第?話
「はじめまして」
ーーそう、はじめましてほど素晴らしい言葉はない。人や物と初めて出会い、そこから何かを得る。…ここにも一つ
「はじめまして」
の物語
小さな町で生まれた少年リオ、リオという名はその町では
「自由」
という意味である。その名のとおり、リオは自由に生きた。両親のいないリオは町を出て旅に出る。旅の目的は単純だった。
「運命のように出会い、分かち合い、光を与える」
リオは何より自由を伝えたかった。それを望んだ。彼は一切武器を持たない。彼の自由な旅にそんな物は必要なかった。
「リオ…少し休もうよ」
彼女の声は決して大きくない。だが、この静かな森では彼女の声ですら大きく聞こえる。黒髪で小さな体、それに比べて大きな革の肩掛け鞄を背負い森を一歩一歩踏みしめながら歩くリオ。その後ろ、大人10人分ほど開けて歩いている紅色の眼をした少女アンジェラ。彼女はヘトヘトで、暑さのあまり、もう汗も出ない。
「早く森を抜けないと日が暮れちゃうだろ…」
「野宿をすればいいじゃない」
リオは足を止めアンジェラの方に向いて言った。
「さすがに3日連続は辛いな、特に森での野宿は危険が多いし…それに君の故郷ではベッドで寝る習慣が基本なんじゃないのかい?」
「私は一族の中でも下級なの…床で寝る方が多かったわ」
そう言ってアンジェラはリオを追い越した、リオはそのあとを追いかけた。
「…とにかく、コレは僕の旅だ…さっさとこの森を抜けたいのさ、嫌なら付いてこなくていいんだよ」
「嫌じゃないわリオ…あなたとならどこまでも」
二人の会話のやり取りはいつも不思議だった。結構長い付き合いなのに、どうも噛み合わないというか、時々会話になっていない…それにいつまで経っても質問が絶えない…だが、少なからずアンジェラにとってこれがリオにとっての愛情表現なのかもしれない…。




