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第30話 最強の鳥よけレーザーからの地盤改良コンクリート

「いけぇぇっ! あのふざけたガラス張りの部屋サンルームを粉砕し、中にいる女を攫え!」


上空五十メートル。

 悪徳クラン『黒い毒蛇』の飛行部隊長は、凶悪な牙を持つワイバーンの背に跨りながら、眼下のログハウスに向けて突撃の号令を下した。

 彼らが狙うのは、ルミナが優雅にコーヒーを飲んでいるサンルームだ。


「いくら罠を張ろうが、上空からの強襲は防げまい! ワイバーンの突進力なら、あんなガラスの壁など紙くず同然だ!」


十騎のワイバーン部隊が、一斉に急降下を開始する。

 だが、彼らがログハウスの上空二十メートル地点――ケントが定めた『敷地の不可視の境界線』を越えた、その瞬間。


ピピッ。


庭の四隅に設置された小さな『光の魔石センサー』が、侵入者を感知した。


「――なんだ? 下から光が……」


部隊長が目を細めた直後。

 ログハウスの屋根と庭に仕掛けられた無数の魔石から、極太の『光のレーザー』が上空に向かって網の目のように照射された。


ピィィィィィィンッ!!!


「なっ……!? ぎゃあああああっ!?」


それは、ケントが「鳥がフンを落とさないように」と設置した『レーザー式・防空ネット』であった。

 ワイバーンの硬い鱗など一切関係ない。純粋な光の熱線が、空からの侵入者の『翼の被膜』だけを寸分違わずにチリチリと焼き切ったのだ。

 推進力を失った十匹のワイバーンと乗り手たちは、空中で無様なカエルと化し、そのまま庭を囲む『ハイスライムの水堀』へと吸い込まれていく。


ドボンッ! ドボンッ!


「あばばばっ!?」

「たすけ……沈む、沈むぅぅ!」


彼らは剣を抜くことすら許されず、ハイスライムのゼリー地獄の住人(顔だけ出した生きた標本)へと追加されてしまった。


***


同じ頃。

 ログハウスの地下十メートルでは、土魔法に特化した暗殺部隊が、モグラのように土を掘り進めていた。


「よし、ハイスライムの堀の真下は通過したぞ! このまま上へ掘り進み、あの家の床板をぶち抜いて奇襲をかける!」

「へっ! 地上にいくら罠があろうと、地下からなら完全な無防備だぜ!」


暗殺部隊の男たちは、勝利を確信して土魔法のドリルを真上の『基礎』へと向けた。

 ガリガリガリッ!

 順調に土を削っていた魔法のドリルが、突如、カキィィィンッ! という硬質な音を立てて火花を散らした。


「な、なんだ!? ドリルの刃が……欠けただと!?」

「おい、この上の土……色が違うぞ! 岩か!?」


彼らがぶつかったのは、ただの岩ではない。

 ケントが先ほど流し込んだばかりの、『玄武岩ガメ(Aランク)の砕いた甲羅』と『ハイスライム』を混ぜ合わせた【超硬化・地盤改良コンクリート】である。


「くそっ、これくらい突破してやる! 全力で魔法を叩き込め!」


数人がかりで、最大火力の土魔法をコンクリートの層に叩きつける。

 しかし、それが致命的なミスだった。


ドゴンッ!! と強烈な衝撃を与えた瞬間、コンクリートに混ざっていた『ハイスライムの性質』が反発を引き起こした。

 打撃を吸収したゼリー状のコンクリートが、スライム特有の異常な弾力でトランポリンのように跳ね返ったのだ。


「な、なんだ!? 地面が、逆に膨らんできやが……ぎゃあああああっ!?」


スライム・コンクリートのすさまじい大噴出によって、暗殺部隊の男たちはまるでシャンパンのコルクのように、地上へと勢いよく射出された。


スポポポポーンッ!!


間抜けな音を立てて地上(フェンスの外側)に飛び出した彼らは、首から下をコンクリートでコーティングされた状態のまま、ズドンッ! と着地した。そして空気に触れた瞬間、コンクリートはカチカチに硬化した。


「……あ、あれ? 息はできるぞ……?」

「だ、ダメだ! 指一本動かねえ! しかも俺、なんでこんな両手バンザイのポーズで固まっちまったんだ!?」

「俺なんて片足立ちだぞ! 助けてくれえええ!」


命を落とすようなエグい展開かと思いきや、彼らはただ『間抜けなポーズの石像(顔だけ動いて喋るガーデンオーナメント)』として無力化されただけであった。


***


「おっ、庭の鳥よけセンサーが反応したな。……ん? モグラ対策の『飛び出す地盤コンクリート』も作動したみたいだ」


サンルームの中で、ケントは満足げにうなずきながらコーヒーを啜った。


「あのコンクリート、微細な通気口があるからモグラが死ぬことはないんだけど、カチカチに固めて追い出すから安全なんだよな。庭に妙な石像が増えちゃったけど、まあ防犯用の置物ってことでいいか」


ニコニコと笑うケントの背後で、ドローンカメラのコメント欄は爆速で流れていた。


『空挺部隊が一瞬で焼き鳥になったぞww』

『地下から来た土魔法部隊、謎の「飛び出すコンクリート」でガーデンオーナメントにされてて草』

『バンザイしたまま固まってる暗殺者で腹筋崩壊したwwww』

『おっさん、これで本気で「防衛戦」じゃなくて「ただの外構工事」のつもりだから恐ろしいわ……』

『しかも不殺設計(命に別状はない)だからタチが悪いww』


一方、ログハウスのフェンスの外。

 残されたクランマスターのガルドは、空挺部隊の撃墜と、突如地面から生えてきた「部下たちの間抜けな石像」という現実を前に、膝から崩れ落ちそうになっていた。


「ば、馬鹿な……。空も、地下も……すべて数秒で無力化されただと……?」


もはや、打つ手はない。

 攻城砲は壊され、部隊の九割がスライムの堀に沈むか、生きたオーナメントにされた。

 残っているのは、ガルド自身と、数名の側近のエリート探索者のみ。


「クランマスター! もう撤退しましょう! あそこは人が足を踏み入れていい場所じゃありません!」


側近が泣き叫ぶように進言するが、ガルドはギリッと歯を食いしばり、血走った眼でログハウスの『玄関に続くアプローチ(道)』を睨みつけた。


「……撤退などできるか! こうなったら、何が何でもあのドアをこじ開けてやる!」


空も、地下もダメ。

 ならば残された道は一つ。

 ケントがご丁寧に用意してくれた、玄関へ続く『唯一の正面突破の道』を進むしかない。

 だが、ガルドは知る由もなかった。その道こそが、ケントが遊び心で作り上げた、最もタチの悪い『無限キャタピラ地獄』への入り口であることを。

最後までお読み頂きありがとうございます!

次回の第31話は、明日【12:10】に更新予定です!


部下を犠牲にして、ついにクランマスターが絶対防衛線を突破!?

勝利を確信して踏み出した『玄関への石畳』で待ち受ける、次なるおもてなし(絶望)をお楽しみに!


「続きが気になる!」「おっさん頑張れ!」と思っていただけましたら、

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ルームランナーかな、名前から察するに
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