皆の最後編-コウ
あれって……
俺コウは、戦争が始まってから一週間ほど経って、街の方へ行った。
一週間ごとに、街へ行くようにした、そうじゃないと戦争やらなんやらの現状を、知ることができないからや。
エマ「……!コウくん」
俺の友達であるエマが、こっちに駆け寄ってきた。
コウ「どうしたん」
エマ「あのね……」
気まずそうに話し始める
エマ「……父上が『この国でも目撃された人狼を排除しろ』って、多分、コウくんのことだと思う……あと、一緒に人がいるなら、ためらわず一緒に殺れって……」
泣いてしまいそうな顔をしていた。
優しいな
人狼である俺に、人の敵である俺に情を向けるなんて
コウ「だったら今殺れよ、どうせお付きがどっかから見てるんだろ?会話は聞こえてなくても」
エマ「……ううん、決行日はだいたい再来月って言ってたから、それまでになんとか対策を考えるよ。お兄ち……お兄様にも相談してみる」
コウ「ん」
そう言って、別れた。
思えば、これが最後だったかもしれない、リリ以外の五人と出会うのは。
本当は人間の敵なはずの俺が、人間が守ろうとしてくれる。
嬉しいけど、もしこれがエマとかじゃなかったら、人間が身勝手だと、より思ってしまうんやろうな。
~❀~✿~❀~
戦争が始まってから、大体一ヶ月が経った。
雨が降ってる中、栗拾いをしていたら、リリが駆け寄ってきた。
こっちもこっちで、泣きそうな顔をしてる。
リリが何があったかは説明してくれた。
他の四人がもう、この世にいないことを。
けど、実は何があったか知ってた、毎週街に降りてたら、噂やら何やらで聞いてる。
緊急新聞が、落ちてることもあった。
コウ「そっか、もうあいつら、いないんだな」
演技だ、これだって。実際は、こんなに冷静じゃない。ここで俺までためらったら、リリがもっとだめになる。
ちょっと栗を分けて、リリを家に還した。
あと二週間三週間後くらいが、エマの言ってた作戦の決行日か……
命令を受けたエマは死んでしまったけど、きっと行われてしまう。
別の奴にでも、この作戦を押し付けて。
そういう奴らだ。
キクやエマのように、一般庶民の生活を知らないと、国政にかかわるやつらはたいてい汚職に手を出し始める。
それがいかに迷惑なのか、理解できない、いや、理解するタイミングもないんだろう。
~❀~✿~❀~
夜明け間近ぐらいに、リリを家に還してから、街に出て、ナイフを買った。
そのナイフで、自分の腹を刺す。
こうしなきゃ、リリも巻き込まれる、「人狼と共にいる人間」として。
また、そうなってしまう。
俺の父親が人狼で、母親が人間。母親は、人狼とともに暮らしたとして、処刑された。
……案外痛いけど、熊罠とかで、痛いのには慣れてる。
昔から、捕まった動物たちを逃がしたりしてただけじゃなく、自分も捕まってたし。
人狼は回復力も早いし、体力もあるから、このやり方だと時間かかるな……
気づけば夜も明けていて、雨が降っていた。
リリ「………………っ!コウくんっ!」
コウ「んでいるんだよ……」
……っ!なんでリリが来たんだよ。
せっかく、
あとちょっとだったのに
リリが自分のスカーフで、俺の止血をしようとする。
コウ「やんな」
最後かもしれないけど、冷たく止める。まあ予想通り、結構パニクってんな……リリが来るのは予想してなかったけど。
リリ「なんでっ!?早く止めなきゃ……」
コウ「自分でやったからや」
いつまで経っても理解しそうにない、言葉のまんまやろ……
それでも今のリリは、理解できるような状況じゃないんだろうな。
コウ「俺は人狼や、国に目ぇつけられてる。そんな俺と一緒にいた人間はどうなる?一緒に始末されちまうのが妥当や、リリも論外やない。」
エマのことは伏せて、説明する。
傷口を抑えるような位置に来て、リリが来る。
リリ「そんなの、やだよぉ……コウくんまでいなくなったら、私っ……」
そんな事言われたら、少し生きたくなってしまうけど、もう生きてたらダメなんや、俺は。
まだ俺はナイフを持ってる。
コウ「リリは鈍いなぁ……」
ザシュッ――
リリ「えっ……?」
自分の首を、切る。
ちょっとリリに、血飛んでもうたかも。
コウ「なんでまだ俺が、凶器持ってるって思わないんや……」
なんで最初っからこうしなかったんやろ……もしかしたら、最後にリリと会いたかったのかな。
もう何十年か経ってから、あの世で再会できることを望んでるよ。




