入学
「・・ヤ・・・ウヤ・・・トウヤ。」
「ん・・おはよう。カエデ。」
今日はトウヤとカエデが貴族学院に入学する日である。
二人は日が昇る少し前に目覚め、入学式へと臨む準備をしていた。
「トウヤ。」
「どうしたの?」
「制服、似合ってますね。制服の白が純黒の御髪と目を映えさせています。」
「ありがとう。カエデはとても可愛いよ。部屋から出さずにずっと愛でていたいくらい。」
「叶えてあげてもいいんですよ?」
「言っといてアレだけど遠慮しなきゃね。将来のためなんだから。回り回って僕やカエデのためになるから。いまは我慢するよ。」
ひとつも否定しないのは無意識なのだろうが、それをも愛しいとおもうカエデもカエデなのだろう。
準備を終わらせ、徒歩で学園へ行く2人。
貴族学院は、学園都市内に住む生徒は一律徒歩登校という校則がある。破った場合には1週間謹慎期間を設けるという罰もある。
二人は手を繋ぎ、他愛もない話をしながら学院へと歩いていった。
「学院の5階が一年の教室だったっけ?」
「ええ、そうだったはずです。同じクラスだといいですね。」
「うん。でも別のクラスでも会いに行っちゃうんだけどね。」
貴族学院は大学と違い、現代の小学校のようにクラス分けされた後ほとんどがその担任によって授業が進められる。
しかし、その担任が力不足と見なされたり、もっと上を持つべきと判断された場合は担任交代が宣告され次の日には別の人が担任・・なんてことが1年に2・3回あったりなかったりする。
クラスは全てで4つに分けられ、Aクラス、Bクラス、Cクラス、Dクラスである。
この審査基準はその年度の最後にある学年末試験の結果と多少の家柄によって決められる。
「うわっ!大きいね!」
「そりゃあ、我が国の重鎮を担う子女令息が集まるのですから。」
会話をしながら校門をくぐるとたくさんの人がいまかいまかと生徒玄関の解放を待っている。
そして、一部に何かと集まっているのが見えた。
「あれなんだろうね?」
「行ってみましょうか。」
二人はその集団の近くへ寄り、その中の一人に理由を聞くと、
「クラス分けが張り出されてるのよ。でも前の人が多すぎて見えないのよね。」
「どうしましょう・・・」
「カエデ、ちょっと見てくるよ。」
「え・・・・ああ。なるほど。たのみました。」
そういうとトウヤは姿を消して、カエデは、
「ありがとうございます。貴女、もし良かったらお友達になりません?」
と彼女に言っていた。
「あれ?見なくていいの?見えないけど。
是非ともよろしくお願いしたいわ!私はミーシャ。ミーシャ・ハリードよ。」
「あら、公爵家の方でしたか。初めまして。カエデと申します。姓の方は事情で名乗れないのですが・・」
「カエデって王女様と同じ名前ね!カエデ様もお綺麗なんでしょうけど、貴女もとっても可愛いわ!気にしないでいいわ!それでさっきの男の子との関係を・・・」
「ふぇ!?なんでそこでトウヤの話が!?婚約者ですが・・・」
「きゃー!!婚約者!いい響きね!」
・・・女が3人集まれば姦しいというが、ミーシャの場合1人でもだいぶ姦しい気がするのは気の所為だろう。
「私なんかこんな性格のせいで貰い手が1人も居ないのよ。もし良かったらさ・・・」
「側室は私じゃなくてトウヤに聞いてください。」
そんなふうにふたりが話していると、
「僕がどうしたの?」
「わっ!?」
トウヤが帰ってきた。
「ただいま。カエデ。」
「おかえりなさい。トウヤ。どうでした?」
カエデはクラスが早く知りたすぎて、トウヤにキスでもするんじゃないかと言うくらいまで顔を近づける。
「か、顔が近いよ?大丈夫だったから。同じクラスだったから。」
「ふぅ〜ん。じゃあミーシャは?」
「ミーシャって?ああ、君?」
「ええ。」
トウヤ以外の胸がバクバクと高鳴る。
「もちろん覚えてるさ。確かね・・・Aクラスだったよ。僕らと同じ、Aクラス。」
「本当!?良かったわ!クラスに馴染めず一人ぼっちなんてことにならなくて。カエデと私は友達なんだから今日からあなたも友達よ!よろしく。私はミーシャ・ハリード。」
こちらも自己紹介を・・・と思ったところでカエデか方をポンポンと叩く。
「(どうしたの?)」
「(私は一応姓を隠していますので、名前だけでお願いします。)」
「(・・・うん。わかったよ。)」
「さっきから呼ばれてるから分かると思うけどトウヤです。カエデの婚約者です。よろしく。」
こうして新たな友達を得て、入学式への1歩を踏み出して行った。
「(そりゃ体育館なんてないよね。でもだからって・・・・コロシアムって!)」
そう、入学式は競技場に椅子を並べて行われるのが貴族学院では伝統である。
解説席であろうところには立派な髭を携えた学院長らしき人物と、鋭い目付きを眼鏡でおおった、the堅物、的な多分生徒会長な人が座っていた。
「今から入学式を始めます。学院長、挨拶。ヴェールバッハ学院長、お願いします。」
ヴェールバッハ学院長とやらがステージにあがる。
「生徒の諸君!まずは本校を選び、学び舎として切磋琢磨する仲間を得られたことに感謝をしよう。本校は、貴族としてのマナーや振る舞い、そしていざと言う時に人を動かし戦う力、自らが前に立って戦う力を得る訓練を主としている!目の前にいる君たちは帝国の将来を担う大切な私たちの宝だ!無論、しては行けないことをすれば叱る!しかし、良いことをすれば褒める!これが我が校のモットーと言っても過言ではない!
我が校の校訓は、『民のために働き、民のために戦え』である!民がいなければ私達は生活が出来ぬと、両親から聞いておるだろう。上に立つものは常になんのために、上に立つのかを考えねばならぬ!立派なそれぞれの領主になれるよう、勉学に励むといい!」
・・・やっぱり校長(学院長)の話は長いんだね。




