今日の夕暮れは綺麗だった気がする。
「いやー色々行ったけど疲れてない?」
「疲れました」
「正直でよし!好きだよ。しおりんのそういうところ」
なんだろう、普段ならこんな言い方はせいぜい家族ぐらいにしかしない。しかも目の前にいるのは同じ学校の先輩だ。それも向こうは人気者・・・多分。そして私は日陰者。これは確定だ。それでも自然とそんな喋り方に最後の方はなっていた。ただこれが明日できるかというとそんな気が全くしない。多分、負い目が無いからだ。お金も払ってる。そして先輩はそのサービスをしてくれている。割り切れている自分がちゃんといる気がしてちょっと嫌になる。でもそんな形でしか私は生きていけない。
「どうした?しおりん?熱でもあるの?」
「いや、大丈夫です。そろそろ終わりの時間ですよね。すみません。今日はありがとうございました」
「冷たいなー。まぁ確かに今日はそうだったけど今度は普通に遊びに行こうよ。連絡先だって交換したんだし」
そう言って自分のスマホを目の前で揺らしながら見せつけてくる。
「そうですけど。流石に悪いですよ。梓先輩」
「あずにゃん先輩だよ!」
「いや、流石にそろそろ終わりの時間かと」
「私的には終わらせる気はないんだけどなぁ」
魔性の女だ。これが噂に聞くやつだ。そして搾り取られるんだ。
「とか考えてない?」
「考えてません!」
なんでこの人は私の思考を読めたんだろ。
「顔に書いてた」
「また読まないでください!消しゴムください!」
「何それ!しおりんのボケ分かりにくいよ。でも好き」
「またそんなこと言って!」
本当にこの人は油断ならない。恐ろしい人だ。こうやっていつも仕事をこなしているのだ。
「まぁ嫌だったら言ってよね。私も嫌われたくないしさ」
「いや、嫌うなんてそんな。むしろこっちが梓先輩に嫌われる方で」
「だってあずにゃん先輩って言ってくれないし」
「いや、だからこれは・・・」
途中でからかわれていることに気がつき顔が真っ赤になる。
「ごめん!ごめん!怒らないで。ほんとに仲良くしたいって思ってるから!だから今度は普通に遊ぼう」
「よっよろしくお願いしまつ」
噛んだ。そんなことは気にしない。とりあえず財布を取り出し今日のお金を払おうとすると
「いいよ。別に今日のは私が払うし」
「いや、お仕事ですから」
「お仕事。そうだね。今回は貰おうかな」
そう言って私の手から千円だけを取って「まいどあり!」と言われて財布にしまってしまう。
「いや、たりな・・・」
「特別割引価格。というよりこれでもうしおりんは私から逃げられないのだ」
「じゃあ払います」
慌てて財布から大きいのを出そうとする。
「冗談だよ。えっ?それとも私と遊ぶの嫌?」
「もう騙されませんよ!」
「ちっ流石にひっからないか。でも最後まであずにゃんって呼ばなかった罰ね」
そう言って笑いながら私はこっちだからと改札口へ向かって行った。また明日ね。という声が人混みに消え私は一人人混みに取り残された。
「私もそっちなんだけど・・・まっ良っか」
同じホームで鉢合わせを避ける為に少し時間を潰すことにした。と言っても場所は限られているけれど。一旦、駅の中を出ると外はもう夜を知らせる薄暗さと真っ赤に沈み消えていく太陽だけがその場に残っていた。




