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「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜  作者: 大好き丸
18章 龍球王国 後編

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429、人助け

 魔導戦艦に着くや否や貨物室を抜けて客室に入る。レッドが迷わないようにと、あらかじめドアに貼られた赤いシールを目印に部屋に勢いよく入る。


「おわっ!! 何だ何だっ!?」


 そこにはぬいぐるみサイズのオディウムがベッドの上でゴロゴロと転がっていた。

 禍津神戦でアキマサに一時的に預けてからこっち、レッドから多少離れても支障がないことが分かったため、暴れないことを条件に船に置いていた。

 するとオディウムは部屋に籠もってゴロゴロとプライベート空間を満喫し、食事の時以外ほとんど顔を出さない引きこもりになってしまっていた。


 さらにぬいぐるみサイズで過ごしていた期間が若干長かったからか、それとも狭い部屋が関係しているのか、今では常時小さなサイズでいる。ちょっと前まで3mで縮小が精一杯とほざいていた時から考えると、進歩したのか退化したのか甚だ疑問である。


 モラクスにピラミッドの最奥で縛られていた時はあれだけ外に出たがっていたというのに、今はスロウばりに眠りこけている。変われば変わるものである。

 レッドはそんな自堕落なオディウムにズンズンと近寄って抱き上げた。


「あっ! おいっやめろっ!! ガキ扱いすんじゃねぇよっ!!」

「え? あ、ああっごめんごめん。ちょっと興奮してて……」


 レッドはすぐにオディウムを降ろしてコホンッと1つ咳払いをした。


「お願いがあるんだっ。モラクスさんのところに連れて行って欲しいっ」

「は? 何で?」

「『巨万の富』を引き出したいんだ」


 砂漠の王国ジャガラームにあるダンジョン『ピラミッド』の最奥に位置する場所に存在するという『巨万の富と比類なき力』。ダンジョンを攻略した者にのみ与えられる特典。

 レッドがティオたちと攻略し、『比類なき力』のオディウムを手にしたが、『巨万の富』の方は持ち出しに時間が掛かりそうだったのでダンジョンマスターのモラクスに預けてある。


「えぇ? 何で今何だよ。買いたい物でもあったのか?」


 オディウムは面倒くさそうに頬をポリポリと掻く。その問いに答えるようにレッドの背後からライトが声を掛けた。


「なるほど。レッドはその巨万の富をこの国に寄付するようだ」


 レッドの肩越しにライトを確認し、頷きながら一旦ライトの言葉を飲み込んだ。頭に浸透すると同時にオディウムの思考がスパークした。


「……はぁっ!? 寄付ぅっ!? んな馬鹿なっ!!」


 一呼吸遅れてのツッコミ。しかしそれもそのはずで、財宝を自分のために使うならいざ知らず、ちょっと立ち寄った国を立て直す資金にしたいなど誰が考えるのか。


「おいおいおいおいっ。マジかよ。何もしなくても一生食いっぱぐれねぇどころか、何世紀に渡って大金持ちで居続けられる財宝だぞ? 人なら人らしく欲求に忠実であれよ」

「それならなおさら個人で使うなんてもったいないだろ? シルニカさんとティオさんとリディアさんが何て言うかまだ分かんないけど、俺は復興に使ってほしいって思ったんだ」


 真剣な目でオディウムを見つめる。


「いや、でもよぉ……」

「諦めろオディウム。これもまた人の……レッドの欲求だ。人を助けるためのな」


 ライトも肩を竦ませる。言いだしたら(てこ)でも動かないレッドの固い意志を何度か見て来たので、考えを覆すことは不可能だ。せいぜいピラミッドを一緒に攻略した4人で山分けして、レッドの1人分を寄付に回すという方策くらいのものだろう。


「……好きにしろよ。俺のじゃねぇし」

「よし。それじゃ後で一緒にピラミッドに行こう。他の3人にも話を付けてくるっ!」


 レッドは部屋を飛び出し、急いで走っていった。


「正気じゃねぇな。自分の手で勝ち取ったもんを他人にやるなんざどうかしてる」

「誰にでも分け隔てなくってわけじゃない。レッドは自分の望むことに忠実なだけなんだよ。自分の出来る範囲内ってのが唯一の枠組みだな」

「出来る範囲って……何でも出来るじゃねぇかよ」

「そうなんだけど、そうじゃないとも言える。それはお前もよく分かっていることだろ?」


 ライトの抽象的な発言に一瞬イラっとしたが、思い返してみればレッドの感性は常人のそれと何ら変わらないことに気付く。世界最強の力を持つ一般人。時々突拍子もなくスルッと逸脱することもあるが、大抵は人並でしかない。


