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環境戦隊ガドガイアー  作者: 黒井羊太
第四話「断固粉砕! 怒れる光月の戦う理由!」
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エピローグ ―迷いの果ての答えー

 数日後、何とか回復して歩けるようになった光月は、オペレーティングルームに長官といた。

「これが今回の報告書です」

「うむ、ご苦労」

 分厚い書類を手渡す。こうした情報の蓄積が、やがて皆を、人々を守る事に繋がっていく。光月は己の使命をよく分かっていた。

「しかし今回の敵は強敵だったな。まさか武をここまで極めた怪人が現れ、光月君をここまで追いつめるとはな……」

 ぱらぱらと報告書を捲りながら、長官が呟く。実際、光月にとってもその点は重大な脅威と感じていた。

「えぇ……私自身、まだまだ修行が足りないと痛感しましたよ。それに……」

「それに?」

 光月は、フ、と小さく笑って、勿体ぶって言葉を続けた。

「それに、久々に悩みましたよ。『力とは何か』。武を目指す人間なら誰もが一度は悩む通過点。改めて突きつけられると、なかなか難しい問いです」

 朗らかに話す様子。長官は、かつて悩んでいた光月の姿を照らし合わせ、その吹っ切れた様子にほっとする。

「そうだったな。いつだったかの君も、私にそう聞いた。

それで、今その答えをちゃんと持てているかね?」

 長官の問いに、光月は少し逡巡して、答えた。



パンッ!と手を打つ音。

「はいっ! 今日の練習はここまで!」

「「ありがとうございましたー!!」」

 子供たちの元気な声が響き渡る。続いて、ドタドタ足音、きゃっきゃとはしゃぐ声が、道場に響き渡る。

 光月はそれを、満足そうに頷きながら見つめる。


 今日も平和に、子供達に武術を教えられる。何と嬉しい事だろう。

 と、一人の子供が光月に駆け寄ってくる。前に強くなりたいと言っていた子だ。

「せんせー! 俺、また強くなっちゃったかな!? クラスのイヤな奴がいるから、ちょっと試してみたいんだ!」

 無邪気に笑う子供。しかし光月は険しい表情、厳しい口調で諭す。

「前にも言いましたが、それはいけません。いつも言っているでしょう?

 力とは、誰かを守る為にある。自分の為に振るってはいけない、他人を守る為に使うのだと。力を持てば、心に余裕ができます。余裕があれば、人に優しくできるんです。

 君もそれができる。必ずできる。分かるかな?」

 子供はう~ん?と首を傾げて答えない。あまりぴんと来ていないようだ。

「もし君が先生の言う事を聞けないなら、先生が君を引っぱたいて言う事を聞かせましょう。先生の事を嫌いと言ったら引っぱたきます。先生の事を好きだと言って、先生の言う事を聞くまで引っぱたきます…… そんな先生、好きですか?」

「……ううん、怖い」

「そうでしょう? 君が友達にやろうとしているのは、そう言う事です。力はやたらに振りかざせば、より強い力を呼び込み、その人を、その人の周囲をも不幸にします。でも力が無ければ、誰からも認められず酷い目に遭わされ続けます。そのどちらにもならない為に、力を付けるのです。分かりましたか?」

 キョトンとした表情を浮かべる子供。ちょっと難しすぎただろうかと光月が内心思っていると、

「うん、何となく分かった! クラスのそいつ、弱い奴をイジめる悪い奴だから、その時だけ戦う! それ以外は絶対手を出さない! 約束!」

 ん!と右の拳を突き出す。光月は、驚き、そして最高の笑顔で拳を合わせた。



「くそ、くそっ! またしても失敗するとは! 紅虎めっ! 役立たずが!」

 ディオナルドは苛ついていた。度重なる失敗、首領がいつまでもお許しになるとは思えない。

 元々紅虎とは馬が合わなかった。自信の塊、力そのもの。力無き者は存在価値無しと斬って捨てる様。とてもイヤな奴だった。

 だから改造手術の折り、嫌がらせをしてやった。何、ちょっとした時間制限を設けてやったんだ。それでもきっと奴は勝ったはずだ。

 だが負けた。まさかガドガイアーにあれを打ち倒す程の力があるとは……!

「ディオナルド」

 低い男の声が響き渡る。今、もっとも聞きたくない声だ。

「しゅ、首領……」

 口の中が乾いていく。緊張、畏怖。ディオナルドの思考は停止寸前であった。

「紅虎が破れたそうだな……」

「は、はい……し、しかし! 奴は新設部隊の壊滅という作戦自体は達成していきました! 戦力の喪失は痛手ですが……つ、次の怪人を現在準備している最中です! 急ぎ対応致しますので、お許しを!」

 どうやったら許されるのか。その事で必死であった。

「……」

沈黙が恐ろしい。

「ガドガイアーはそれ程強いのか?」

「はっ? は、はい! しかし我がカリメアは必ずや! 奴らを打ち破り、野望を叶えて見せましょうぞ!」

「……任せたぞ……」

 首領の声が消える。どっと汗が噴き出す。

 未だ何とか猶予はある。次の作戦、失敗してはいけない。

 ……改造手術を急がねば……

 自然、廊下を歩くディオナルドの足は速くなっていた。

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