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58.晩餐会の翌朝は後悔の連続…。 ②

「エリファス坊ちゃまは何と仰られたのですか?」


お兄様の置き土産、つまりはソファーの座面のそこかしこに無作為に落とされた食べ滓を片付け終えた侍女がこちらに歩み寄ってきてエリファスお兄様が最後に囁き声で仰った内容を尋ねてきた。


「メリッサ…、エリファスお兄様は……、とっても不思議な方だわ。」


答えにならない返答をしてしまいながら先程エリファスお兄様が出ていった食堂の扉をぼんやりと見遣る。


 ーー昨夜もこうやってお兄様の鮮明に残した残像を見ながら、あの時はこわごわと扉を見つめていたわね…。 でも今は違う、『怒っていない』とはっきりきっぱり言ってくださったエリファスお兄様の言葉が私の昨日の失態をキレイサッパリ許してくださったから、もう怖くない、気がする。ーー


エリファスお兄様の瞳に宿っていた不思議な光に惑わされたのか思考が上手く結べない。


「……左様でございますか。」


メリッサも質問の答えが得られなかった事は然程気になっていないようだ、(わたくし)の独り言に近い言葉を聞いた後はそれ以上何を云うわけでもなく、静かに側を離れてお母様の元へと向かってしまった。


メリッサの後ろ姿を見ることを隠れ蓑にしながらお母様の首から下ばかりをちらちらと伺い見る、どう頑張ってもそこまでしか目線を上げられないのだ。

私が今一番に謝りたい人物、そして謝るべき人物、それはお母様だ。


昨日から家族全員に気づかれていたのかもしれない、それでもやっぱりこの醜い感情を素直に認め、受け止めきることができない。


お腹も空いてきたし、自分の定位置に向かって席に着きたいのは山々だけれど…私の席に座るにはお母様の後ろを通ってお母様の右隣の席へと向かわないとならない。

昨日みたいにメイヴィスお姉様は居ない、どうしたって無言のまま横を素通りできるはずもない、何かしらの挨拶を口にして言葉を交わさないと不自然極まりない。

でも昨今の態度でもう十分、当人から不審がられていること請け合いだ。


お母様は未だにメリッサと何事かを話し合っていらっしゃる、だからって横を通ったら私に挨拶をしないはずがない。


 ーーでも、本当に…? 昨日から不自然且つ一方的に理由も告げず避け続けているだけの私に、お母様が普段と変わらず優しく言葉を掛けてくださるかしら…?? 晩餐の後だって、顔も見ずにおざなりな挨拶だけ残して出ていった私に、嫌な態度しか取れなかった私なんかに…いつものように微笑むことなんて、できるものかしら?ーー


昨日の朝と理由は違えど同じような状況に陥っている。

扉の近くで立ち止まったまま、ここから一歩も動き出せなくなってしまった。

胸の中が急速に冷やされていく、ヒタヒタと湧き上がる恐怖に似た感情によって心が埋め尽くされ、その冷たさで身体が凍えついてしまいそう。

小刻みに身体が震える、いつの間にか視線は下にさがり床ばかりを焦点の定まらない瞳で見つめていた。

その見つめる先の床にフッと大きな影が差す。

その影は見つめていた床を覆い尽くし、すぐに私の小さく丸めた身体もすっぽりと覆い尽くしてしまった。


誰の影であるか、顔を確認しなくてもわかる。

今現在私の身体を軽々と影の中に収めきれるのはお母様の他には1人しか居ない。

その人物に上から見下されている、私が無防備に晒している後頭部をどんな表情で見下ろしているのか確認するのが怖くて、顔を上げられないまま床を見つめ続けるしか出来ない。


どれくらいそうしていただろうか、どんなに待っても私が顔を上げないであろうことを理解してか、私を覆っていた影が小さくなっていき視界が明るくなった時にはお父様のお顔が私の目線の高さまで降りてきていた。

