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自キャラ転生! 強アバターは生き辛い。~極振りパーティ異世界放浪記~  作者: くろぬか
9章

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第228話 update


 とても長い時間を費やして、やり込んだオンラインゲームがあった。

 “ユートピアオンライン”という、あまり目立つ名前ではなかったが。

 それでも「どんな自分にもなれる」という振れ込みに嘘はなく、出来る事の幅が非常に広い。

 この魅力に取りつかれた多くの人々で賑わっていた、あり得ない程世界に影響を及ぼしたネットゲーム。

 普通処理落ちどころか、サーバー負担ヤバイでしょって程にスキルツリーも膨大。

 プレイヤーの方向性によって、同じ職分でも全く別の個性が出て来る。

 本当に“ただ一人のプレイヤー”になれる上、レベル以外に上限と呼べるモノがない様なゲームだった。

 そんな世界に魅了された男が一人、世界の終わりを前にして呆然と立ち尽くし。

 無駄な抵抗だと分かっていながらも、オープンチャットで世界に向けて言葉を放ったんだ。


「“俺はまだ、やり切ってない”」


 滅茶苦茶恥ずかしいヤツだ。

 普通に考えれば、他のプレイヤーみたいに激励のメッセージや。

 これまで課金した分どうしてくれるんだー! って叫んだりすれば良いのに。

 一人だけ声に出して、この期に及んで“続き”を求めたプレイヤー。

 そんな奴に対して、返事を送ってやる。


「“まだ、続く。終わらない”」


 そう、終わらないのだ。

 むしろ、これからが本番なのだ。

 クウリというプレイヤーの物語、ユートピアオンラインの本当の姿。

 それを、嫌という程経験する事になる。

 けどこの言葉を発している時の俺には、全然想像出来ていなかった。

 当たり前だよな、異世界転生なんてアニメみたいな事が起こる訳が無い。

 というか、実際に発生するのは“向こう側の俺”に起きる変化ではないのだから。

 きっとこのまま何も起こらず、このゲームが終わった事を嘆きながら、酒でも飲むのだろう。

 明日から何を生き甲斐にすりゃ良いんだって、情けなく愚痴りながら、この世界で経験した多くの事を思い出すのだろう。

 けど、それが現実なんだよ。

 不思議な事など起こらない、いくらつまらないと嘆いた所で、刺激の少ない日常が続いて行く世界。

 でもそれがどれ程幸せな事なのか、ただの社会人だった俺には、いくら言っても理解なんか出来ないのかもしれないが。

 けど間違いなく、“変化”は既に起こっているのだ。


「“大丈夫、待っている”」


 仲間達が、皆で。

 “こっち側”では、みんなと一緒に大冒険が始まるんだ。

 “そっち側”では、みんながスマホ片手に、俺からの連絡を待っているのだ。

 だったら嘆いてないで、さっさとアイツ等に声を掛けてやってくれ。

 オフ会なんかしたら、多分驚くどころじゃないだろうけど。

 けどもまぁ、きっかけさえあれば。

 俺達なら、何とかなりそうな気はするので。


「早く、迎えにいってやれ」


 その言葉を最後に、“自分自身”へのメッセージは終わりにするのであった。


 ※※※


「……ふぅ」


「お疲れ様、どうだった?」


 件のオブジェから手を放せば、すぐさまエレーヌに声を掛けられた。

 チラッと周囲へと視線を向けてみると、仲間達三人はまだ……目を閉じたまま、完全に固まっているが。

 俺のメッセージが届き、“向こう側”の皆が“招待”を受け取ってくれさえすれば……どうにかなる、かもしれない。

 だからこそ、あとは祈る他無い。

 世界そのもののシステムに割り込み、そしてズルをしている様な状態なのだ。

 これ以上、俺やトレックに出来る事っていうのも無いのだろう。


「あとはコイツ等次第、で良い筈だ。何となるさ、多分な」


「そう……随分とぼんやりした答えだけど、まぁ致し方ないわね」


 そんな事を言ってから、エレーヌも少しだけ微笑んで見せる。

