第18話 「最下層にオシャレカフェがあるんだが?」世界を揺るがす切り抜き動画
ルミナが極上ヒノキ風呂と絶品ステーキに骨抜きにされ、最下層の管理者たるコアを「町内会長」として紹介された頃。
現実世界のインターネット上は、人類史上かつてない規模の大パニックに陥っていた。
世界最大の匿名掲示板群『ダンジョンちゃんねる』の総合実況スレッドは、通常時の数百倍という異常なトラフィックを記録し、サーバーが何度も悲鳴を上げていた。
***
【超速報】ルミナ生還! 最下層に謎の極楽グランピング施設を発見! Part.9999
1: 名無しの探索者
スレ立て乙。
とりあえず、誰か俺の頭がおかしくなったんじゃないと証明してくれ。今の状況を三行でまとめてくれ。
12: 名無しの探索者
・ルミナちゃんがアビス(最下層)に落ちて死を覚悟する
・謎の作業着のおっさんが現れて「ご飯できてるよ」
・ヒノキ風呂で全回復してコア公(神)とポテト食ってる ←今ここ
25: 名無しの探索者
三行でまとめても意味不明すぎて草。
なぁ、最下層って人類が到達できない絶対死地じゃなかったのかよ。
42: 名無しの建築士
おい、建築関係の仕事してる俺から言わせてもらうと、あのログハウスの構造はおかしい。
基礎部分が黒光りしてると思ったら、あれSランク魔獣【デス・スコーピオン】の甲殻だぞ!! それを建材にしてるのもイカれてるが、ジョイント部分の隙間がゼロだ。
最下層特有の魔力嵐を完璧に計算して、流体力学的に風を逃がす屋根の傾斜……あれ、現代建築の最高峰だぞ。
なんで最下層に都内の一等地にあるカフェみたいな超絶オシャレ空間が出来上がってんだよ!!
58: 名無しの探索者(Aランクパーティ所属)
オシャレカフェどころの騒ぎじゃねえよ!
さっき背景でチラッと映ってたけど、あのおっさんがノコギリ……というか愛用の金槌? みたいなやつで加工してた薪みたいな骨!
あれ『暴風タイガー(Aランク)』の剛骨だぞ!?
俺らAランクパーティが三日三晩、死傷者を出しながら死闘を繰り広げて、ようやく一本持ち帰れるかどうかの激レア素材だぞ!?
それを……ただの「柱の補強」とか「筋交い」にアホみたいに使ってた……!
77: 名無しの探索者
おっさん、あれを金槌でコンッて叩いて綺麗にブロック状にしてたよな?
どういうチートスキルだよ。
物理法則無視してまるでブロック遊びのゲームみたいなことやってるぞ。
105: 名無しのVTuberオタク
俺はそんなことより、お風呂での音声切り忘れ事故(極上ASMR)が最高すぎたことをここに宣言する。
「だ、だめぇ……溶けちゃうぅ……♡」は秒で切り抜いてローカルに保存した。
112: 名無しの探索者
>>105
お前はブレないなwww
でも、あのおっさんも相当ブレなかったよな。
全裸の美女がパーテーションの向こうにいるのに「魔核ポンプの水圧が〜」とか「熱交換効率が〜」って、ガチの現場監督の顔で配管の心配してたぞ。
エロよりDIYを優先する男。最高に推せるわ。
140: 名無しの探索者
ヤバいぞ、トレンドが完全に占拠されてる。
世界中でおっさんの切り抜き動画がバズり散らかしてる!!
『#Abyss_cafe』
『#DIY_God(建築神ケント)』
『#Lumina_ASMR』
『#Chounai_Kaichou(町内会長=コア公)』
188: 名無しの探索者
町内会長で腹筋崩壊したww
最恐ダンジョンの絶対管理者が、おっさんにポテト奪われてガチ泣きしてる切り抜き動画、海外で1億再生突破してるぞwww
205: 名無しの探索者
海外のトップギルドや政府機関も大騒ぎらしい。
「あの男は誰だ!?」「アビスに安全地帯を作れるなら、あの利権を何としても確保しろ!」って、各国の重鎮が血眼になっておっさんの素性を探り始めてる。
250: 名無しの探索者
世界中が特定に動いてるのに、当のおっさん本人は今何やってるかっていうと……
ルミナちゃんのために「食後のデザート作るかー」って、ダンジョンベリーのパウンドケーキ焼き始めてるからな。
肝が据わりすぎだろ。
***
掲示板の熱狂が示す通り、事態はもはや一配信者の枠を大きく超え、国家レベルの非常事態へと発展していた。
世界中の探索者ギルド本部では、緊急対策会議が開かれていた。
数多のモニターに映し出される、ルミナの配信映像。
各国のギルドマスターや政府高官たちが、食い入るようにその画面を見つめ、額に脂汗を浮かべている。
「特定はまだか! この『ケント』と名乗る男は、人類のダンジョン攻略の歴史を根底から覆す存在だぞ!」
ギルド本部の長官が声を荒らげる。
しかし、情報処理班の職員たちは、キーボードを叩きながら青ざめた顔で首を振った。
「だ、ダメです! 全世界の高ランク探索者データバンクを照会しましたが、彼に該当するステータスを持つ人間は存在しません!」
「まさか、未登録の『はぐれ』の実力者か……? あるいは、ダンジョンが生み出した新種のヒト型魔物……?」
「長官! 画面に動きが!! 謎の男、ケントが再び立ち上がりました!」
会議室に緊張が走る。
全員が息を呑んでモニターを注視した。
Sランク魔獣を素材として扱い、絶対管理者をペットにする男。彼が次に動く時、それは新たな神話が刻まれる瞬間かもしれない。
モニターの中のケントは、作業着のポケットから金槌を取り出し、真剣な眼差しで岩盤を見つめた。
そして、彼は力強く口を開いた。
『よし、食後の運動がてら、明日の朝食用のピザを焼くための「本格的な石窯」でもDIYするか!』
「…………は?」
長官の口から、間の抜けた声が漏れた。
会議室の全員がズッコケそうになるのを堪えた。
世界が彼を神か悪魔かと畏怖し、その正体を巡って大パニックに陥っている中。
ただの「元・限界社畜」であるケントの頭の中には、明日の美味しい朝ごはん(ピザ)のことと、新たなDIYのワクワク感しか存在していなかったのである。
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