おずおずと視線を合わせてお父様のお顔を見ると、私の目の前で片膝をついたお父様が優しい笑顔と声で素敵なお誘いをして下さった。


「おはよう、ライラ。 うちの可愛い今日一番のお寝坊さん。 今日のブランチは趣向を変えて庭でピクニックと洒落込みませんか、お嬢さん(マドモアゼル)?」


「え、…と? ブランチをお庭で? でもお父様はもうお食事は済まされた後なのでは…?」


さっきメリッサは私以外全員食事は済んだと言っていた、なのにお父様も一緒にだなんて私に気を使って提案してくれていると丸わかりだ。


「いやぁ、それがねぇ~、まだ些か小腹が空いてしまっていてねぇ~~? 私一人で食べるのも味気ないからとライラを待っていたんだがぁ、外を見たら今日は殊の外日差しが暖かでピクニックにもってこいな天候だろう~?! そこでフッと、ライラにはまだ案内していない庭があったことを思い出してねぇ~、いい機会だから一緒にどうかと思った次第なのさぁ~~!! どうかなぁ〜、お父様に付き合ってくれるかい、ライラ??」


それでもお父様がどうしても小腹を満たしたいから、と私が気に病まず頷きやすいように理由を作って下さっている。

私にその意図を汲み取られてしまっている時点でお父様の主張は意義を失ってしまったが、その心遣いが嬉しい。

冷えた心が優しく(ぬく)められて、身体の強張りが自然と溶かされていき滑らかに頷くことができた。


「良かった! ありがとう、ライラ!! やはり持つべき者は心優しい愛娘、だねぇ~♪」


心底嬉しそうに笑って下さるお父様に、ぎこちなさを残しつつもつられて笑顔になれた。


「それはそれは、心優しくない不出来な息子が居てしまい申し訳ありませんでしたね、父上?」


「ほらほらぁ~、聞いたかいライラ? お兄様のようになってはいけないよぉ~、最近は素直さが顕著に欠けはじめていてねぇ、もとから希薄だった可愛気が尚一層薄れてきてしまったよねぇ~~?? 困ったものだよ本当にぃ~~!! お願いだからライラはそのままの可愛さを維持してゆっくり成長していっておくれよぉ~~?!」


「可愛気がなくなろうとも、僕は一向に構いませんからね。 父上の背を見て成長してしまうと、必然的に起こり得る致し方ない弊害でしょうとも。」


お父様が零した軽口を受け流すこと無く拾い上げ、茶目っ気を織り交ぜて悪態をついてみせたのは、それまで静かに私たちの遣り取りの行方を見守っていたアルヴェインお兄様だった。

それに乗っかってお父様も大人げない憎まれ口を叩く、その気の置けない親子の遣り取りにほっこりさせられた。


 ーーアルヴェインお兄様とエリファスお兄様の遣り取りは見ていて飽きない眼福ぶりだけれど、アルヴェインお兄様とお父様の遣り取りも見ていてとっても癒されるわね。 きっとこのピクニックの原案は、お母様なのでしょうけど皆が私の気持ちを優先して気遣って下さる。 こんなに良い家族、私には勿体ないわ…。ーー


卑屈な考えで勝手に気持ちを落としながら、お父様とアルヴェインお兄様とを交互に見遣る。

私の陰った瞳に気付いているだろうにこの場では深く心の内を探ろうとはせず、右手を差し出して昨日と同じようにエスコートして下さろうとするお父様の手に、無言のまま左手をそっと乗せる。


「それじゃぁ、アヴィのことはオズ、君に任せたからねぇ~? くれぐれもよろしく頼むよぉ~~??」


「はい、どうぞ万事お任せ下さいませ旦那様。 楽しんでらしてくださいね、ライリエルお嬢様。」


私の手を引いて歩き出し、アルヴェインお兄様の後ろを通ってお父様の席の後ろに控えていたオズワルドの前を通り過ぎる手前でその家令の肩を気安く叩き、軽く脅しつけながらお母様のエスコートを命じる。

お父様の言葉に自信たっぷりに頷き返し、私にも柔和な微笑みを湛えて言葉をかけてくれた。

その言葉に頷いて応えることしかできない、今の自分は3歳児そのものな態度になっている気がする。


それはそうと、お父様に手を引かれるまま進んでいるけれどどこに向かっているのだろうか?