 あとはコイツ等の帰りを大人しく待っていれば良いだけ――

 なんて、のんびりする事は許されないらしく。


「魔王、配下達は何も言って来ないのかい? 一応外を“霧”で包んでおいたままだからね、多少はこっちにも情報が入って来るが……あまり、良くない状況みたいだよ?」


 キューブには触れず、俺達の帰りを待っていたらしいシュウが、あまり嬉しくない報告を上げてくれた。

 はぁぁ……まったく。

 どうしてこう、この世界はいちいち忙しくしてくれるかね。

 このイベントを挟む前にエレーヌが言っていた、“ラスボス”とやらが現れたって事なのだろう。

 はてさて、どんな姿をしているのやら。

 とはいえ今この場で出現しなかっただけ、ありがたいと思うしかないか。

 まだ仲間達には時間が必要なのだ。

 つまり、少なくともこっちの用事が終わるまで“北の門”を破壊する事は不可能。

 しかしながら、この建物内部へと入って来るかもしれない相手を放っておく訳にもいかない。

 もっと言うのなら、相手は“外”から来ているらしいので。


「ったく、忙しい限りだな。わりぃけど、二人は俺に付き合ってくれよ」


 そう声を上げて杖を担ぎ、今この場で戦える二人に対してニッと口元を吊り上げた。

 俺の極振りステータスでは、仲間達が居ないとクソ雑魚も良い所だ。

 けど、共に戦ってくれるのは……この世界の、魔女と黄龍。

 なら、“時間稼ぎ”くらいはどうにかなる筈だ。

 仲間達が俺の元へ駆け付けてくれるまで、ラスボスとやらを押し留める。

 時間を稼ぎ、皆が戻って来てくれるまでひたすら耐える。

 それくらいなら、どうにかなるってもんだろう。


「えぇ、もちろん。行きましょうか」


 もう棺桶を背負わなくなった魔女に関しては、随分と身軽な状態で御自慢の魔剣を抜き放ち。


「あれだけ大規模戦力を残して来たのに、えらく苦戦している様だからねぇ。君の配下にも、少しばかり喝を入れてあげようじゃないか」


 クククッと楽しそうに笑う黄龍も、筆を指先で回しながら俺達の隣に並んだ。

 さて、行こうか。

 随分とあっさりと俺の用事だけは済んでしまったが、今だけはまだこの施設を守らないといけないので。

 都合の良い所だけ全部使わせてもらって、その後は跡形も無く消し飛ばしてやらねぇとな。

 そんな訳で。


「んじゃ、ちと下準備でもしますかね。“ステータス”」


 相も変わらず視界に映る半透明のソレに声を掛ければ、俺が今必要としているウィンドウが勝手に表示されていく。

 ステの基本情報と……俺の作り上げたスキルツリー。

 これ等を表示した所で、ポンッと音を立てながらポップアップ通知が。

 そこには。


『レベルキャップ解放、最大レベルの上限が解除されました』


『スキルツリーに、新たな項目が追加されました』


『新たな称号、“魔王”を取得しました』


 これらの通知に、思わず牙を見せる程口元が吊り上がる。

 さぁ、やろうか。

 こっからは、本気の“魔王ロールプレイ”だ。

 この世界を作ったゲームマスターが用意してくれた、俺達が“特別”であり続ける為の戦争。

 アイツの作ったエピックストーリーをクリアした事により、与えられた特別報酬とも言える項目の数々。

 元々各種ポイントはカンストしていた上に、“こっち側”の世界を旅した事で上限を超え、余計に数字だけは有り余っているのだ。

 今までは無駄でしかなかったただの数字が、ここに来て思い切り“ボーナス”へと変化した瞬間であった。


「ククッ、こりゃまた楽しみが増えったもんだ。なかなかどうして、面白くなって来たじゃねぇか」


「随分と悪い顔ね? 魔王。まぁ、いつもの事だけど」


「ハッハッハ、ここに来てまた新たな“進化”を遂げるのかい? やはり人間というのは、実に面白いねぇ」


 三人揃って軽い言葉を零しながらも、再び“外”へ向かって足を向ける。

 さて、始めようか。

 今後も皆でこの世界を旅する為に、“俺達のまま”生きて行く為に。

 まずは、ラスボスに御挨拶といこうじゃないの。


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