 それは……メッセージ付きの、“パーティ招待”。


「我儘になれ、魔王。悪役っていうのは、そういうものだろう? 皆を巻き込んで、それでも全員率いて。そして高笑いを浮かべる、最強の代名詞。そんな君の元に、皆は集まったんだ。君の我儘を、皆も待っているんじゃないか? なら……“招待”してやれば良い。次のステージだ、俺に付き合ってくれって。そうすればきっと……あの三人なら、応えてくれる筈だ。その為の世界を、“向こう側”にも影響するであろう過去を。この私が、ゲームマスターが整えた。だから後は……君次第だ、クウリ」


 俺、次第。

 このメッセージを送り、“向こう側”のアイツ等がどう反応するか。

 しかも相手が話している雰囲気からするに、多分“終わり際”に送る言葉という事で良いのだろう。

 ずっと一緒に遊んで来た、ユートピアオンラインというゲームの終了間近。

 あのタイミングで送る、現実世界を生きるアイツ等に届ける、“クウリ”としての最後の言葉。

 ハ、ハハッ……こりゃまた、責任重大な事で。

 なんて思いながらも、スラスラと指は動いた。

 文章を入力し、すぐさま送信準備は完了。

 けど、その前に。


「もう一個だけ、我儘言って良い?」


「あぁ、もちろんだ。なんだい?」


 全面的に俺に協力するっていう、前の約束が利いているのか。

 相手は内容を聞く前から、微笑を浮かべつつ頷いて見せた。

 だったら。


「もう一人、メッセージを送りたいヤツが居るんだよね」


「ほぉ? 他にも皆程、仲の良いプレイヤーが居たのかな?」


 不思議そうに首を傾げる相手に対し、こっちはニッと口元を吊り上げた。

 コレが“向こう側”と関わる最後の機会って話なら……後悔が残らない様に、ちょっと余分な事も一緒に済ませておきますかね。


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