食堂の出入り口は一箇所しかないというのに、お父様の進行方向はそれとは全くの逆方向なのだ。


 ーーお父様に聞いてみたほうが良いかしら…? でもお父様が考えなしに行動するはずもないし、このまま黙って追従しておくのが安牌なのかしら…??ーー


私の心の葛藤を見抜いてお父様はクスリと微笑みを漏らし、安心させるようにこれからどこに向かおうとしているのか説明して下さる。


「ははっ、そんなに心配しなくても大丈夫さぁ、ライラ。 今日はちょっと近道をするんだよぉ、普段は通れない文字通りの裏道を使って、ねぇ~♪ お父様を信じてぇ、怖い道は通らないから安心してくれていいともぉ~~!!」


 ーー裏道…でもこの食堂からどうやって……、あれ、こんなところに、扉が……あったのね?ーー


衝立の向こうに隠された扉、昨日の晩餐でも給仕役の使用人が何処かへと消えては新しい食事の皿を持ってきていた。


 ーーその何処か、はこの扉の向こうだったのか、成ぁ~る程ぉ~~っ! 昨日教えてもらった家族と資格を持った人にしか見えない使用人通路はここにも繋がっていたのだわ!!ーー


お父様は一切の迷いなく進んで行く、私も手を引かれるままおっかなびっくりで初めて使用人通路に足を一歩踏み出した。

扉を潜って直ぐに左に曲がり、扉の有る小さな部屋を避けて少し通路の右側へ寄って進み、左手前方に見える階段を横目に再び見えてきた別の通用口を潜る。

すると先程まで心持ち薄暗かった通路とは別の、高級そうな絨毯の敷かれた道幅の広い通路に出る。

この時点で今自分が屋敷のどの辺りにいるのか完全にわからなくなった。

足音をすべて吸収してしまう毛足の長い高級絨毯を踏みしめて左斜向かいにみえる使用人用通用口を潜り、再び若干光量が落ちた通路を真っ直ぐ進む。

通路の突き当りには壁しか見えない、それでもお父様はぶち当たる気満々で速度も歩調も緩めずズンズンと進んで行く。


あと数十歩で壁に激突する、そう思ったら辛坊堪らなくなって叫ぶように平然としているお父様に呼びかけた。


「お父様っ!? このまま突き進まれては壁にぶつかってしまいます、一旦止まられたほうが宜しいのではないかと愚考している今日此の頃なのですがぁっ!!?」


「ん~? まぁまぁ、お父様を信じてぇ~、信じる者は救われるって言うだろう~~??」


「!!?」


 ーー信じてはいるのだけど、信じきれないと言いますかぁっ! 障害物が目前に迫っているのに平然とはしていられないと言いますかぁっ!! もう駄目ぶつかるうぅ~~~っ!!?ーー


全くなんの防御にもならないのに反射的に目をギュッと瞑り、バンッと壁にぶつかるお父様と、壁にぶつかったお父様の足にドンッと顔面を強打してぶつかる自分の姿を瞼の裏に描きながらその時を待つ。



