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「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜  作者: 大好き丸
18章 龍球王国 後編

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415、有効範囲外

 大禍津日神とアリーシャの戦いは大詰めに差し掛かっていた。

 レッドが呪いの泥に飲まれてから、1対1となってからも拮抗した戦いを繰り広げていたが、多種多様な能力の前にアリーシャの方が押されていた。


 ──ドンッ


 巨大な骸骨が拳骨を振るい、呪いの泥の下の地面にクレーターを作る。巨大な割に速く重い攻撃にはアリーシャも回避を選択する。


『……ちょこまかと……っ!』


 ガチガチと骨を鳴らしながら体勢を変え、骸骨は大きく開けた口から全身に纏わりついている黒いオーラを吐き出す。範囲が広く、避けることも難しい攻撃なために、流石のアリーシャも巻き込まれる。衣服や髪、皮膚にも何ら変化が無いものの、食らった当人は体が焼かれるような感覚を覚え、亡者の悲痛な叫びが耳元で延々と鳴り響く。


 ──バシュッ


 体内から光を発することで解呪し、呪いによるスリップダメージを失くすが、その瞬間にドッと疲れが押し寄せる。体力をごっそり削られたような感覚にアリーシャはめまいを起こす。


「──いったい……何が……っ」

『……餓者髑髏(がしゃどくろ)の呪いは力そのものを蝕む……気力、体力、筋力から心に至るすべてを食い尽くし、抜け殻となったお前を潰し殺す……』

「──力を……食う?」


 黒いオーラに触れたら最後、力をもぎ取られてしまう。アリーシャは神から授かりし神剣や聖青眼(ロムアイ)の加護で奪われた力は徐々に回復しているが、本来なら黒のオーラを受けた時点で廃人となっていてもおかしくない。

 この機に乗じて赤いゾンビの群れが行進を始める。アリーシャを肉塊に変えようと武器を振りかぶる。足が遅いのが救いだが、近接武器の他に弓矢や投擲槍(とうてきやり)などの遠距離武器も使用してくるので、足を止めてはいられない。

 赤いゾンビの攻撃を回避しつつ、骸骨の攻撃に対処する。その上で大禍津日神を倒す術を考える必要がある。

 生き物を殺すための業を豊富に取り揃えた大禍津日神はアリーシャだけでは不十分だった。


「──油断しました。まさかこれほどとは……その上、まだ先があるというのですか? 恐ろしい限りです」

『……もう諦めろ小娘……お前ではわらわには勝てぬ……その目玉をくり貫き、剣を捨てるなら、レッド=カーマイン同様わらわの血と肉となって永劫の時を共に過ごそうではないか……』

「──レッドさんと共に過ごすのは魅力的な提案ですが、目をくり貫くのは痛そうなのでやめておきましょう」

『……戯言を……』


 大禍津日神は語る気も失せたと言わんばかりに錫杖を振り上げる。骸骨がカパッと口を開けて黒いオーラを球状に貯め始めた。これを受けた時どうなるのかは分からないが、無事に済まないことだけは理解出来る。

 万事休す。

 『白の騎士』『月光の乙女』と持て囃された聖王国最強の戦士も神には勝てない。


 ──バァンッ


 骸骨から黒の球体が放たれそうになったその時、骸骨の口の中が弾けた。


「──っ!?」

『……っ!?』


 一見、貯め過ぎた力が暴走して弾けたように見えたが、大禍津日神が苛立ちながら移した視線でアリーシャも援護射撃であることに気付いた。


「おーっ! ドンピシャだなっ!」


 コジュウロウは部下の射撃を見ながら嬉しそうにしている。


「しかしお頭。今この弓に取り付けている石板と合わせて4つ種類がありますが、手前にはどれがどれやら……」


 トガノジョウから押収した兵器『超弓武神破邪ちょうきゅうぶしんはじゃ』。ヨリマロの唸るほどの財力と魔導弓の技術、そして機界大国の知恵を借りて出来上がったキジン派閥の取って置き。

