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第21話・揺れる決断、震える指先



 一人で解放感に浸っていると隣のアフェから叫んだような声が耳に入ってくる。


「だから、コンボ一族って何よ!!」

「あ、ごめんごめん。召喚魔法の開祖だよ。歴史の教科書で読んだことがある」


 刻印とは第二世代以降が体に持つ、魔法を扱うための一種の臓器である。


 当然、そのまま子孫に渡すだけでは魔法は発展しない。

 だから、刻印を持つ者同士が結婚し、子供を産むことで両親二人の刻印を継承することが出来る。


 その結果、刻印は混ざり合い未知の魔法が生まれるのだ。


「だけど、コンボには複数の奥さんがいてね。刻印の継承問題が出ちゃってね……結局、刻印を分解して子供全員に分配することになったんだ」

「え、えぇ……結構、節操無しだったのね」

「それで、刻印は子供たちに渡された後、子孫たちに継承されるうちに再生して全員に召喚魔法が発現するようになったって言われてる」

「なるほど、だからコンボ一族ってわけね」


 そう、彼女の言うようにコンボの刻印を継承した子供たちは家名に『コンボ』とつくようになった。

 なので、コンボイションと聞けばすぐ気づけたはずだった。


「でも、再生するなんて刻印ってすごいわね。アポロもその気になれば刻印を手に入れらるんじゃない?」

「無理無理。一子相伝だからね。血縁関係が無いと拒絶反応を起こして下手すると死ぬから」


 特に、奴隷出身の僕はそもそも親が誰なのかもわからない。

 たとえ、刻印を継承できたとしても僕を売り飛ばした親の刻印なんて受け取りたくなかった。


(それにしても召喚魔法か。悪魔のこともあるし、ほぼ黒だな)


 だとしても、現在は限りなく黒いグレーだ。

 状況証拠しか揃っていないため、出来れば悪魔を呼び出している瞬間や自白を引き出したい。


「先祖がハーレムか。あの、クランマスターにもそれくらいの甲斐性を発揮してもらいものだぜ」

「と言うと?」

「うちのクランマスターはとにかく出てこない。運営はほとんど下任せ、そのくせ噂だとクランの金を投資やギャンブルに使ってるらしいぜ」

「……へえ」


 思わず軽い笑みが浮かぶ。


 もし、彼が成功しているならそれでいい。

 だが、もしも失敗していたりしたら。


「ヤバいね。それ、大損こいてたら今すぐにでも金が必要じゃない?」

「だろうな。実際、あたしは損してると思うぜ。受付嬢の質の低下……いや、これはあんたには言うまでもないか」


 大手クランと呼ばれるわりに違和感があったが、やっと追いついて来た。


「ところで、このパーティーって何か全員に共通点とかあったりしない?イージスさんがいるってことは臨時パーティーでしょ」

「共通点……?」

「あれじゃないでしょうか、クランリーダーと私以外今週末に辞める予定なんですよ」

「いやいや、それじゃ全員じゃないだろ」


 フレムのツッコミがあったが、あながちイージスの発言も的外れじゃないと思える。


(イージスさんは昨日、僕たちと一緒に悪魔を目撃している。そして、冒険者の死亡保険が通りやすくなるのはBランク冒険者からだ)


 彼女たちは当然Bランク冒険者以上だろう。


 なら、黒幕の狙いは悪魔の存在を知ったイージスさんの抹殺と死亡保険のかかっている人を魔物に殺させて保険金を得ることだと推察できる。


「……アポロ」


 どうやら、アフェも察したらしく深刻な表情で僕の服をつまんで揺らす。

 この推察が当たっていたとしたら、僕たちがすべきなのは撤退だ。


 ベスクワル本人が出張っている以上、僕たちを必ず殺せる確信があるのだろう。


(たとえ、撤退して治安局やギルドに告発したとしても証拠がない)


 そうなれば、結局逃がすことになり被害の拡大は避けられない。



 指先に震えるなと命令を出す。

 だが、止めてもまたどこからか震えが伝わってくる。


 その時、どこかへ行っていたベスクワルが帰ってくる。


「そろそろ休憩も終わりにしよう。トラーレンドンの皆さんも行きましょう」


 僕たちと会った時には想像できない柔和な笑顔を見せる。

 だが、なぜかその裏に何か形容できない恐ろしい何かがあるのは感じ取れた。


「……」

「アポロ、どうする?」


 引き返すなら今だ。

 おそらく、イージスさんたちを救うことはできないが彼に提案すれば僕たちだけでも撤退することはできる。


 目を伏せ、熟考する。


「アポロさん」


 その時だった僕の指先をカタリナが掴んだ。

 表情には恐怖が滲んでいながらも、一種の覚悟も感じ取れた。


 その呼びかけに僕は何も言わずそっと微笑んで軽く握り返した。


「そうだね。どんな敵が待っていたとしても僕たちは負けない」


 その一言は主の部屋で待つ魔物たちへもそうだし、目の前のベスクワルにも告げたものだった。


「随分と実力に自信がおありなんですね。心強い、俺たちも負けてられないぞ」

「「「「はい」」」」


 対して、相手は特段反応は示さず自身のパーティーを鼓舞した。

 だが、その目の裏には確かな暗雲のようなものが渦巻いていた。


 そして、僕たち8人は主の部屋の前に立つ。


「すみません。俺は近接得意じゃないので、アポロさん。最初に開けてくれますか?」

「ええ、もちろん」


 それなら、イージスさんにでも開けさせるべきだとは言わない。

 十中八九開けた瞬間に何かがある。


 そう考えた僕は、急所に魔力を全力で固めて防御したまま扉を開けた。


「なっ、悪魔!?」


 わざとらしい粗末な驚嘆の声と同時に他の皆々も声を上げる。


 何故なら、中にはコボルトロードだけじゃなく無駄に布面積の少ない服装の女性型悪魔が立っていた。


「宇宙の法則に堕ちなさい!!『アウグスティヌスの(ザ・アブソリュート)告白(ゼロ)!!』」

「なっ!?」


 問答無用の魔法の発動によって完全に先手を取られた。

 それと同時にどんな攻撃が来るか咄嗟に身構える。


 次の瞬間――


「うっ、は?」


 感知も反応も何一つできなかった。

 残ったのは、 僕の腹から血が噴き出したという結果と薄気味悪い悪魔の笑みだけだった。


アウグスティヌス……良い子は調べてみようね!

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