第?話
次にアンジェラは、もう一冊の本も読み始めた。どうやら日記のようだ…驚くことに百ページはあると思われる日記をアンジェラは一瞬にして読んでしまった。そして、またリオに見せる。
「ルドルフさん…あなたは、まさか!」
部屋中に響き渡るリオの声は少しばかり震えているようにも思えた…それ以上、二人の間に言葉は消え、無言になり…本と日記を棚へと戻す。しばらくしてルドルフが戻ってきた。
「お二人とも、これからラウの木に水を差し上げに行くのですが、来ますか?」
ルドルフは二人のために水を汲みながら言った。
「ハイ…ご一緒させてください」
二人は水を飲み干すと、ルドルフと一緒に外へ出た。ルドルフは手に桶と柄杓を持っていた。
「でもルドルフさん…さっき小雨が降っていたから水はもういらないのでは?」
ルドルフは即答した。
「ラウの木は家の裏手にある滝の水でしか成長しないんですよ…」
辺りはすっかり暗くなり、オボロ月が見下していた…夜の森は、一度通った道でも違うようにみえる。ルドルフがいないと家まで戻れないほどだった…そんな中、二人の目の前に大きく、そして青みのかかった木が視界を埋め尽くした。どうやらそれがラウの木のようだ…。
「すごいでしょ…先祖が日々、水を差し上げ続けたおかげてこれほどまでに成長しました」
嬉しそうに語るルドルフを背に、リオは口を開いた。
「ルドルフさん…少し、お話が」
「…え?」
ルドルフの手が止まる。
「何の話ですか?」
「奥さんのことで」
「…シーラの?」
アンジェラは限界だった…自分の鼻をつまみ出した。
「臭い…人間が腐った臭いがする」
アンジェラは囁くような声で言った。そしてラウの木を恐れるように、リオの背中に隠れた。




