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結べない細縄

春第1月第2日、第1鐘。成人医療責任者が三枚の移送票へ同じ時刻を書き入れる横で、レアは初めて息子の右掌を明るい場所で見た。


小指の付け根から親指側へ、縄の圧迫痕が斜めに残っていた。赤い線の周りは白く、昨朝、荷縄を握った形のまま浮いている。


「指を開いて。次は握って」


ミロは五本を伸ばし、医療責任者の指を握った。力は入った。だが、細い診察紐を親指と人差し指でつまむと、右手の二本が小さく揺れた。


揺れが見つかったのは瓶を飲んだ後で、掌には荷縄を握り続けた圧迫痕もある。医療票へ二つの時刻を並べた後、責任者は病名を書こうとした筆を戻した。


移送票には、観察中の悪化なし、条件付き半日移送可、とある。ミロ・ケスト、エナ・フィル、ノア・フィルの三枚。医療責任者は各票の末尾へ、村到着後の次回時刻まで書いた。


覆い付きの患者荷車の乗車札には、医療責任者と助手、三人の子ども、それぞれの家族が記された。東門で集められた箱と商品札は王都側の別二印保管口に積まれ、証拠班がその脇に残った。


レアはミロの隣へ座り、行商箱の代わりに毛布を膝へ載せた。年初市で払った寝床代は二晩分。売上袋は平らで、帰りの食事は固いパンが四切れだった。数え終えるたび、ミロの掌へ目が戻った。


東門を出て最初の石畳では、車輪が継ぎ目ごとに身体を跳ね上げた。ミロは左手で幌紐をつかみ、右手は毛布の下へ置いた。エナは母の肩へ頭を預け、ノアは向かいの車輪音を数えていた。


一刻後、川沿いの平道へ下りると、医療責任者が荷車を止めた。三人の額と呼吸を順に見て、水を少しずつ渡す。エナは水を留めたが、椀を持つ腕をすぐ母へ預けた。ノアは自分で地面へ降り、道端の石を見ながら二歩進み、また荷台へ上がった。


正午前、低い橋で対向する粉荷を待った。濡れた手すりの向こうに、リム枝村の裸木が見える。橋端で細紐が揺れる間、ミロの右手は毛布の下にあった。荷の緩みを見つけてレアより先に結ぶ、昨日までの手だった。


半日の道を終え、患者荷車が村の仮設診察室へ着いた。助手が三人の移送票を先に運び、家族は自分の子を連れて別々の椅子へ座った。


ミロの診察で、医療責任者は昨朝から口にしたものを時刻順に聞いた。水、薄い粥、青い瓶。その列を閉じてから、家や荷置きに同じ品があるかを一度尋ねた。


レアの舌が上顎へ貼りついた。


床下には、年始市へ出る前から残した外袋がある。全部持っていけば宿代を取り戻せると思い、村で売る分を置いてきた。残り八本。そのうち一本でも売れば、帰り道の借りを返せた。


「家の床下にあります。市へ出る前から、袋ごと。八本です」


医療責任者の筆は、治療票の余白へ移った。留置場所と、出立前からという言葉を書き、その下へ診察所見を続けた。


「次の診察は第4日、第2鐘。今夜、吐く、また眩む、指の力が落ちる、そのどれかがあれば鐘を鳴らしてください」


医療責任者は次回診察時刻を記した票をレアへ渡し、それから窓の外を指した。共同荷置き場には、医療幕と離れて独立回収台の白い屋根が立っていた。


ミロは帰宅前に、いつもの荷造り用細縄を渡された。太い綱なら掌全体で引ける。細縄は、輪を作るために親指と人差し指を寄せなければならない。


「引くのはできる」


両手で張る力は残っていた。右指で端をつまむと揺れ、二度目も同じところで縄が逃げた。圧迫痕は朝と同じ赤さで、嘔吐桶は乾き、咳の間隔も朝の記録どおりだった。


診察室を出ると、エナは自分で歩き、共同井戸までの坂で母の腕へ寄りかかった。彼女の嘔吐桶も乾いている。ノアは道の石を目で追い、姉の袖を持って家へ戻った。


共同荷置き場の回収台には、三枚の掲示が下がっていた。年始市対象荷番の自発回収では販売罰を科さないこと。検査費は地方安全予備費から出ること。対象品の代替費は、所有者の受領札に基づき別裁定へ回すこと。