 4つの石板には鳳、龍、虎、そして尻尾が蛇の亀が描かれており、それぞれ異なる力を発揮する。

 コジュウロウは石板を覗き見て数回頷きながら「ほーんっ」と感心したような雰囲気を漂わせる。


「……今は強そうな鳥の絵か。じゃあ……全部試してみようじゃねぇかっ」


 ニヤリと笑って部下に鳳の石板を外すように促す。ビャクガ家の家紋にもなっている虎の絵を付けて魔導弓を発射する。先の魔法の矢よりも素早く飛んでいき、骸骨の眼底に飛び込んだ。


 ──バギンッ


 骨が砕けたような音が鳴り響く。超遠距離からの魔導弓の攻撃に骸骨は為す術がない。


『……そう来たか……時間をかけすぎたようだな……』


 大禍津日神は右手をかざして印を結ぶ。遠距離攻撃を仕掛けようと考えたが、能力発動前に腕が超弓武神破邪とは別の魔導弓によって貫かれて邪魔をされてしまう。視線の先にはヒビキが長弓を持って立っていた。攻撃しようにも、今の状態では呪いの有効範囲内からはかなり遠い。


『……わらわの能力を制限し、一方的に攻撃を仕掛けるつもりか……』


 能力発動の条件を知れば邪魔をするのは容易い。ヒビキは大禍津日神の能力発動条件を知らないが、何か動きがあればそれを射るという条件を科して弓を引いている。


 ──ドドドドドドドドドッ


 しかし他の部下たちはとにかく腕が疲れるまで撃ち続ける。

 部下の放つ魔導弓はヒビキが持つ弓と違い、威力に欠ける。だからこそヒビキは必要な時だけ、他は一生懸命に矢を放つ。

 部下の弓ではどれだけ頑張っても傷ついた途端に再生が始まる。合間を縫ってヒビキが超威力の矢を放つことで大禍津日神を無力化しようと試みる。


『……チッ……鬱陶しい……』


 大禍津日神にはちょっと強い雨の中に石が混じる程度の感覚だが、当たれば肉が裂けて骨が砕るので印を結ぶどころではない。


 ──カッ


 周りからの攻撃に嫌気が差す大禍津日神の目に煌々と燃え上がる炎の竜が見える。有効射程範囲外で顕現した竜はその場でエネルギーを貯めている。どうやったかは知らないが、人間が竜を召喚し攻撃させようとしているのだろうと推測する。


 ──バシュッ


 超高温のレーザーのような熱線が骸骨に向かって放射される。


 ──キュバァッ


 骸骨は避けることなく熱線に曝され、頭が半分消し飛んだ。超弓武神破邪の攻撃も相まって呪いの権化も無事ではいられない。


「──皆さん……っ」


 アリーシャは感動する。普段はすべて1人でこなせてしまうために、無縁と言えるほど援護などされた経験がほとんどない。もっと言えば命の危機に瀕した試しがないため、このタイミングでの手助けは心の底から感動していた。

 少し休んだアリーシャはすっかり回復し、また元気に反撃のチャンスを待つ。


『……この時代はそれなりに強い武器が揃っているようだ……どうやら少々、見縊(みくび)っていたようだな……』


 大禍津日神は攻撃の嵐に身を置きながら静かに呟く。


『……わらわを追い詰めることの意味を……知るが良い……』


 ──チリリーンッ


 錫杖の環の音が鳴り響く。一番遠くで陣取っているはずのコジュウロウの耳にまで澄んだ音色が聞こえてきた。


『……死七複(しちふく)(じん)──燈艇城(ほていそん)青天井(あおてんじょう)……』


 ──バキバキバキッ


 地上から木の板のような何かが無数に生えてくる。その間も攻撃をやめなかったが、板が大禍津日神はおろか、巨大な骸骨まで覆い隠してしまい、巨大な建造物が出来上がる。アリーシャは咄嗟に閉じ込められるのではないかと危惧して能力の範囲外に急いで逃げ出した。回復していなければ今頃建造物に閉じ込められていただろう。

 尚も遠距離から攻撃を続けるも、木の板のように見える素材の癖に硬すぎて穴の一つも開けられない。閉じこもってしまった大禍津日神を攻撃する術がない。


 ──パァンッ


 その中で合掌の音が響く。その瞬間に背筋に冷たいものが流れた。


『……死七複(しちふく)(じん)──大刻天(だいこくてん)黒漆(くろうるし)……』


 ──チリリーンッ


 環の音と共に空が真っ黒に染まる。

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