僕のヒーローアカゴケミドロ 2
「それはですね~
近々、うちの病院でヒーローショーをすることになったんです。
入院している子供たちのためにね。
で、どうせやるならショーに病院の人も参加しようって事になったんですよ。
それで、この循環器科では私が選ばれたんです」
「尚美さん、ヒーローショーに出るの?
どんな役で?」
「うんと、なんだったかなアカ、アカゴゲ……?」
「アカゴケミドロよ」
言い淀む尚美に蛍が助け船をだした。
「そう、そのアカゴケミドロに拐われる看護師さんです」
「看護師さん……まんまなのね」
「いやー、私、困っちゃって。
ピュアプリンセスは見てたんですけど、ヒーロー物には詳しくなくて。
そしたら蛍さんが詳しいと聞いたので相談したんです。
そしたら、ワザワザ、アカゴケちゃんの出てくる回のDVDを持ってきてくれたんです」
「だからって、私の病室でやらなくても……」
「ほら、ここよ。ここからよ」
蛍が尚美の膝をピシャンと叩き、尚美の注意をDVDに戻す。
* * * * * * * * * *
「やるな、ならば私も本気を出さねばならないようだな」
メガネの男がそう呟くと全身から黒いモヤのようなものに発生する。
「ぐぅあ~~」
咆哮と共にモヤが消し飛び異形の怪物が姿を現した。
* * * * * * * * * *
「なに、この長ネギが赤い服着たような奴」
「コレがアカゴケミドロ。
アオインジャーの宿敵、カルクアルケミストが本性を現した姿よ」
「えっええー、そうだったんですか!」
思わず握りこぶしを作り感心する尚美。
目をキラキラさせながら語る二人を亜美は冷ややかな目で見ていた。どうもこういう特撮物の良さは亜美には理解できなかった。
「でも、アカゴケミドロがショーに出るのって凄いね」
と蛍がしみじみと言う。
「何でですか?」
「このアカゴケミドロ、デザインが先行しすぎてバランスも視界もとんでもなく悪くてね、この着ぐるみ着てアクションできる人は少ないのよ」
「へぇ、そうなんですか。
確かに頭が長過ぎてバランス悪そうですね」
まじまじと画面を見ながら尚美は呟いた。
「この回のスーツアクターがアクション中に転んで首を捻挫した話は有名なのよ」
「うは、私、全然知りませんでした」
そりやー、普通の人は知らないでしょうよ
亜美は心の中で呟いた。
ふと、窓の外を見ると中庭でたくさんの人が立ち働いているのが見えた。
あれがヒーローショーの舞台なのかしらね
亜美は特撮談義に花を咲かしている二人を横にぼんやりと思った。
2018/10/06 初稿
2019/09/14 改行などのルールを統一のため修正
《おまけ》
亜美「なめてるわ」
蛍 「なめてるってなにを?」
亜美「病院で働いている人をよ!
イベントかなにか知らないけど、
お医者さんや看護師さんがヒーローショー
に出る暇があるわけないじゃない。
作者は日本の、いえ、世界の医療従事者
に謝りなさい!」
蛍 「所詮フィクションだからね。
余り固いことは言わないの。
一応、設定では小児科の先生の発案らしいわ
その先生は若い頃は天才ゲーマーとして
有名で、名前が確か、宝生、宝生え……」
亜美「駄目よ。その名前は口にしては駄目。
版権に引っ掛かるから!」
蛍 「ノーコンティニューで……」
亜美「だから!やめんかぁー!」