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第61話・馬鹿嘘つき



 ――顛末を言えば、僕はあの後すぐに気絶した。


 だが、それでも魔物の餌にならなかったのは奴が気を利かせて帰っている途中のベラルトさんの元に転移させてくれたからだ。


「アポロ。腕が、何で……」


 空中に転移し、地面に叩きつけられた衝撃で意識が闇に落ちる。

 その瞬間、見たのは仲間たちの蒼白な絶望した表情だった。




 ***




 ともかく、アンルーフの一件はこれにて終わりだ。

 最終的にアフェたちを泣かせることになったが、総合的に考えれば案外悪くない幕引きだったのかもしれない。


 後始末も、僕たちの状況を鑑みてベラルトさんたちがやってくれることになったので、現在は暇している。


「流石に痛いな……」


 失った左腕の断面を触りながらそうぼやく。


 ファナさんに治してもらったおかげで傷口は塞がったもののアドレナリンが切れた後は激痛がずっと続いていた。


「そりゃあ、痛いに決まってるでしょ。ほら、動かないで……あーん」


 そう言うことで、僕はしばらくの間はベッドで絶対安静。

 動けるよって言ったらぶっ叩かれたので大人しくすることにした。


「自分で食べれるよ。右腕はあるんだから」


 差し出されたリンゴを突き刺したフォークを右手で取ろうとすると、寸前で避けられる。


「黙って世話されてなさい。無茶した罰よ。それと、カタリナがショック受けてたから後でちゃんと話をしておきなさい」

「カタリナが、どうして?」

「あんたが腕を失ったからに決まってるでしょ。今回の戦いで、カタリナは何もできなかったって自分を責めてるみたいだし」

「そっか……」


 まだ、浄化と治癒しか奇跡を扱えないカタリナは自分の出来る範囲で精一杯のことをしてくれた。


 ただ、近くで同じ奇跡の使い手だというのに攻撃もサポートも両方こなすファナさんがいた。

 その姿を見て、どうしても自分と重ねてしまったのだろう。


「あ、そうだ。イージスともまだ会ってないな」

「あの子はあたし達の代わりにビーステッドの後始末に協力してるわ。一人は証言者が必要みたいだし」

「そっか、やっぱり頼りになるよ」


 差し出されたリンゴを食べながら、かつてのことを思い出す。


(アテナもこういう面倒ごと率先してやってくれたっけな。よく助けられたよ)


 学園時代の懐かしき思い出である。


 僕の場合は自主練で時間を使いすぎて出席日数が足りなくなった時、出された課題を徹夜して手伝ってもらったことは記憶に深く刻まれていた。


「……ねえ」

「アフェ?」


 そして、そのままアフェと談笑し続けていると急にリンゴを運ぶ手が止まる。

 柔和だった雰囲気が一気に締め上げられ、少し息が詰まったのを感じた。


「聞かせて、何であんたはあの時にあたし達に先に洞窟から出ろって言ったの」


 ――アフェの表情を見るに笑い事では済みそうもない。


「……人を殺す瞬間を見られたくなかったんだ。別に幻滅すると思ったわけじゃない。ただ、見られていたら覚悟が鈍りそうだったから」

「覚悟って?」

「人を、人を殺す覚悟だよ」


 右腕で強く、固く拳を握りながら淡々と告げた。


「僕はこれまで何百もの命を奪ってきた。だけど、いつまでたっても慣れないんだ」


 アンルーフや無涅(むね) 彼岸(ひがん)と名乗った外道。


 彼女相手にすら僕は殺す一歩手前まで投稿する意思を問うた。

 それが、法治国家に生きる者として、容易に奪ってはいけない命の重さを知り続けるために必要なことだから。


「なーんだ。アポロがあたし達だけでも逃がすために言ったのかって思ってたわよ」

「それも無いとは言い切れないけど、それだったらベラルトさんがいた方が楽に済んだね」

「そりゃそうね。あの人、めちゃくちゃ強いもの」

「ああ、本当に頼りになった」


 今回、ベラルトさんがいなかったらと思うと――考えたくもない。


 戦力という面もそうだが、彼に止められていなかったら僕一人でムーンライトフォレストに突入していただろう。


「でも、あたしは何にも感じずに人を殺す感情の無いアポロより、そっちの方が好きよ」

「……ああ、ありがとう」


 アフェの優しい言葉に返答をつい濁してしまった。

 わからない程度に唇を嚙みしめると、不思議と過去が脳裏にちらついた。


「ねえ、アポロ」

「ん?」


 その後、リンゴを食べ終わるとアフェはその食器を置き。

 僕の胸にポンと頭を預けた。


「夢を見たの。あんたが、死んじゃう夢……死ぬ瞬間じゃなくて、あたしは全部が終わった後に駆けつけるの」

「僕が死ぬ、か」


 タイムリーと言うか、本当に正夢になってしまいそうな話題に気が引き締まる。


「ふふっ、案外ありそうでないわよね。あんたって本当に強いし、毒も効かないし。でもね……」

「で、でも?」


 上目づかいで僕を見上げながら、首筋を人差し指でゆっくりとなぞる。

 その状況に、別にドキドキするわけでもなく、まるで尋問でもされているような緊張が背筋を覆った。


「妙にリアルなのよ。よくわからないピカピカした場所であんたは力尽きてて……すっごく安らかな表情してるの」

「へ、へえ、安らかなら。まあ、良かったのかな?」

「ふーん、安らかなら死んでもいいんだ」


 少なくとも苦悶の表情のまま何も成せず死ぬよりはマシだろう。


 だが、求めていた回答ではなかったのか、アフェの目から光が消えると同時に人探し指が頬まで登って来る。


「でも、怖いの。本当に正夢になっちゃうんじゃないかって……ねえ、アポロはあたしの前からいなくならないよね」

「う、うん!!多分ね」

「そっか、良かった。約束ね、破ったら……」

「や、破ったら?」


 どうやら、今回は求めていた正解を引き当てたようで頬まで登って来た人差し指は引っ込み、胸に預けていた頭も離れる。


 でも、何でかなものすごく嫌な予感がした。


 そして、立ち上がりリンゴの入った食器を持って扉に手を掛けた瞬間――


「あたしも一緒に死ぬから。馬鹿嘘つき」


 振り向いて、ハイライトのない瞳と共に捨て台詞のように呟いてから部屋を去った。


「……じ、冗談だよね?」


 その疑問に答える者はこの場にはもういなかった。


(ど、どうやってアフェが死ぬのを防げばいいんだろう……)


 もちろん、自分が死なないという選択肢はないのであった。



これにて、転換編終了です!

この先、アポロは自身の未来をどうするのか……ダイナミック自殺する気満々に見える。

この次は、王位継承編!

皆さん、これを機にブックマーク!評価をお願いします!!モチベになるんでー

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