「あ~あっ、面倒臭ぇ面倒臭ぇっ。話が付いたら起こしてくれよなっ」


 オディウムは不貞腐れるようにライトに背を向けてベッドに寝転がった。



 龍球王国の今後を決める話し合いも大詰めを迎えていた。


「……さて、各々の持ち場と動きを決めたところで、報奨の話に移りましょう」


 シズクの言葉にグルガンが反応する。


「全てが終わってからで良いだろう? 今話すべきことか?」

「それが不思議なことに必要なのですよ。……ニシキ様。よろしくお願いいたします」


 進行役を買って出たシズクはニシキにバトンタッチする。ニシキはコクリと静かに頷き、武将たちを見渡した。


「皆の者、大義であった。この国の未来を救えたのは(ひとえ)に皆の活躍あってのもの。今後ともよろしく頼む」


 武将たちは深々とお辞儀をする。「面を上げよ」の号令に皆が揃って顔を上げる。


「それとは別に、皆も知っての通り天征十一将から4将を失った。キジン家、トウダ家、テンコウ家、テンクウ家……どれも歴史ある家柄であり、陰陽方位陣の関係上、4方向を開けておくわけにはいかない。そこで各家家には繰り上がりに協力してもらう」


 繰り上がり。天征十一将に上がることは現在の領主から大領主に変わり、政治にかかわる立場となるということ。それはつまり昇進に他ならない。ニシキは目配せでシズクに進行役を任せる。


「……はっ。畏まりました。まずは最も重要な家柄であるキジン家。コウカク家の分家であったことから、コウカク家と縁のある家が好ましいと考え、マガミ家がキジンの座に座ります。キジン家存続が優先されますので、コウセイ=マガミは今後、コウセイ=キジンと姓を変更してください」

「ははぁっ! それが主君のためならば、謹んでお受けいたしますっ!」


 コウセイは即座に両拳を突いて頭を深々と下げた。


「続いて、トウダ家。現在、トガノジョウ=トウダ、並びにシンクロウ=クロバが行方を晦ましております。故にトガノジョウとシンクロウの両名は家柄と領土を召し上げ、次期トウダ家に譲渡されます」

「そのことについて少しよろしいでしょうか?」


 シズクが次期トウダ家を発表しようとしたその時、キキョウ=タイインが手をあげて制する。


「……何か?」

「この繰り上がりについて、あまりに一方的ではないかと存じます。キジン家の選定に異論はございませんが、その他の家柄につきましては一考の価値があるかと……」

「不服だと仰りたいのですか?」

「ええ。天征十一将は内々で決められるものであってはなりません。特に、我ら旧キジン派閥を締め出す様な選定はおやめいただきたい」


 発表前だというのに、既に答えを知っているかの様な言い草にシズクの糸目が少し開く。まさにキキョウの言う通りであり、図星を突かれた形だ。


 この話が長引くだろうと察したグルガンは落とし所を提案しようと手をあげかける。そこに魔導戦艦から通信が入った。会議中であることを見越しての連絡であると推察し、一旦退室した。少し離れた場所で通信を取ると、レッドが顔を出した。


「レッドか。どうした? 何かあったのか?」

『実はグルガンさんに折り入って頼みがありまして……』


 レッドから出た提案にグルガンは笑みを零す。


「丁度良い。資金調達でどうしようかと考えあぐねいていたところだ。ヴォジャノーイにばかり頼るのも気が引けるからな。了解した。こちらの話が終わり次第、砂漠の王国へと出発しよう」

『ありがとうございますっ!』

「いや、こちらこそだ。それじゃ我は会合に戻る」

『はいっ! 頑張ってくださいっ!』


 グルガンは通信を切り、ふっと優しい顔で笑う。


「そうと決まれば、すぐにも決着を付けないとな」


 やる気を出して会合の席に急ぎ足で戻る。

 早速グルガンはシズクとキキョウの間に立ち、仲介役を買って出る。そこにアキマサも参戦。話し合いはキキョウ側に軍配が上がるも許されたのはトウダ家の1つであり、他は選定通りで合意させた。

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