140話:次元トンネルと、おっさんのスローライフ
世界樹タワーの完成により、アビスは絶対に崩壊しない『超・極楽ホワイトリゾート』へと生まれ変わった。
タワーの下では社畜魔物たちがBBQの霜降り肉を奪い合い、漆黒の過労竜が腹を出して大いびきをかいている。
「よし、それじゃあ最後の仕上げ(帰り道)を作るか!」
ケントはマイルドな笑顔を深め、手にした新たな重機のキーをインベントリに差し込み、回した。
ズギュィィィンッ!! と空間が開き、超特大の『トンネルボーリングマシン』がその威容を現す。
先端に巨大な回転カッター(カッターヘッド)を備えた、全長数十メートルの化け物重機だ。
「な、なんだその巨大な鉄の筒は!? まさか、アビスの次元城壁に穴を開ける気か!?」
姉コアが焼肉のタレを口の端につけたまま、目を丸くして叫ぶ。
「おやおや。せっかくアビスを最高のテーマパークにしたのに、地上からのアクセスが悪すぎたら誰も遊びに来られないじゃないか」
ケントは現場監督としての使命感に燃え、巨大重機の運転席へとスマートに乗り込む。
(地上から最下層への道のりなんて、過酷なダンジョンを何日も下る最悪のアクセスだ。お客さんの負担を減らすには、ここ『アビス(温泉テーマパーク)』から地上の『第一層』まで直通のショートカットを掘るしかないね)
「次元の壁だろうがなんだろうが、シールド工法でぶち抜くぞ!」
ケントが操縦桿を力強く押し込む。
ギャリリリリリリッ!!!
超硬質合金のカッターヘッドが、アビスの強固な次元の壁を物理的に削り取っていく。
《『アビスの次元障壁』を『超空間・S級セグメント(トンネル外壁)』へ変換・取得しました》
掘り出した次元の欠片を即座に建材へとリサイクルし、ケントは一切の迷いなく真っ直ぐに『地上』へと向けて掘り進む。
ドゴォォォォンッ!!!
数分後。
凄まじい轟音と共に、次元トンネルが開通した。
土煙が晴れた先に見えたのは、見覚えのある青空。迷宮の入り口がある、地上の『第一層』だった。
「うおおおっ!? 地上にいきなり巨大なトンネルができたぞぉぉっ!」
「ルミナちゃんの配信で見てたとこだ! このトンネル、ダンジョン最下層のアビスに直結してるのか!?」
トンネルの向こう側(地上)で、迷宮に挑もうとしていた冒険者や配信者たちが目を剥いて驚愕している。
「ああっ! 第一層の皆さーん! 遊びに来てくださいねぇーっ!」
ルミナがドローンカメラを飛ばし、開通したばかりのトンネルに向かって、アビス側から大きく手を振った。
『直通トンネル開通キタァァァ!』
『最下層が徒歩0分のレジャー施設にww』
『シールド工法で次元ぶち抜く男』
『これでいつでも温泉とBBQに行き来できるぞ!』
「親方。地上とのインフラ統合、完了しました。これで物流も人員配置も完璧なホワイト労働環境です」
霞が背後でタブレット端末をスワイプし、満足げに頷く。
「よしよし。これで地上の連中も、気軽にこっちに遊びに来れるな」
ケントは重機から降り立つと、愛用の『金槌』を取り出し、開通を祝うように足元の岩を優しく叩いた。
コンッ……。
巨大な次元トンネルの入り口に、煌びやかな電飾ゲートと『アビス・リゾート直通エクスプレス(動く歩道)』が即座にクラフトされる。
「さあ、地上との道も繋がったことだし、俺たちもひとっ風呂浴びようか」
ケントの言葉に、姉妹コアやヒロインたちが歓声を上げ、アビス内に併設された極楽温泉へと雪崩れ込んでいく。
「……ふにゃぁぁっ♡ 大仕事を終えた後の広い温泉……最高……っ」
頭にタオルを乗せた姉コアが、コア公と並んで湯船に浸かり、完全にだらしない顔でとろけていた。
マリアやセリスたちも、足を伸ばして幸せそうに笑い合っている。
過酷なダンジョンの最下層は、誰でも地上から気軽に通える、極上のスローライフ空間へと完全に生まれ変わった。
「さあ、今日の作業はここまで! 全員、定時退社!」
『おっさん、最高の現場をありがとう!!』
『世界最強のホワイト企業に乾杯!』
『¥50,000 ナイス定時退社!』
『¥50,000 お疲れ様でした! ご安全に!!』
『¥100,000 ケント建設、永遠なれ!!』
画面を埋め尽くす怒涛の赤スパチャと、リスナーたちの温かい労いの言葉。
神も魔王も極上の福利厚生でポンコツ化させる最強の現場監督は、今日も異世界で安全第一にハンマーを振り続けるのだった!
(完)
『限界ブラック社畜のダンジョンD.I.Y』、これにて無事に完結となります!
ここまでケントの現場に立ち会い、応援してくださった読者の皆様、本当にありがとうございました!
本作を執筆するにあたり、一番こだわったのは「ファンタジーの理不尽な脅威を、おっさんのチートスキルで素材解体とクラフトによって打破していくことでした。マニアックになりすぎないようにしつつも、モノづくりの圧倒的な手際やDIYの楽しさが少しでも伝わっていれば嬉しいです。
また、もう一つの裏テーマとして「どんなに過酷な世界でも、仕事の後はしっかり美味しいご飯を食べて、大切な人との時間を過ごす」というホワイトな世界観を目指しました。
ブラック社長だった姉コアや、過酷な労働を強いられていた魔物たちが、最後はみんなで温泉に入って笑い合える。
そんな優しいカタルシスを感じていただけていたら、作者としてこれ以上の喜びはありません。
さて、本作はこれにて一度「定時退社」となりますが、もし「面白かった!」「おっさんの現場をもっと見たい!」と思っていただけましたら、最後に少しだけ作者にご協力をお願いできないでしょうか。
評価とブックマークをしていただけると、今後の執筆の巨大なエネルギー(S級魔力動力源)になります!
ケントたちの現場はこれからも、安全第一で続いていきます。
また次の新作、もしくは番外編でお会いできる日を楽しみにしております。
改めまして、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。