レアは掲示を二度読んだ。無処罰の文字を指でなぞり、共同仕入れ帳と次の宿の掛け札にある自分の名を思い出した。家の床板一枚の下には、別の子の手が届く高さに同じ荷番の瓶が八本ある。


家へ戻り、寝台を壁際へずらした。床板の端へ爪を掛けると、湿った土と布油の匂いが上がった。


外袋は膝に軽く、八本分の仕入れ値は春までの粉代より高い。レアは結び紐を保ったまま、袋ごと抱えた。


ミロが起き上がろうとした。


「僕が持つ」


「あなたは掌を見せる。これは私が仕入れた荷よ」


回収台までの道で、袋の中の瓶が歩調に遅れて鳴った。近所の窓が二つ開き、すぐ閉じた。レアは持ち替えず、白い屋根の下まで運んだ。


別登録監査官は受領板をレア側へ向けた。所有者の名、床下へ置いた日、受領時刻。レアが答えた順に読み返す。


「レア・ケスト。留置、冬第12月第27日。受領、春第1月第2日、第3鐘後」


袋を台へ下ろすと、膝の圧迫が遅れてほどけた。監査官は一本の札へ八本を記し、その札へレア名の紐を通した。


次の家族が二本を持ってくると、新しい受領板と紐が出た。さらに一人が外袋を運び、その人の名と時刻で札を受ける。回収台の壁には所有者別の小札が増え、中央の総数板には「回収中」の札が掛かったままだった。


レアの外袋を調べる順が来ると、包装業者の押印と荷番の枝番号が表へ現れた。瓶には、同じ印刷荷番でも色の薄いものと、底の沈みが濃いものがあった。地方安全担当は包装印、荷番枝、二種類の外観を写すと、そこで別紙を伏せた。


袋の内側にあった原配送札は、二本の糸を通した封へ入った。認証写しへ移ったのは荷番枝、通過鐘、重量だった。原札は回収台の奥へ収まった。


レアは自分の八本を記した受領札を受け取った。代替費未決の斜線と、次回連絡を待つ小札が重ねられていた。財布の中には今夜のパン四切れ分が残った。


第4日、第2鐘。ミロの圧迫痕は赤みを残し、右手の握る力も残っていた。太縄は両手の間でまっすぐ張る。細縄をつまみ、輪へ端を通そうとすると、前回と同じ二本の指が細かく動いた。


医療責任者は再現した動作と、悪化なしを書き、病名へ筆を進めず票を閉じた。


エナは診察中、自分で食椀を空にし、脇の嘔吐桶は乾いていた。ノアも椅子から立って三歩歩き、床板の継ぎ目を順に踏んだ。二人には第7日の次回札が渡され、医療票は追跡中の束へ戻った。


第7日、第4鐘前。ミロの掌にあった斜めの痕は、灯へかざすと分かる薄さになった。力比べでは左と同じところまで木片を押せる。咳の間隔と食事量は第4日の線を保っていた。


いつ戻るかとレアが問うと、医療責任者は五項目を記した。摂取事件後に残る右手細動。原因未分離。悪化なし。回復時期不明。観察継続。


エナは診察中に水を飲み、ノアは診察台から自分で降りた。二人の票にも次の観察日が加わり、医療責任者は綴じ紐を解いたまま机へ戻した。


診察室の外で、レアは空になった行商荷車の幌を畳んだ。ミロは荷台の脇にしゃがみ、いつもの細縄を左手で張った。


右の親指と人差し指で端をつまむ。震えが始まると、一度離して、もう一度つまんだ。輪は半分までできたが、端をくぐらせるところで指から抜けた。


結び輪と縄端が、乾いた土へ落ちた。


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