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あべこべ世界でも純愛したい  作者: ひらめき
第二章〈トラウマ克服に向けて〉
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欲しがりな二人

「霞さん!素敵ですね!」


 私は二人の間に入って笑顔を向ける。写真はもう撮ったのだろうか、不木崎も満足そうにその場から離れる。私とも撮れ。


「そ、そうかな……?私みたいな歳の女でも大丈夫かな…?」

「い、いやぁ、正直霞さんって年齢私たちと変わらない位に見えますから、そんな恥ずかしがらなくてもいいかと思いますよ」

「も、もう!春ちゃん上手!」


 全力で照れながら霞さんがバシバシと私の背中を叩く。素肌だからちょっと痛い。

 一方、不木崎はあまりの可愛さに直視できなくなったのか、目頭を押さえていた。


 霞さんもそうだが、不木崎も霞さんのことになると、本当にポンコツになる。私のときもなれ。



 皆で川まで移動して、椿が真っ先に飛び込む。


「つめたーい!!」


 はしゃいでる姿は年相応でほっこりするが、不木崎においでーと両手を突き出してハグを求めているのは頂けない。寝る前にくすぐりの刑に処す。


「うわ、マジだ!気持ちいいな…!」

 

 不木崎も飛び込んで泳いでいる。全身にシャツが張り付いていてエロすぎる。グラビアの撮影現場と言ってもおかしくない。

 他のキャンプ客から遠い位置を選んだのに、心なしか近づいてきている気がする。

 あの胸の両端にぽつっとしたのは絶対にアレだ。ニップレスはやはりつけていないのだろう。というかつけてないのを直で確認済みである。

 ラッシュガードを着ずに泳ぐとか頭おかしいんじゃないの…?


「霞さん、ふっきーって何であんなに無防備なんですか?」

「……私もそれ最近すごく悩んでるの。何度言ってもわかってくれなくて……か、返り討ちにあっちゃうし」

「ああ……さっきみたいに」

「……はい」


 二人して不木崎を見る。楽しそうに椿と水を掛け合っている姿は可愛いのにエロいという気が狂いそうな光景だ。椿は不木崎に抱き着こうと画策しているのか、背後に回ろうと不木崎の周りをぐるぐる泳いでいる。


「ちょっとふっきー!背中に抱き着けないじゃん!私あんまり泳げないんだから溺れたらどうするの!」

「いや、今まさにめっちゃ綺麗なフォームでクロールしているじゃん。なんだったら魚みたいに俺の周り泳いでるじゃん!」

「いいから黙って後ろむけー!」

「させるかエロガキが!」


 すっごく楽しそうである。


「い、いいよ春ちゃん。行っておいで。私泳げないから浅瀬にいるし」

「ダメです。私も泳ぐの苦手なんで一緒に遊びましょ?」


 何となくだが、私もあまり泳ぎが得意ではないためか、シンパシーで伝わった。

 照れるように頷いた霞さんの手を引いて足に水をつける。

 ひやっとした気持ちいい感覚が足先から全身に伝わり少しだけ震える。


 隣を見ると、霞さんも目をギュッとつむって震えていた。キスをされても文句を言えない顔である。

 やはり不木崎のお母さんはエッチだ。女の私でもいけそうだ。顔は不木崎に似ているのだから可愛くないわけがない。いや、逆か。


 しばらく水に慣れようと手を付けたりしていると、


「つめたっ!」


 体に水がかかる。突然来た冷たさに、思わず身をよじった。

 どうせ椿あたりだろう、と犯人を捜すと、


「あ、ご、ごめんね。やって……みたくて……」


 霞さんが真っ赤な顔でこちらを見ていた。

 え……何この人……めちゃくちゃ可愛くない!?抱き着いて今すぐテントに持ち帰りしたいんだけど…?

 いつもこんな感じなんだったら、不木崎が霞さんに意地悪をする理由がわかる。これはされるほうも悪い。こんな可愛いことするからいじめられるのだ。


「……戦争を仕掛けてきたのはそちら側ですからね?」

「せ、戦争?……は、春ちゃん!?なんか顔怖い!ごめん!さっきのごめん!……つめっ!!!!!」


 逃げようとする霞さんに容赦なく水をかける。

 霞さんはあまりの冷たさにその場にうずくまる。車内の話から武芸者として強いらしいが、今ではされるがままの赤子である。そのギャップも犯罪的だ。

 ふふふ、その選択肢は悪手ですよ……。というか嗜虐心がくすぐられるからあまりそういう可愛いムーブはしないほうがいいですよ…。


「ほーら、背中に水流しますよー」

「ひゃぁああ!」


 ゆっくりと真っ白な小さい背中に水をかける。

 面白いくらいに震えて、その拍子に手のひらを川のつけてさらに冷たいという二次災害まで引き起こしている。可愛いの大渋滞だ。


「さてさて~背中は終わりましたから、次は前の方を――――つめたっ!!!!!!」


 両手に水を掬って恐怖に怯えている霞さんの胸に水をかけようとすると、2方向から大量の水を浴びせられる。


 振り向くと、左右ににやにやと笑っている不木崎と椿が腰に手を当てていた。



「あれぇ?ふっきー、お姉ちゃんがいじめられる側からいじめる側へ回ろうとしてるよ?これって良くないよね~?」

「ああ、椿ちゃん。自分の身の丈を理解せずにいじめをするなんて許されないよな。しかも母さんに水をかけるなんて、俺もしたいのに」


 二人は芝居臭い口調で言い放ち、お互いの顔を見る。


「「これは…わからせてあげないと!」」


 逃げろ、と頭ではわかっているのだが、体が全く動かなかった。

 まるで不木崎からの意地悪を心待ちにしていたかのように、体は微動だにしない。今日一日小さい意地悪を重ねられて、体はもうどうしようもなく求めてしまっている。

 全身の細胞が興奮で沸き立つ。一瞬で鳥肌が出て、そのくせ気持ち悪さよりも先に快感が全身を包み込む。

 心臓が一瞬でフルスロットルになり、吐いた吐息は夏にも関わらず白息となる。


 後ろにいる霞さんも、あわわわわ、と慌てている様子だったが、その顔は期待に満ちており、360度虐めてください、と言っているような表情だった。


 きっと、私も今こんな表情をしてしまっているのだろうか。だとしたら、私も悪いじゃないか。こんなひな鳥みたいに欲しがってしまってるのなら、される方も悪いに決まっている。


「……あっ」


 私の目の前には笑顔の二人と大量の水が迫っていた。


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