 結果から言えば、壁に自主的に激突するという珍事な事態は起こらなかった。

目を瞑っていたから定かではないけれど、あの壁は私達には障害とはならないものだったようだ。

1度足を止めた後からは留まることなく、変わらず手を引いて歩くお父様について今現在も歩き続けている。

しかし大きく変化したことが1つ、それは私達が屋敷の廊下を歩いているのではなく、地均しされた本当の地面の上を歩いているということだった。

キョロキョロと視線を忙しなく動かして興味津々に周りを見回しながら屋敷の裏側に位置するこの場所に出た時を思い返す。


あわや壁に激突する~~っ!!…と身構えていたけれど、待てど暮らせど、壁にぶつかる音もしなければ衝撃も訪れず、不思議に思っていたらその変わりとばかりに鼻孔に届いたむせ返るような土と緑の生々しい匂い。

先程までは囲われた空間の中、停滞した空気の中に居たのに、打って変わって今現在は狭苦しく押し込めてくる囲いがない、風が吹いていなくても空気が微かに動いている確かな躍動が感じられる広く開かれた空間にいると瞼を閉じたままでもわかる。


ギュッと閉じ合わせていた瞼を薄く開いて、自分の五感で感じ取った推測が正しいかを確認する。

今生で初めて、明るい日差しのもとで直に見る鮮やかで瑞々しい自然の景色、そのあまりの美しさに下ろしていた瞼を一気に押し上げて真ん丸に丸めた目を限界まで見開いた。


少しだけ肌寒く感じる微風に吹かれてサワサワと常緑樹の木々が木の葉を優しく鳴らして揺れる。

梢から飛び立つ鳥が風に乗って空高く舞い上がる。

抜けるような青空、とは季節柄難しいけれど、それでも雲の合間から見える空の色は今の私には1等美しく見えた。


今の身長だと地面が凄く近くて空がとんでもなく遥か遠くに感じる。

口をぽかりと開けて空を見上げ、先程梢から飛び立った鳥の行方を必死に追いかけてしまう。

夢中で追跡しすぎて必死になって顔を上げすぎてしまった、その結果は推して知るべし。

1番重い頭の重さを支えきれず、素直に重力に従ってぐらりと後ろに倒れそうになったのだ。


パーティーの前後でも同じような事態に陥ったはずなのに、全く学習しできていない自分に呆れてしまう。

逆さまとなった世界を見ながらも、意外と冷静なままでいられるのは、偏にお父様と手を繋いだままでいたからだ。

不意打ちで私の体重全ての負荷を右腕1本にかけられたにもかかわらず、引っ張られることもなく、全くと云って良い程ものともしないで、転ばぬ先の杖ならぬ命綱的な役割をしっかりと担って下さったお父様には感謝しかない。


「あっはっはっはっは、楽しそうで何より! でもねぇ、何事も夢中になり過ぎは禁物だよぉ~? 今回は私と手を繋いでいたから事なきを得られたけどねぇ、毎回毎回そうとは問屋が卸さないからねぇ~?? 一歩間違えば大怪我だよぉ、油断大敵だともぉ~!!」


やんわりと苦言を呈しながら繋がれた手に力が込められるのが伝わった。

痛くならない絶妙な力加減でゆっくりと腕を引き、身体の角度を地面と垂直に戻してくださった。

上下が正常に戻りほっと胸を撫で下ろしている私の耳に、珍しく歯切れ悪く弱った感じのお父様の声が頭の上に降って落とされた。


「まぁ~、私が居るときはどんな怪我でも全力で完治させると約束する、と断言したいんだがぁ、私の行使できうる最上級治癒魔法にも治癒できる限界が存在するのが正直な話でねぇ~~。 できることなら怪我をする恐れのある行動は極力控えて、怪我をするきっかけを作らないことが1番だねぇ~!!」


「はい、お父様!! 今度からはしっかりと気を付けます! 勝手に怪我をしそうになって、心配させてしまってごめんなさい、それと手を離さないでいてくださって、ありがとうございます、お父様!!」


高い位置に有るお父様のお顔を見返しながら、手を胸の前で組み合わせ、天に祈りを捧げるように誓いの言葉を力強く口遊む。


 ーーそうだった、この世界の治癒魔法には治せる限度があったのだったわ! 治癒にチート特化した称号『聖女』を発現した人物以外は神聖魔法を行使する権限がないのだった!! だから重傷を負えば最悪死に至ってしまうのだ、全力で気をつけないとゲーム本編のシナリオ開始を待たずに即行で死亡エンドを迎えてしまえる自信しかないわっ!!?ーー


