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第54話・第二ラウンド


 現れた加具土神の腕、それらはすぐ猛威を振るい始めた。


「燃やし尽くせ!」

「僕が防ぐ!『”火”よ。我が両手の先から横2m、高さ2mの渦となって突き進め!!』」


 加具土神の腕から放たれる業火の二重螺旋。

 それらは、フレムさんが放つ『業風炎花(グロースプラント)』を想起させたが威力は比較にもならない。


 対して、僕は水蒸気が発生することを嫌い、同じ属性の火の魔術で応戦する。


(打ち消すので精一杯か。ファナさんの補助も乗っているはずなのに、押し返せないなんて……)


 こんなのまともに食らったら炭も残らない。

 加えての、相手はあらゆる攻撃を弾いてくると来た。


「……ベラルトさん」

「言うな。わかっている。ファナ、オレにありったけの強化を頼む」

「う、うん!」


 相手は今の今まで一歩も動いていない。

 それは、強者ゆえの余裕――というのも一部あると思うが、実際はそれだけではないだろう。


(奴の動きが如実に語ってる。近接が弱いと)


 もちろん、近づくのは容易ではない。

 だが、遠距離からちまちま魔術を撃っていても魔力切れを起こすのはこちらだ。


 そのため、僕がすべきことは――


「ベラルトさん」

「なんだ?」

「下ね」


 ベラルトさんの返事を聞く前にマジックバックからナイフを数本取り出し、構える。


「『”風”よ。我が手先のナイフに纏え』」


 人間は常に全方位を警戒出来るわけじゃない。

 警戒しようと思ってもどこか必ず隙が生まれる。


「ナイフを投げた?」

「あれは……!」


 全方位攻撃をするなら僕にはうってつけの技がある。

 手から離れた数本のナイフたちはアンルーフの両脇、真上、背後に滞空し始めた。


 その瞬間、僕は抜剣し奴の元まで駆け抜ける。


「『”風”よ。我が元に帰還せよ』」


 最後の仕上げとなる詠唱。

 それと同時に、風を纏いしナイフたちは重力に逆らい奴の元に全方位から迫って行く。


 タイミングは完璧、全て同時に前方からは僕、多方向からは風を纏ったナイフが迫る。

 この絶技こそ――


「『風刃絶剣!』」

「何か不味い!『提唱(プリンピキア)絶望斥く神の奇跡(シャルル・クーロン)』」


 ベラルトさん達も捕まった見えない力によって動きを止められる。

 それだけじゃない、そこまで迫っていたナイフたちも空中で動きを止めてしまった。


「体が、進まない……だが!!」


 そう、狙いはそこではない。

 僕の叫びと共に空中に滞空したナイフたちが一斉に光と共に爆裂した。


 風刃絶剣は単なる全方位からの攻撃ではなく、同時にナイフを爆裂させることによる多段攻撃でもある。


 そして、これは布石だ。


「『”水”よ。我が足裏を中心とし20㎝先の横2m、深さ5m、縦10mの土と混合し泥水となれ』」

「何を言っている!?」


 爆音と土煙で相手は僕が何を詠唱したかわからない。


 その上、泥沼に変わったのは20㎝下の地面だ。

 その変化には容易に気づかない――もちろん、奴が直ちに沈むこともないだろう。


 だが、それでいい。


 むしろ、そうでなければこの作戦が成功することはない。


 土煙が晴れ、奴と視線が交差する――


「斥け!『提唱(プリンピキア)絶望斥く神の奇跡(シャルル・クーロン)』」

「ッ!!」


 今回はとてつもない勢いで、踏ん張る間もなく後ろに退く。


「戻れ、加具土神(カグツチ)。いでよ!『徴兵命令(サモン)()須佐之神命(スサノオ)』」


 そして、奴は加具土神(カグツチ)を引っ込め。


 今度、白い渦から現れたのは肩まで伸びる長髪と見たところ僕たちの服とは違い、一本の長い布から作られ、帯で胴を締めた服装をしている。


 見た目はベラルトさんくらいの大きさの人型だが、持っている剣や立ち姿からただものじゃない。


「イージス。あの召喚獣を止めて、ファナさんは援護をお願い。カタリナはアフェの回復を頼む」

「了解です!」

「はい!」

「任せてください!!」


 アフェは連れ去られたときのダメージが残っているのか、重力下で全く動けず地面に倒れ伏している。

 そして、全員の返事を聞いたと同時に須佐之神命(スサノオ)の振るった刃がイージスの大盾と激突する。


「俺を忘れたか!『提唱(プリンピキア)希望引き寄せる(アイザック・)神の奇跡(クーロン)』」

「忘れるかっ!引き寄せられる……なら、食らえ『”火”よ。我が手の先より放て!』」

「詠唱を省いただと!?」


 本来、魔術で出す位置の指定はともかく範囲を絞らないのは自殺行為だ。

 単純に暴発する可能性が高まるし、相手に当たらないかもしれない。


 ただ、今の状況なら話は別――


 適当に火を出しても勝手に相手が吸い込んでくれるのだから。


「省れるところは省くのが魔術師よ!!」

「こんなもの弾いてしまえば何の問題もない!!『提唱(プリンピキア)絶望斥く神の奇跡(シャルル・クーロン)』」

「ああ、そうだ。その通りだ……」


 引き寄せる魔法が解除され、その代わり斥ける魔法が発動する。

 それによって一瞬で、火は打ち消され残ったのは火花だけ


 僕も観念したように相手に同調するような呟きと同時に――


「でも、それでいいんだ」

(何だ、あの笑みは……いや、その前にあの大男はどこだ?)


 布石は既に整った。

 隙は十分だろう、出てくるならここだ。


 最高のタイミング、最高のシチュエーション、出てくるならこれ以上はない。


「そうだよな!!」

「ここだな!!」


 ただ僕は『下ね』と言っただけだ。


 だが、それだけで僕たちは意図を通じ合わせベラルトさんは泥だらけで雄叫びを上げながら、地面を割って奴の足元に現れた。


「あ、足元からだとぉ!?」

「足元に力場発生させてるわけないもんな!」

「引きずり込む!!」


 原理は単純。


 放った『風刃絶剣』が失敗した後にナイフの爆発を隠れ蓑として自分の足元から下に巨大な泥水を創り出した。


 土竜の時とは違い水の割合が多く。

 ベラルトさんの筋力なら泳いで行ける範囲で地下を進み奴の足元までこぎつけたというわけだ。


「さあ、泥水のプールで第三ラウンドだ!!」


 奴がベラルトさんに引きずり込まれると同時に今度は僕が第三ラウンドのコングを鳴り響かせた。



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