02.【何も知らないくせに】
新歴3011年4月7日『α太陽系銀河間星屑漂着帯』。
そこに『Alice』という宇宙戦艦で潜んでいた私たちは地球の艦体が近くを通っていた所を目撃。
7年もの間続く戦争を終わらせるために父の残した機体『グレイヴコネクト』を駆り、攻撃を開始した。
「ハァ…ハァ…」
コロニーの残骸や隕石のなり損ないたちが漂着し、輪のように流れるこの一帯は私たちのような非国営組織が身を潜めるのに適しており、対して国営組織の軍隊や公式の商船はリスクを鑑みて通ることはほとんどない。
だがたまに、今の状況のように軍隊がこの周辺へ来ることがある。
それは自分たちの国に仇なす可能性のある組織を摘発し、家宅捜索や逮捕といった手段を取るに値する証拠を集めるためだ。
故にここに近づく軍船にはその軍のエリートが必ず2人以上は乗っており、その内の1名以上は隠密行動を得意とするパイロットである。
だから本来は近づいていることに気づいた瞬間にはこの一帯から脱出しなければならず、絶対に見つかっては行けない。
が、あそこまで近づかれている場合に逃げを選択するのはご法度だ。追跡され拠点がバレる可能性が出てくるからだ。
その場合は反抗して追い返し、その隙に逃げるのが最適解である…とかつて習った。
「…?ッ!」
コロニーの残骸の裏にグレイヴコネクトが隠れるようへばりつき、しばらく軍船の方を見ていると3時の方角からビームが飛んできた。
すぐに残骸を盾にするように、ビームに当て後ろに離脱する。
その隙に背中後ろに携行していたビームライフルを取り、スコープからアイカメラでビームの飛んできた方角に照準を合わせた。
「敵は…1機か?」
確認できたのは太陽系惑星『地球』の最新量産機『ピースメイカー』、機動力が売りとされている戦闘人機だ。
確か武装はビームガンとオプションで付けれるスコープ、太もも付近に近距離用ナイフと中距離用のカタナ。
そして両肩に備え付けられているのが2連ホーミングミサイル、厄介なのはミサイルだな。
「『結合』システム起動、能力解放:1」
ミサイルに対応しようと、私は現在この機体にのみ搭載されている結合システムを起動させることにした。
結合システム、それは事前にグレイヴの胸元にある専用の魔力供給器官にマナニウムを貯め、そのマナニウムを魔力に変換することで宇宙空間でも機体を通じて魔術を行使することを可能とするシステム。
これは両親が死ぬ直前に作り上げ、今私が所属している組織の長官にして父の親友・オルバに預けていた、私に残された家族の形見のようなものだ。
そんなシステムを作動させるべく、操縦台の中央に設置されている操作パネルを開き、手馴れた手つきで結合システム発動のための手順を終える。
すると操作パネルの中央に『Connect system code:G-rêve Prototype. Online』という文字が浮かび上がった。
「行くよグレイヴ!」
私はグレイヴで魔術を行使するために魔術変換機構が搭載されている右手の裏を敵機の方へ向ける。
そして操縦台の右側に設置されているレバーを前へ押し出し、魔術行使を行った。
手の裏の中央に集まった、魔術によって生み出された青白い光が敵機の方へ線を描きながら飛んでいく。
敵機はすぐに回避行動をとったが間に合わなかったのか、左肩から腕ごと吹き飛んだ。
機動力を売りにしているからか、その勢いに耐えるほどの重量はなかったらしく、敵機は右に漂っていた隕石にぶつかる。
私はそこを見逃さず、すぐさま太ももから近距離ナイフを取り出しトドメを刺しに行く。
敵機はナイフを右肩に受けながらも回避行動をとっており、間一髪助かったらしい。
「なんだこの機体…!」
敵機はオープン回線にしているのか、そんな独り言が通信に入った。
「…」
恐らく敵のミスとはいえ、こちらだけ一方に相手の通信を聞くのはフェアじゃない、と思った私は通信回線をオープンにする。
「…こちらは中立平和維持組織『シエル』所属、アルテである。そこのピースメイカー乗り、今すぐ貴方と貴方の所属する軍船をこの一帯から撤退させよ。さもなければこの星屑たちのようになってもらう」
敵機のパイロットはその言葉にしばらく沈黙を続けたあと、口を開いた。
「貴方か、この空域で軍船を襲っているのは」
「…ああ」
「なら何故、なりふり構わず襲う!答えろ!」
「…何故軍の人間に答えないといけない?」
地球人が7年前、私たちの住む惑星相手に引いた戦争の引き金が頭の中にフラッシュバックする。
家族と喧嘩別れしてしまった後悔と、あの場にいなかった安堵とが私を包んだあの日々のことを思い出す。
「何も、知らないくせに…」
私はそう呟くと同時にもう片方のナイフを引き抜き敵機へと突っ込むが避けられる。
「逃げるな…ッ!野蛮な地球人がァッ!!」
我武者羅に振ったナイフが敵機の右腕を切り落とす。
敵機は両腕をやられ、これ以上の継戦は不可能と判断したのか船へと戻って行った。
「ハァ…ハァ…」
その後あの軍船はこの空域から去り、私は自分の所属する戦艦へと戻っていった。




