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「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜  作者: 大好き丸
18章 龍球王国 後編

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423、青い空

(……封印……だと……?)


 神聖性の強い刀に喉を突かれた挙句に声帯を焼かれ、声の出せない状態で聞いた一方的な宣言に驚く。確かに死なない相手に対して封印は有効だ。初代竜神帝も長い戦いの末に勝機を見出せなかったのか、結局は八十禍津日神を封印することで世界を救っている。その後も、呪いの泥の影響が出ない様に、その身で浄化することで人が住める環境を整えた歴史がある。


 だが、神と呼ばれる呪いの権化を前に、人間の力では押さえ込むことなど不可能。天位と双璧を為す竜神帝ほどの実力があって初めて封印術は成功する。それも聖なる力を扱える神竜に限る。ドラグロスは負の面の強い悪竜であるため、どちらかといえば禍津神の側なので封印には不向き。


 もしこの状況に力を貸せる存在がいたとしたらグレゴールだろうが、たとえ聖なる力であろうとも異世界の異なる力ら故に混じり合うことはなく、水と油の様に反発し合う可能性もある。

 もちろん完璧に混ざり合って大禍津日神を封印に持ち込める可能性もあるが、グレゴールは今この場にいないので、この可能性はそもそも除外される。


 その全てを瞬時に見極め、大禍津日神は刀を抜こうと刀身を握りながら2人の脳内に言葉を投げかける。


『……わらわの喉を突き……調子付いている様だが、無駄な足掻きだ……封印など……お前たちには不可能……白蛇の封印術『黄泉比良坂(よもつひらさか)』を……人間如きが扱えるわけもなし……』

「──封印術は『黄泉比良坂』に限らねぇだろ。──陰陽五行結界おんみょうごぎょうけっかい(ばく)っ!!」


 アキマサは体内に内包した力を使用し、刺した喉元を起点にした五芒星の結界を呼び出す。その瞬間に大禍津日神の体が金縛りでもされた様に動けなくなる。刀身を掴んでいた右手も御堂の壁に磁石に引っ張られる様に貼り付いた。


『……何故だ?……どうしてお前はわらわの世界で通常通り気を扱える……?』

「──なんでだろうなぁっ? 一生考えてろっ!!」


 ──ビギギィッ


 どうにかして体を動かそうと全身に力を込める大禍津日神。ここに来てニシキは目を静かに閉じる。頭の中で構築していた封印術を形にするための工程に移行したのだ。

 ニシキが先ほど出現させた黒い球『龍神相克(りゅうじんそうこく)』は呪いに対抗するのをやめてニシキの側に戻る。球が薄く平面状に伸ばされてそれぞれがくっつき、正十二面体となって3人を囲う。その結果外からの干渉を受けず、封印に適した環境を自ら作り出した。


『……なるほど……手が込んでおる……本気でわらわを封印しようとする気概は認めよう……だがどうだ?……本当に可能か?……何も出来ませんでしたでは祖先に顔向け出来んぞ……?』

「──随分と饒舌になったもんだな大禍津日神ぃ。喉が焼かれている癖によぉ。やっぱ封印されるとなるとお前でも怖いか?」

『……わらわに怖いものなど存在せん……能力が使えるからと粋がるな小僧……』

「──へっ……強がってられるのも今の内ってな。こっからさらに加速するぜっ!!」


 アキマサは神刀から手を離し、拳を握り込む。


「──紫天一流柔術──紫電八雷(しでんはちらい)っ!!」


 握り込んだ拳は、視認不可避の光速による攻撃を放ち、時間のズレが生じることなく同時八連撃を大禍津日神に叩き込む。

 この技は点穴と呼ばれる人間の急所を攻撃する紫天一流柔術の奥義『八雷陣(やくさいかずちのじん)』の強化技である。

 まず『八雷陣(やくさいかずちのじん)』とは、頭、胸、腹、陰部、左手、右手、左足、右足 の八か所に雷の気を送り込んで、蓄積された雷の暴走によって稲妻が全身を駆け巡り、肉体と全神経が八つ裂きに破壊されるという内部破壊を主とした技である。