『聖女』が行使する場合を除いた最上級治癒魔法の範疇外の事例は大雑把に分けて以下の通り。

まず第一に、命を落とし完全に死した生物の蘇生は不可能。

第二に、身体のいかなる欠損も復元できない、先天性・後天性に関わらず、全く不可能だった。

第三に、病気全般。

第四に、重傷な損傷、損傷が深すぎる場合は病理施術が必須且つ傷跡が残る確率大。


コレが『聖女』の場合だと、第一事例以外全てクリア、範疇内に収めてしまう天晴なチートぶりなのだ。


第一の事例は『聖女』でもクリアできない、何故かと云えば【蘇生】は【魅了】と同じ“古代魔法(アルヘオ・マギア)”、つまりは《神》によって人の世から行使する権利を奪い去られた“遺失魔法(ハノ・マギア)”の一つだからだ。


 ーーこれはゲーム知識じゃなくて、悪い夢』から得られた情報だったけど、案外ちゃんと覚えていられるものね。 ホントあの乙女ゲームは魔法の定義が一切合切曖昧で、何の役にもたたないったら!ーー


『選択肢、選んでポンッ!っではいマージック♪』が罷り通るのは本物のゲーム世界の中だけだ。

今私の目の前に広がるのは大自然な天然物の風景のみ、選択肢も好感度ゲージも何もない。


 ーーそう考えると、この世界はやっぱり乙女ゲームは関係ない? でもそれならどうしてゲームの登場人物がそっくりそのままの顔形でこの世界に生存しちゃってる訳なの?! でもどっちが本当でも『死』が手ぐすね引いて待ち構えてる人生であることは変わりない、って……そんなの有りぃ~~~っ!!?ーー


胸の前で握り合わせた手が震える、しかし今回は恐怖が原因ではなく激しい憤りによって必要以上に力を込めすぎているせいでだった。

俯きながらでも私の百面相はよく見えてしまったようで、お父様が心底愉快そうに(わら)って言った。


「あっはっは、どうやら少しは元気が出たみたいだねぇ~! 良かった良かったぁ~、これなら俄然ピクニックが楽しくなりそうだねぇ~~!! さてさてぇ、それじゃ先を急ごうかぁ~? 付いてこれますか、お嬢さん(マドモアゼル)??」


「勿論、問題有りませんことよ紳士様(ムッシュー)!」


お父様が戯けた声で軽く挑発するような言葉を投げてきた、私も負けじと眉間に力を込めて応戦するような言葉を返す。


「「 ………。 」」


「あっはっはっはっは!!」

「うふふっ、あはっ、あはははっ!!」


軽く火花が散るくらい睨み合った後、堪えきれずに2人同時、ほとんど同じタイミングで呵いはじめ、一頻り呵った後は元のまま仲良く手を繋いで再び歩き始めた。


目的地は未だ不明、でもそれがかえって冒険気分に拍車をかける。

わくわくが止まらない、留まるところを知らない。

私がこんなにも純粋に手放しで楽しんでいられるのは、お父様が隣に居て下さるからに他ならない。


お父様の大きな手はしっかりと私の小さな手を握ってくれている、それがどれだけこの心を温めて勇気づけてくれることか、お父様は気付いていないだろう。


口角が自然と上がっていく、冒険を楽しむわくわくと生まれて初めて”父親”と2人、父娘水入らずの時間への期待に膨らむ胸のドキドキで。

きっと楽しい一時になる、そう信じて前へ前へと軽やかに小さな足を踏み出して歩を進めていく。

けれどこれが楽しい()()の始まりではなかったことを知るのは、もう少し後の事だった。

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