 本来、生物であればこの連鎖破壊での無傷はあり得ない。とはいえ、大禍津日神に放ったところで即再生されることは目に見えている。だが『鳴神威(なるかむい)』を使用したアキマサの技『紫電八雷(しでんはちらい)』は常に傷口に雷撃を走らせ、気が続く限り再生を阻害し続ける。


『……ぐっ……がっ……!?』


 あまりの雷撃の前に思考が停止し、睨んでいるだけで精一杯の状態だ。どこかで隙が生じた際に逃げる算段はこれで封じられた形になる。


「──今だっ!!」


 アキマサの言葉にニシキは目を見開いた。


「──掛けまくも(かしこ)天辺(てんぺん)の竜神。東西の日道、南北の氷星。千引(ちびき)黄泉原(よもつはら)(みそ)(はら)(たま)いし時に生りませる竜神の導き。諸々の禍事(まがつごと)(つみ)(けがれ)有らんをば(はら)(たま)い。清め(たま)えと(もう)すことを聞こえ()せと、(かしこ)(かしこ)みも(もう)す……」


 ニシキのあげる祝詞に刀が共鳴し、刀身が白く輝きを放つ。ニシキの開いた目も光り輝き、徐々に全身を聖なる光が包み込む。

 思考が封じられたはずの大禍津日神は目に見える情報だけで自分の置かれた立場を無意識に理解する。もしかしたら本当にやり遂げるのではないかという漠然とした危機感が小さく芽吹いた。所詮は小娘と侮っていたのを後悔する。


 ──ミヂミヂミヂィッ


 アキマサの五行結界と雷撃の連鎖を以ってして、尚も懸命に動こうとする大禍津日神。再生が追いつかない代わりに、新たに腕を生やすことでニシキに手を伸ばそうとする。


「──甘いんだよっ」


 ──バチィンッ


 大禍津日神が伸ばした腕は新たな雷撃によって焦滅する。アキマサによって物理攻撃を阻害され、ニシキの能力で呪いを阻害される。さらに喉を焼かれたことで呪言を封じられたこの状況はまさに大禍津日神にとって最大の危機。


『……ぐぅああっ!?……小僧ぉっ!!……白蛇の巫女ぉおっ……!!!』


 青筋を立て、カパッと口を開けて苛立ちを見せている。ニシキは渾身の力で刀をさらに刺し込んだ。


「……大禍津日神を神刀に封印す──天鱗煌(てんりんこう)光耀角封縛尽こうようかくふうばくじんっ!!」


 ──カッ


 呪いから我が身を守るために発動した正十二面体の黒い結界『龍神相克(りゅうじんそうこく)』を押し除ける様な光の放射が大蛇や巨大骸骨、赤い鎧武者と船を飲み込み、さらに広がる。全てを包み込む暖かい光は暗黒の空を払い除け、青い空が舞い戻る。瓦礫がバラバラと地面に落ち、無重力の世界から解放されたことを教えてくれた。


 アキマサはニシキを抱えて即座に地面へと着地する。ニシキを無事に下ろしたと同時にアキマサの体から煙の様な湯気が立ち上り、そのまま膝をついた。


「アキマサ?」

「は、はは……すいませんニシキ様。……限界まで気張ってたんで……ちょっと……」


 そのままパタリと倒れ込み、アキマサは気を失う。ニシキはアキマサを呼びながら息があるかどうかを確認し、安心して抱き上げる。ニシキはアキマサの頭を自分の膝の上に置き、頭を撫でながらホッと胸を撫で下ろした。


 大禍津日神を封じた神刀は邪気で穢れてしまったものの、歴代の央龍皇が紡いできた歴史を守りきった。

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